遺産分割協議のやり直しは可能かどうかについて気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では遺産分割協議のやり直しについて以下の点を中心に解説していきます。
- 遺産分割のやり直しができる場合とは
- 遺産分割の時効はあるか?
- 遺産分割をやり直す際の注意点とは
遺産分割協議のやり直しについて理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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遺産分割のやり直しができる場合

遺産分割は、基本的に相続人全員の合意によって行われるものです。
しかし、場合によっては、後からやり直しが必要になることもあります。
遺産分割協議のやり直しができるケースは、以下の3つのケースに該当する場合、遺産分割協議のやり直しが可能です。
財産の漏れなどがあった場合の錯誤無効
遺産分割時に、重大な財産の漏れがあった場合、その財産の存在が分かっていたら遺産分割協議に合意しなかったであろうと認められる場合には、相続人は「錯誤無効」を主張できます。
錯誤無効が認められるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 漏れがあった財産が重大なものであること
- 相続人がその財産の存在を知らなかったこと
- 相続人がその財産の存在を知っていたら、遺産分割協議に合意しなかったであろうこと
錯誤無効が認められた場合、遺産分割協議は無効となり、再協議が可能になります。
詐欺、強迫による取消
- 誰かが故意に遺産財産を隠していたため、他の相続人が勘違いをした状態で遺産分割協議がまとまった場合
- 遺産分割協議の際に、強迫(脅迫)が行われて、恐怖した相続人がやむなく遺産分割協議に応じた場合
上記のいずれかに該当する場合、だまされたり脅されたりした相続人は、遺産分割協議を取り消すことができます。
遺産分割協議の取消が認められた場合、遺産分割協議は無効となり、再協議が可能になります。
全員が再協議に合意した場合
上記の錯誤無効や取消の理由がなくても、相続人全員が遺産分割協議のやり直しに合意した場合には、再協議が可能です。
この場合、遺産分割協議書に全員の署名・捺印をした上で、新たな遺産分割協議書を作成する必要があります。
遺産分割のやり直しができない場合
遺産分割協議は、相続人全員の合意によって行われる重要な手続きです。
しかし、後から「やっぱりやり直したい」と思うこともあるかもしれません。
基本的には、一度合意した遺産分割協議をやり直すことはできません。
「気が変わった」や「当時は冷静に判断できなかった」といった理由は、遺産分割協議書に署名押印して合意内容を理解している限り、受け入れられません。
遺産分割をやり直さなければならない場合
遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を話し合って決める手続きです。
しかし、場合によっては協議の内容をやり直さなければならないケースがあります。
以下、代表的なケースと、それぞれの注意点について詳しく説明します。
相続人が漏れていた
遺産分割協議には、相続人全員が参加する必要があります。
一人でも参加していない人がいると、その遺産分割協議は無効になります。
例:
- 長男と次男が遺産分割協議を行い、三男の存在を知らなかった
- 被相続人の隠し子が見つかった
注意点:
- 遺産分割協議前に、戸籍謄本などを使って相続人を正確に把握する必要があります。
- 相続人が行方不明の場合、家庭裁判所に失踪宣告を求める必要があります。
意思能力のない人が参加していた
認知症などで遺産分割を行うに必要な意思能力が欠けている人が参加していた場合、遺産分割協議は無効になります。
例:
- 認知症の母親が遺産分割協議に参加した
- 成年後見制度を利用していない
注意点:
- 意思能力に疑問がある場合は、医師に診断してもらい、必要に応じて成年後見人を選任する必要があります。
- 成年後見人がいない状態で遺産分割協議に参加した場合は、取り消せる可能性があります。
親子の利害相反がある
父親が亡くなった場合、母親と子供が相続人となるケースは多くあります。
しかし、この場合、母親と子供の間に利害相反が生じる可能性があります。
利害相反とは、一方が利益を得ると、もう一方が不利益を受ける関係を指します。
遺産分割協議においては、相続人それぞれの取り分を決めるため、利害相反が生じやすい状況と言えます。
親権者は、未成年の子の法定代理人として、遺産分割協議に参加することができます。
しかし、親子間には利害相反が生じる可能性があるため、親権者が子の代理人として遺産分割協議を成立させることはできません。
新たに相続人が現れた
遺産分割協議後に新たな相続人が現れた場合、原則として遺産分割協議をやり直す必要があります。
これは、すべての相続人が遺産分割に参加する権利を持っているためです。
具体的には、以下のケースが考えられます。
- 父を定める訴え(裁判)によって、新たな子が認知された場合
- 母子関係確認訴訟(裁判)によって、新たな母親が確定した場合
- 死亡していたと思われていた人が、実は生存していた場合
- 遺言書によって、新たな相続人が指定されていた場合
これらのケースでは、新たな相続人を含めて、再度遺産分割協議を行う必要があります。
遺産分割協議については、こちらの記事もお読みください。
遺産分割協議書は、相続手続きを円滑に進めるために必要な重要な文書です。 遺産分割協議書は、相続人全員が、遺産の分割について合意したことを証明する法的な効力を持つ文書であり、その存在が名義変更手続きの進行や相続税の申告に大きく影響を与えます[…]
遺産分割の時効はあるか?

遺産分割請求権に時効はありません。
つまり、何年経過しても、遺産分割協議をやり直すことは可能です。
取消権には時効がある
遺産分割協議の内容に錯誤があったり、詐欺や強迫によって不利益な分割を強いられた場合、取消権を行使してやり直しを請求できます。
しかし、取消権には時効が定められており「取り消せることを知った時から5年」経過すると行使できなくなります。
遺産分割協議をやり直す場合の3つのデメリット

遺産分割は感情的な問題であり、再協議は家族間の緊張を高める可能性があります。
また、時間と費用がかかることもあります。
以下では遺産分割協議を再度行う際のデメリットについて解説します。
労力と時間がかかる
遺産分割協議をやり直すためには、書類の再収集、協議書の再作成、税金の申告・納付、不動産の名義変更など、様々な手続きが必要になります。
これらの手続きには多くの時間と労力がかかります。
特に、相続人全員の合意が得られなかったり、調停が必要になったりすると、さらに時間がかかってしまいます。
よけいな税金がかかることがある
遺産分割協議の再実施に際しては、以下の2つの状況で、本来支払う必要がなかった税金が課税される可能性があります。
- 相続人全員の合意でやり直す場合: 贈与税または所得税
- やり直しの対象が不動産である場合: 登録免許税
これらの税金は、数十万〜数百万円、中には1,000万円以上かかる場合もあるので、注意が必要です。
完全にやり直せないことがある
最初の遺産分割協議で相続人の一人が相続した財産をすでに第三者に渡した後では、その第三者の権利が優先されるため、遺産分割協議をやり直すために財産を取り戻すことはできません。
例えば、相続人Aが遺産として受け継いだ自宅をBに売却したとします。
その場合、遺産分割協議を再度行うことになったとしても、Bから自宅を取り返すことは不可能です。
このように、遺産分割協議をやり直すことは簡単ではありません。
やり直しを検討する前に、上記の3つの注意点を慎重に検討することをおすすめします。
遺産分割協議をやり直した場合にかかる税金

遺産分割協議をやり直す場合、当初の協議と異なる内容になった場合には、以下の税金がかかる可能性があります。
贈与税または所得税【相続人全員の合意でやり直す場合】
当初とは異なる人が相続することになった遺産には、贈与税または所得税が課税される可能性があります。
これは、自分たちの都合によるやり直しは、最初の遺産分割協議が成立していたとみなされ、その後の変更は相続人間での贈与または譲渡と解釈されるためです。
例えば、土地(評価額3,000万円)を当初Aさんが取得し、その後Bさんに譲渡するような場合、Bさんに贈与税1035.5万円が課税されます(特例贈与財産の場合)。
なお、Aさんがすでに相続税を納付済であっても、還付や免除はありません。
登録免許税【やり直しの対象が不動産である場合】
遺産分割協議のやり直しで相続登記済みの不動産を別の相続人が相続することになった場合、再度登録免許税を納める必要があります。
不動産の価額が100万円以下の場合は、登録免許税は課税されません。
1.税額計算
登録免許税は、不動産の価額(固定資産税評価額)に税率を乗じて算出します。税率は、以下のとおりです。
- 土地の所有権の移転:1,000円に付き1.5円
- 建物の所有権の移転:1,000円に付き4円
- 軽減措置
以下の場合には、登録免許税が軽減されます。
- 一定の要件を満たす小規模宅地の所有権の移転:1,000円に付き0.3円
- 相続等による所有権の移転:1,000円に付き1.0円
不動産取得税・登録免許税額早見表
この表は、不動産取得税と登録免許税の概算額を、不動産評価額別に示したものです。
実際の税額は、様々な条件によって変動しますので、あくまでも目安としてご利用ください。
計算式
- 不動産取得税:不動産評価額 × 税率(都道府県によって異なる)
- 登録免許税:不動産評価額 × 1.0%~2.0%
早見表
| 不動産評価額 | 不動産取得税(目安) | 登録免許税(目安) |
| 1,000万円 | 3万円~4万円 | 10万円 |
| 2,000万円 | 6万円~8万円 | 20万円 |
| 3,000万円 | 9万円~12万円 | 30万円 |
| 4,000万円 | 12万円~16万円 | 40万円 |
| 5,000万円 | 15万円~20万円 | 50万円 |
| 6,000万円 | 18万円~24万円 | 60万円 |
| 7,000万円 | 21万円~28万円 | 70万円 |
| 8,000万円 | 24万円~32万円 | 80万円 |
| 9,000万円 | 27万円~36万円 | 90万円 |
| 10,000万円 | 30万円~40万円 | 100万円 |
遺産分割協議をやり直した場合の不動産登記方法

遺産分割協議をやり直した場合、すでに登記が完了していた不動産登記も修正する必要があります。
しかし、単純に修正するのではなく、状況によって異なる方法が必要となります。
登記をやり直す場合の手順
最初の相続登記を抹消するには、「所有権抹消登記」を申請する必要があります。
①最初の相続登記を抹消(所有権抹消登記)
②変更後の相続人が相続登記
登記の方法
所有権抹消登記は、通常の登記申請とは異なり、法務省ホームページにも申請方法が掲載されていないレアなケースです。
そのため、手続きを進めるには、以下の手順に従う必要があります。
1.管轄法務局への問い合わせ
まず、不動産の所有地を管轄する法務局に問い合わせを行い、所有権抹消登記の申請方法について案内を受けましょう。
法務局の管轄区域は、法務省のホームページで確認できます。
2.必要書類の確認
法務局への問い合わせ時に、所有権抹消登記と相続登記に必要な書類を確認しましょう。
必要書類は、以下の通りです。
所有権抹消登記
- 登記申請書
- 登記原因証明情報
- 登記識別情報
- 義務者全員の登記名義人及び住所に関する証明情報
- 登記済権利証(所有権登記が電子化されていない場合)
相続登記
- 登記申請書
- 相続関係説明図
- 遺産分割協議書(遺産分割協議が整っている場合)
- 戸籍謄本
- 除籍謄本
- 死亡届受理証明書
- 法定相続人の住民票
- 登記識別情報
- 登記申請書の記入
法務局から受け取った案内に従い、登記申請書を記入します。
登記申請書には、以下の情報を記載する必要があります。
- 登記の目的
- 登記原因及び日付
- 登記名義人
- 住所
- その他必要事項
- 必要書類を揃える
必要書類を全て揃えます。
必要書類は、法務局によって異なる場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
- 法務局への申請
必要書類を揃えたら、管轄法務局へ登記申請を行います。
登記申請は、窓口または郵送でできます。
- 登記完了
登記申請が受理されると、法務局から登記完了通知書が送付されます。
所有権抹消登記は、通常の登記申請とは異なり、法務省ホームページにも申請方法が掲載されていないレアなケースです。
遺産分割をやり直す際の注意点

遺産分割は、原則としてやり直すことはありません。
しかし、万が一やり直すとなった場合、注意点はあるのでしょうか。
遺産分割をやり直す際の注意点がいくつかありますのでご紹介します。
遺産分割協議をやり直しても、第三者は保護される
遺産分割協議をやり直しても、すでに第三者に権利が移転している場合は、基本的にはその権利は保護されます。
例えば、相続人が不動産を売却した場合、たとえ後に遺産分割協議をやり直しても、第三者への売却は有効であり、返還を求めることはできません。
つまり、遺産分割協議のやり直しは、相続人同士の関係でのみ有効であり、第三者には影響を与えないということです。
注意点としては、遺産分割協議をやり直す前に、第三者に権利が移転していないか確認する必要があります。
また、一度権利が移転してしまうと、取り戻すのは困難です。
贈与税や所得税が発生する
遺産分割協議をやり直す場合、当初の相続税とは別に「贈与税」や「所得税」が発生するリスクがあります。
これは二重課税となる可能性があるので、注意が必要です。
具体的には、以下のケースで二重課税が発生する可能性があります。
- 再協議によって、当初とは別の人に財産を相続させる場合
例えば、当初は長男が土地を相続することになっていたが、再協議によって次男が土地を相続することになった場合、長男に対して土地の贈与があったとみなされ、贈与税が課税される可能性があります。 - 再協議によって、財産の分割割合を変更する場合
例えば、当初は遺産を兄弟で均等に分割することになっていたが、再協議によって長男に多く財産を分けることになった場合、長男に対して財産の贈与があったとみなされ、贈与税が課税される可能性があります。
- 遺産分割協議の内容に不備があり、税務署から指摘を受けた場合
遺産分割協議の内容に不備があると、税務署から指摘を受け、修正を求められることがあります。
修正によって、当初とは異なる財産の分割割合になる場合、二重課税が発生する可能性があります。
不動産取得税、登録免許税が発生する
遺産分割協議で不動産が含まれている場合、いったん相続登記を行った後であっても、協議をやり直すと相続登記もやり直す必要があります。
この場合、以下の費用が発生します。
- 不動産取得税・登録免許税の発生
- 登録免許税: 不動産の評価額に基づいて算定
- 不動産取得税: 都道府県・市町村ごとに税率が異なる
- 贈与税・所得税の発生
遺産分割協議のやり直しは、税法上「贈与」または「売買」とみなされるため、以下のような税金が発生する可能性があります。
- 贈与税: 贈与された財産の価額に基づいて算定
- 所得税: 不動産の場合、譲渡所得税が発生
遺産分割協議のやり直しについてのまとめ

ここまで遺産分割協議についてお伝えしてきました。
遺産分割協議のやり直しの要点をまとめると以下の通りです。
- 遺産分割のやり直しができる場合は①財産の漏れなどがあった場合の錯誤無効②詐欺、強迫による取消③全員が再協議に合意した場合のいずれかに該当する場合、遺産分割協議のやり直しが可能。
- 遺産分割請求権に時効はなく、何年経過しても、遺産分割協議をやり直すことは可能。
- 遺産分割やり直しの注意点は①遺産分割協議をやり直しても、第三者は保護される②贈与税や所得税が発生する③不動産取得税、登録免許税が発生することが挙げられる。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
