相続とは、人が生涯を終えた際に発生する法的な手続きで、その人の財産がどのように分配されるかを決定する法的な手続きです。
しかし、亡くなった人(被相続人)の法定相続人が存在しない場合、いわゆる「相続人不在」となり、その遺産の扱いはどうなるのでしょうか。
この記事では、相続人の不存在について以下の点を中心にご紹介します!
- 相続人不存在とは
- 相続人不存在の財産の行方
- 相続人不存在の手続き
相続人不存在について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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相続人不存在とは

相続人不存在というのは、ある人が亡くなったときに、その人の財産を相続する法定相続人が一人もいない状態を指します。
相続人不存在は、生涯結婚せずに子供や兄弟姉妹もいない人が亡くなった場合や、法定相続人になるはずだった人が全員先に亡くなっていた場合などに起こります。
法定相続人が存在しても、全員が相続を放棄した場合、相続人は存在しないとみなされます。
相続放棄とは、法定相続人が被相続人の財産に対する相続権を放棄する行為で、相続放棄を行うと、法定相続人であるにもかかわらず、その相続については一切関与しなくなります。

「相続人の不存在」と「相続人の不在」の違い
相続人の不存在と相続人の不在は、似ているようでそれぞれ違う概念です。
相続人の不存在は前述の通り、法定相続人が一人もいない状態を指します。
一方、相続人の不在とは、法定相続人がいるにもかかわらず、その人が行方不明になっている状態を指します。
行方不明の相続人がいる場合の手続きは、相続人不存在の場合とは違います。
数ヶ月から数年程度行方不明になっている場合、不在者財産管理人を任命し、その上で相続手続きを進めます。
たとえ法定相続人が存在していても、「欠格」による相続権の剥奪や亡くなった人の意志による「廃除」が行われ、相続人が存在しないと見なされれば、相続人不在となります。
相続人不存在になる場合

相続人不存在とは、民法の規定に従って相続人となる人が存在しない場合を指します。
これには、被相続人よりも先に亡くなった場合も含まれます。
行方不明者は、一定期間行方不明の状態が続くと、法律的に既に死亡したものと見なす失踪宣告が行われる場合があります。
しかし、失踪宣告が行われても、後から失踪者が生きていたことが判明した場合、失踪宣告は取り消され、はじめから存在しなかったことになります。
法定相続人が不在
被相続人に法定相続人がいない場合、遺言書が存在しない場合には、相続財産は行き場がなくなってしまいます。
その場合、関係者やその他の利害を有する人々の申し立てに基づき、家庭裁判所が行動を起こし、故人の資産を整理し、借金などを処理する『遺産管理者』を選任します。
相続放棄
相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の遺産を相続することを拒否することです。
相続放棄をすると、負債などのマイナスの財産はもちろん、現金や不動産などのプラスの財産も受け取ることはできません。
相続欠格、廃除
相続欠格とは、本来法定相続人であった方が一定の事情によって相続資格を失うことです。
一方、相続廃除とは、被相続人の意思により、本来法定相続人になっている人から相続権を奪う手続きです。
これらは、遺産継承のルールを破るような不適切な行動をとった遺族の遺産を受け取る権利、法律上当然として剥奪する制裁措置です。
遺産相続は、被相続人(亡くなった方)の財産を相続人が受け継ぐ手続きですが、すべての相続が喜ばしいものとは限りません。 被相続人の財産に多額の負債が含まれている場合や、相続手続きを避けたい事情がある場合など、相続人が相続放棄を選択するこ[…]
相続人不存在の財産の行方

相続人不存在とは、遺産を相続する人間がいない状態を指します。
この状況では、遺産の行方が問題となります。
ここでは相続人不存在の財産の行方について説明します。
遺言書の指定先
遺言書を用いることで、相続分の指定や遺産分割方法の指定、遺贈、寄付など、特定の人に対して遺産を贈与する旨が定められる場合があります。
遺言書によって指定された人が遺産を受け取ることができます。
特別縁故者
特別縁故者とは、被相続人(亡くなった人)に法定相続人(相続を受ける人)がいない場合に、特別に相続を受けられる人のことを指します。
特別縁故者は、公告期間終了後3ヵ月以内に、家庭裁判所に相続財産分与の申立てを特別縁故者として行うことが可能です。
国庫に帰属
遺言による遺贈が存在せず、特別縁故者もいない場合、その遺産は国庫に移されます。
国庫帰属とは、相続又は遺贈により土地を取得した所有者が、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求められる制度です。
このように、相続人が存在しない場合でも、遺産は適切に管理され、適切な手続きを経て適切な場所に行き着くことが保証されています。
相続人不存在の手続き

相続人が存在しない場合、一連の手続きが必要となります。
これらの手続きは法律に基づいて行われ、適切な手順を踏むことが求められます。
以下で詳しく相続人不存在の手続きについて解説します。
相続財産管理人の申立、公告
まず、相続財産管理人を立てるための申立を行います。
これは、相続財産を管理するための重要な手順です。
申立後、公告を行い、相続人の存在を広く知らせます。
請求申出の公告
次に、請求申出の公告を行います。
これは、相続財産に対する請求権者がいるかどうかを確認するためのものです。
相続人捜索の公告
相続人が見つからない場合、相続人捜索の公告を行います。
これにより、未知の相続人が現れる可能性があります。
特別縁故者への財産分与
相続人が見つからない場合、特別縁故者への財産分与が行われます。
これは、相続財産を公平に分配するためのものです。
分与の審判
分与の審判は、財産分与が公正に行われることを保証するためのものです。
これにより、特別縁故者が適切に財産を受け取れます。
分与財産の引き渡し
分与の審判が終了した後、分与財産の引き渡しが行われます。
これにより、特別縁故者は法的に財産を所有できます。
国庫へ引継ぎ
最終的に、相続財産は国庫に引き継がれます。
これは、相続人が存在しない場合の最終的な手続きです。
不動産共有者と特別縁故者の優先順位

不動産の相続においては、共有者と特別縁故者の間で優先順位が存在します。
この優先順位は、法律により定められており、特別縁故者が優先されることが一般的です。
特別縁故者は、法律上、不動産の相続において優先されます。
これは、特別縁故者が相続人としての資格を持つためです。
特別縁故者には、配偶者や子供など、故人と特別な関係を持つ人々が含まれます。
一方、不動産共有者は、故人と共有契約を結んでいた人々を指します。
不動産共有者は、特別縁故者と同等の権利を持つわけではありません。
しかし、彼らもまた、一定の権利を有しています。
特別縁故者となる要件

特別縁故者とは、相続人が存在しない場合に相続財産を受け取ることができる特定の人々を指します。
特別縁故者となるための要件は法律により定められています。
被相続人と同じ生計者
被相続人と同じ生計を営んでいた人は、特別縁故者となる資格があります。
これは、被相続人と深い経済的な関係を持っていたことを示しています。
被相続人の看護人
被相続人の看護を行っていた人も、特別縁故者となる資格があります。
これは、被相続人と深い人間関係を持っていたことを示しています。
被相続人と特別密接な関係者
被相続人と特別な関係を持っていた人も、特別縁故者となる資格があります。
これは、被相続人との関係性が深いことを示しています。
被相続人が深く関わった法人
被相続人が深く関わっていた法人も、特別縁故者となる資格があります。
これは、被相続人がその法人に対して深い関心を持っていたことを示しています。
特別縁故者という言葉は、相続の世界では非常に重要な意味を持ちます。 法定相続人がいない場合、被相続人と特別な関係にあった方々が相続財産を受け取ることができるこの制度は、多くの方にとって希望の光となることがあります。 この記事では、特[…]
特別縁故者が遺産を受け取る手続き

特別縁故者が遺産を受け取るための手続きは、法律に基づいて行われます。
以下で、特別縁故者が遺産を受け取る手続きの流れを説明します。
家庭裁判所に申立
まず、家庭裁判所に申立を行います。
これは、特別縁故者が遺産を受け取るための手続きを開始するための第一歩です。
相続財産管理人の選任の申立
次に、相続財産管理人の選任の申立を行います。
相続財産管理人は、相続財産を管理し、適切な手続きを進めるための重要な役割を果たします。
相続人の調査、官報公告
相続人の調査と官報公告を行います。
これにより、相続人が存在するかどうかを確認します。
債務の支払と受遺者への遺贈
債務の支払と受遺者への遺贈を行います。
これにより、遺産の清算と分配が進められます。
相続人不存在の確定
相続人が存在しないことが確定した場合、特別縁故者への遺産の分配が進められます。
特別縁故者への財産分与申立
最後に、特別縁故者への財産分与の申立を行います。
これにより、特別縁故者は遺産を受け取れます。
法定相続人がいない人の生前対応

法定相続人がいない人が生前に取るべき対応はいくつかあります。
法定相続人がいない人が生前に取るべき対応は、遺産の管理や分配をスムーズに行うためのものです。
法定相続人がいない場合、遺産は国庫に帰属しますが、国庫への帰属を避けるためには適切な生前対応が必要となります。
以下では、遺書の作成や死後事務委任契約、その他の対応について解説します。
遺書の作成
遺書は、自身の財産をどのように分配するかを明記した文書です。
公正証書の遺言は、公証人が作成し、証明する遺言で、法的な効力が非常に強いです。
公正証書遺言は、遺言者本人が公証人の前で口述し、公証人がその内容を文書化し、遺言者と証人が署名・押印することで成立します。
これにより、遺言者の意志が明確に伝えられ、遺産の分配が円滑に行われます。
死後事務委任契約
死後事務委任契約は、死亡後の事務を信頼できる第三者に委任する契約です。
死後事務委任契約により、遺産分配や債務の清算など、遺産に関する一切の事務をスムーズに進められます。
遺産の管理や分配は複雑な手続きが必要となるため、専門的な知識を持つ第三者に委任することで、適切な手続きが行われます。
その他
法定相続人がいない人が生前に取るべき対応は他にも、以下のような対応を生前に行うことが可能です。
債務処理
債務処理は、自身の債務を清算することです。
債務処理により、遺産として残される財産の価値を保てます。
債務が残ったままだと、遺産として受け継がれる財産が減少する可能性があります。
生前贈与
生前贈与は、自身の財産を生前に他人に贈ることです。
生前贈与により、自身の意志に基づいて財産を分配できます。
また、生前贈与により相続税の節税効果も期待できます。
遺言作成を弁護士に依頼するメリット

遺言作成を弁護士に依頼することには、多くのメリットがあります。
以下に、その主なメリットを説明します。
相談からトラブルまで対応可能
弁護士に遺言作成を依頼する最大のメリットは、相談からトラブルまで一貫して対応可能であることです。
遺言作成は、法律的な知識を必要とする複雑な手続きがあり、弁護士はその専門的な知識と経験を活かして、適切なアドバイスとサポートを提供します。
遺言書が無効にならない
弁護士に遺言作成を依頼すると、遺言書が無効になるリスクを大幅に減らせます。
弁護士は、遺言書が法的に有効であることを確認し、必要な手続きを適切に行います。
相続トラブルの予防
弁護士による遺言作成は、相続トラブルの予防にも役立ちます。
弁護士は、遺言者の意志を明確に記述し、相続人間の問題を事前に回避することが可能です。
トラブル解決
万が一、相続トラブルが発生した場合でも、弁護士は適切な解決策を提供します。
弁護士は、遺言者の意志を尊重し、公平な解決を目指します。
相続は、法的な複雑さと個人的な感情が交錯するデリケートな問題です。 このような状況では、適切な法的サポートが不可欠となります。 特に弁護士は、相続問題において中心的な役割を果たし、法的なアドバイス、紛争の解決、遺産分割協議のサポート[…]
弁護士に遺言書作成を依頼する注意点

弁護士に遺言書作成を依頼する際には、いくつかの注意点があります。
ここでは、弁護士に遺言書作成を依頼する際の注意点を説明します。
希望を明確に伝達
遺言書作成を依頼する際には、自身の希望を弁護士に明確に伝達することが重要です。
これにより、遺言書が自身の意志を正確に反映するものとなります。
また、弁護士に対する指示も明確に伝えることで、適切な遺言書が作成されます。
もめそうなケースは慈善団体に依頼
相続に関するトラブルを避けるためには、もめそうなケースでは遺産を慈善団体などに寄付することを検討すると良いでしょう。
これにより、相続人間の争いを避けることができる場合があります。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」は、どちらも遺言の形式の一つですが、その作成方法や効力には大きな違いがあります。
ここでは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」について解説します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が自分で全文を手書きし、日付と署名をすることで作成されます。
この形式の遺言は、特別な手続きや証人は必要なく、個人での作成が可能です。
ただし、遺言がはっきりしない場合や、遺言書の保管や発見に問題がある場合、遺言の効力が発生しない可能性があります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が作成し、証明する遺言です。
遺言者は公証人の前で遺言の内容を述べ、それを公証人が文書化します。
そして、遺言者と証人が署名・押印をすることで遺言が成立します。
公正証書遺言は法的な効力が強く、内容が明確であるため、相続に関するトラブルを防げます。
ただし、公証人による作成費用が発生します。
特定の団体や任意の人に相続したい場合

遺産を特定の団体や人物に渡したいと考えるのは自然なことです。
これを実現するためには、遺言書の作成が最も確実な手段となります。
ここでは、そうした意志を法的文書に反映させる方法について解説します。
遺言書の種類とその特徴
遺言書にはいくつかの形式があり、それぞれに独自の特徴と要件があります。
一般によく用いられる自筆証書遺言は、手軽に作成できる反面、書き間違いや紛失のリスクも伴います。
対照的に、公正証書遺言は公証人の関与により法的な強度が増し、書面の正確性や保管に関する心配が軽減されます。
遺言書を作成する際は、このような特徴を理解し、自分の状況に合った方法を選択することが大切です。
自筆証書遺言のメリットは、証人や専門家を必要とせずに、自分の手で直接、意志を記録できる点にあります。
しかし、明確さが求められるため、文章は具体的で誤解の余地がないように慎重に作成する必要があります。
また、遺言書の保管方法も重要で、紛失した場合、見つからない場合には遺言としての効力を失う可能性があります。
公正証書遺言の場合、公証人が遺言の内容を正確に理解し、その指示に基づいて文書を作成します。
この形式の最大のメリットは、内容の正確性が保証され、遺言書の紛失や偽造を防げる点です。
また、公証人による説明を受けることで、法律上の疑問点をクリアにし、後に生じるかもしれないトラブルを回避する助けにもなります。
特定の相続人を指定する遺言の書き方
遺言書においては、特定の相続人や団体への資産分配を指定する際、明確さが求められます。
具体的な資産の指定、相続人の氏名や住所、団体名とその所在地を詳細に記載し、どの資産をどのように分けるのかをはっきりさせる必要があります。
また、相続させたい財産が特定の条件下でのみ相続されることを望む場合、それらの条件も明確に記述することが必要です。
遺言における明確性は、相続の際の混乱や紛争を避けるために不可欠です。
例えば、「私の財産の中で、東京都世田谷区にある自宅は、私の長年の友人である山田太郎(住所:〇〇〇)に相続させる」といった具体的な指示が求められます。
また、特定の団体への寄付を希望する場合、「私の銀行口座にある金額の50%を、NPO法人〇〇(所在地:〇〇〇)に寄付する」といった具体的な表現が重要です。
相続人に行方不明者がいる場合

相続人が行方不明である場合でも、その人が生存しているとみなされる期間が経過するまでは、相続人が存在しないとは認定されません。
これは、行方不明者がいずれ戻ってくる可能性を尊重するための法的な配慮です。
行方不明者の扱い
行方不明者は、一定の期間が経過するまで生存しているとみなされます。
この期間は通常、行方不明になった日から7年間とされています。
相続人が行方不明になってから7年間が経過すると、行方不明者は法的に死亡したとみなされ、その相続が開始されます。
相続手続き
行方不明者が相続人である場合、その人がまだ生きていると考えられる時間が過ぎ去るまで、相続手続きは一時的に停止されます。
しかし、その他の相続人が存在する場合、それらの人々に対する相続手続きは通常通り進行します。
相続人不存在の認定
行方不明者が唯一の相続人である場合、その人が生存しているとみなされる期間が経過すると、相続人が存在しないと認定されます。
この場合、遺産は国庫に帰属します。
相続人の不在に関するよくある質問

相続人不存在とは?
相続人不存在とは、被相続人(亡くなった方)に法定相続人がいない、または相続人全員が相続放棄を行ったため、相続財産を受け継ぐ人が存在しない状態を指します。この状況が発生すると、遺産は通常の相続手続きでは処理できず、特別な手続きが必要になります。
相続人がいない場合でも、遺産は適切に管理され、最終的に法的な規定に基づいて引き継がれます。財産を引き継ぐ可能性があるのは、遺言書により指定された受益者や、特別縁故者として裁判所が認めた人です。それでも該当者がいない場合、遺産は最終的に国庫へ帰属することとなります。
相続人不存在のケースは、遺産を適切に処理しなければ放置されたままになるリスクがあるため、速やかに相続財産管理人を選任し、法的な手続きを進めることが求められます。
法定相続人がいない場合の手続きはどうしたらいい?
法定相続人がいない場合、遺産を適切に処理するためには特別な手続きが必要です。以下は、相続人不存在の際に必要な主な手続きの流れです。
1. 相続財産管理人の選任
相続財産を管理し、適切に処理するため、家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てます。相続財産管理人は、通常、弁護士や司法書士などの専門家が選任されます。
2. 公告による相続人の捜索
相続財産管理人が選任された後、家庭裁判所の指示のもと、官報で公告を行い、相続人がいないかを確認します。この公告期間は通常6か月以上です。
3. 特別縁故者への財産分与
公告期間が終了しても相続人が現れない場合、被相続人と特別な関係があった人(特別縁故者)が家庭裁判所に申し立てを行い、財産を受け取れる場合があります。特別縁故者とは、被相続人の世話をしていた友人や支援者、事実婚の配偶者などを指します。
4. 財産の国庫帰属
特別縁故者がいない、または申し立てが認められなかった場合、最終的に遺産は国庫に帰属します。
5. 遺産の清算
相続財産管理人は、被相続人の遺産を管理し、必要に応じて債務の清算や残った財産の処理を行います。これには、不動産の売却や預貯金の引き出しなどが含まれます。
法定相続人がいないことが事前に分かっている場合は、生前に遺言書を作成し、財産の行き先を明確にしておくことで、手続きの複雑化や財産の放置を防ぐことができます。専門家のサポートを受けることで、スムーズに手続きを進めることが可能です。
全員が相続放棄をしたらどうなる?
被相続人の相続人全員が相続放棄をした場合、法的には相続人が存在しない状態、つまり「相続人不存在」の状態になります。この場合、遺産の管理や処理は通常の相続手続きでは進められず、以下のような特別な対応が必要です。
1. 相続財産管理人の選任
相続放棄が成立すると、遺産はそのまま放置されるわけではなく、家庭裁判所が「相続財産管理人」を選任します。この管理人は遺産を適切に管理し、必要に応じて清算を行います。
2. 債務の清算
相続放棄によって、相続人は遺産だけでなく債務(借金)の支払い義務も免れます。しかし、相続財産が残っている場合、相続財産管理人はその財産を利用して債務の清算を行います。債務の支払い後、残った財産についてさらに手続きが進められます。
3. 特別縁故者への財産分与
被相続人に特別な関係があった人(例: 長年介護をしていた友人や支援者)がいる場合、その人が家庭裁判所に申し立てを行い、財産の一部または全部を受け取れることがあります。
4. 国庫への帰属
特別縁故者がいない、または申し立てが認められなかった場合、最終的に遺産は「国庫」に帰属します。
5. 遺産の保存義務
相続放棄後も、遺産を現に占有している人(被相続人と同居していた家族など)には、遺産の保存義務が課されます。遺産を故意に損壊したり消費したりすると、法律上の責任を問われることがあります。
相続放棄を選択することで、相続人が不要な債務を背負うことを回避できますが、手続きが複雑化するため、相続財産管理人の選任や遺産管理には時間と費用がかかる場合があります。事前に専門家に相談することで、スムーズな手続きが可能になります。
相続人の不在についてまとめ

ここまで相続人の不在についてお伝えしてきました。
相続人の不在の要点をまとめると以下の通りです。
- 相続人不存在とは法定相続人がいない状況を指す
- 相続人不存在の財産の行方は特別縁故者に分配、または国庫に帰属する
- 相続人不存在の手続きは相続財産清算人の選任、債権者・受遺者への支払、相続人不存在の確定、特別縁故者に対する分与などが含まれる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


