生前贈与は相続税対策として広く利用されていますが、税制改正によってそのルールが変更されました。これにより、従来の贈与計画が影響を受ける可能性があります。
本記事では生前贈与に関する税制改正について以下の点を中心にご紹介します。
- 相続税に加算する生前贈与の期間について
- 相続時精算課税制度の見直しとは
- 生前贈与加算の期間延長による増税を抑えるためには
生前贈与に関する税制改正について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
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生前贈与の流れ

生前贈与を行う際には、計画的かつ正確な手続きが重要です。以下は、生前贈与を進める一般的な流れです。
1. 贈与計画の立案
- 目的を明確にする
生前贈与を行う理由や目的(例:相続税対策、住宅購入支援、教育資金の提供など)を明確にします。 - 贈与の範囲と方法を決定する
誰に、どの財産を、どのように贈与するかを決めます。贈与する財産は現金、不動産、株式などが考えられます。
2. 贈与契約書の作成
- 贈与内容の記録
贈与者と受贈者の間で、贈与契約書を作成します。契約書には以下の内容を明記します:- 贈与者と受贈者の名前
- 贈与する財産の内容とその価値
- 贈与の目的
- 贈与の日付
- 署名・押印
贈与契約書は、双方の署名と押印を行い、公正証書として作成するとより確実です。
3. 財産の移転手続き
- 現金の贈与
受贈者名義の銀行口座に振り込むことで、贈与の事実を客観的に証明できます。 - 不動産の贈与
不動産の場合、贈与契約書に基づき所有権移転登記を行います。この際、司法書士に依頼するとスムーズです。 - 株式やその他の財産の贈与
株式の名義変更など、財産の種類に応じた移転手続きを進めます。
4. 贈与税の申告と納付
- 贈与税の基礎控除額を確認する
生前贈与には、年間110万円までの非課税枠(基礎控除額)が適用されます。それを超えた場合は贈与税が発生します。 - 贈与税の申告手続き
贈与税が発生する場合、受贈者が翌年の2月1日から3月15日までに税務署へ申告・納付を行います。
5. 記録の保存
- 贈与の証拠を保管
贈与契約書や財産移転に関する書類、振込記録などは、税務調査や相続時の確認のために保管しておきます。
注意点
- 名義預金や定期贈与など、形式的な贈与が後に否認されるリスクがあります。
- 特別受益として扱われる場合、相続時にトラブルが生じる可能性があるため、相続人間のバランスを考慮することが重要です。
生前贈与を適切に進めるには、税理士や弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
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相続税に加算する生前贈与の期間が7年に延長

2023年の税制改正により、生前贈与に関する大きな変更が加えられました。特に注目すべきは、相続税の計算において、生前贈与の加算期間が従来の「3年」から「7年」に延長された点です。この改正は、相続税の節税対策として行われていた生前贈与の影響範囲を広げるものとして、多くの人にとって重要な意味を持っています。
生前贈与加算とは?
生前贈与加算とは、相続開始前に被相続人から贈与された財産を、相続財産に持ち戻して計算する制度です。これにより、相続税を算出する際に一定期間内の贈与額が相続財産に含まれるため、相続税の負担が増える可能性があります。
改正前後での主な違い
これまでの加算対象期間は「相続開始前3年間」に限られていました。しかし、2023年度の税制改正でこの期間が「7年間」に延長され、2024年1月1日以降の贈与から段階的に適用されます。ただし、相続開始前の4年~7年前の贈与については、贈与総額から100万円を控除した金額が加算される仕組みが導入されました。
改正の背景と目的
持ち戻し期間の延長には、「富裕層への課税強化」と「資産の早期移転促進」という2つの目的があります。高額な財産を持つ家庭が贈与を活用して相続税の負担を軽減することを防ぎつつ、資産を早い段階で若年層に移転させることで、経済の活性化を図る意図があります。
加算期間延長がもたらす影響
例えば、相続開始前の6年前に行われた100万円の贈与は、改正前は持ち戻しの対象外でしたが、改正後は相続財産に含まれます。この延長により、相続税負担が増える可能性があるため、生前贈与を行う際には、より慎重な計画が求められるようになります。
相続時精算課税制度は、贈与税の制度の一つです。 相続時精算課税制度では、贈与された財産について贈与税ではなく、贈与者が亡くなってから相続税の対象として課税されます。 この相続時精算課税制度の改正について、気になる方も多いのではないで[…]
相続時精算課税制度の見直し

2023年(令和5年)の税制改正では、「相続時精算課税制度」に大きな変更が加えられました。この制度は、60歳以上の父母や祖父母が18歳以上の子や孫に財産を生前贈与する際、贈与額が累計で2,500万円を超えない限り贈与税が課されないというものです。超過分については20%の税率で課税されます。制度を利用する際には、贈与者と受贈者の関係や年齢に一定の条件があり、選択後はその贈与者からの贈与がすべてこの制度の対象となります。また、贈与財産は最終的に相続時に相続財産として課税される仕組みです。
これまでは、相続時精算課税制度を選択した場合、通常の贈与で適用される110万円の基礎控除を利用することができず、すべての贈与に申告が必要でした。しかし、今回の改正により、相続時精算課税制度を利用していても、年間110万円以下の贈与については基礎控除が適用され、贈与税の申告が不要となりました。
また、これらの基礎控除の範囲内での贈与額は、相続税の計算時に相続財産へ加算する必要もなくなります。
この見直しにより、相続時精算課税制度の利用者にとって、柔軟性が向上し、贈与計画の選択肢が広がりました。特に、少額の贈与を複数回に分けて行うケースでは、基礎控除の恩恵を受けられる点が大きなメリットとなります。今回の変更を活用することで、より効率的な相続対策を進めることができるでしょう。
改正前と改正後の違い
024年1月1日から施行される相続税・贈与税の改正では、生前贈与に関するルールが大きく変更されます。以下に、主な改正点を比較し、改正前後の違いをまとめます。
- 生前贈与加算期間
改正前
被相続人が亡くなる前の3年間に行われた贈与が相続財産に加算され、相続税の課税対象となっていました。
改正後
加算期間が7年間に延長されます。
4~7年前の贈与については、年間100万円までは相続財産に加算されませんが、それを超える部分は加算の対象となります。
亡くなる3年前までの贈与については、従来通り全額が加算されます。
- 相続時精算課税制度の基礎控除
改正前
相続時精算課税制度では、累計2,500万円までの贈与が非課税でしたが、基礎控除がなく、少額の贈与にも税金が発生する課題がありました。
改正後
新たに年間110万円の基礎控除が設けられました。
110万円以下の贈与は非課税となり、申告も不要です。
この基礎控除部分については、生前贈与加算の対象外となります。
- 課税対象の柔軟性
改正前
暦年贈与を活用して年間110万円以内の非課税枠を利用するケースが多く見られました。
改正後
生前贈与の加算期間延長により、短期間での贈与による節税効果が薄れ、長期的な贈与計画が重要になります。
改正の影響
今回の改正により、生前贈与を活用した相続税対策には次のような影響があります:
短期間での贈与の節税効果が減少
加算期間の延長により、数年のうちに多額の財産を贈与する方法は効果が低下します。
基礎控除の活用で少額贈与が容易に
相続時精算課税制度を選択しても、年間110万円まで非課税となるため、少額贈与が活用しやすくなります。
まとめ
加算期間の延長により、長期的な贈与計画が重要になります。
基礎控除の新設により、相続時精算課税制度の使い勝手が向上しました。
これらの違いを理解し、適切な相続税対策を講じるために、税理士などの専門家への相談をおすすめします。
相続税計画は、我々の生活において重要な役割を果たします。 その中でも、特に注目すべきは贈与税の課税制度の選択です。 本記事では、相続時精算課税制度について以下の点を中心にご紹介します! 相続時精算課税制度 相続時[…]
生前贈与加算の期間延長による増税を抑えるためには

生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長されることで、相続税の負担が増加する可能性があります。この改正による影響を軽減するためには、早めの計画と適切な対策が重要です。以下に具体的な方法を紹介します。
- 法定相続人以外への贈与を検討する
生前贈与加算の対象は主に法定相続人への贈与に限られています。そのため、法定相続人以外の親族や第三者(友人や知人、介護者など)に贈与することで、加算対象外となります。ただし、特定の条件下では例外的に対象となる場合があるため、詳細は専門家に確認する必要があります。
また、法定相続人の範囲は民法で定められており、配偶者のほか、直系卑属(子や孫)や直系尊属(父母や祖父母)、兄弟姉妹が含まれます。また、子がすでに亡くなっている場合には孫が代襲相続人として加わる可能性があるため注意が必要です。
- 早めに暦年贈与を始める
2024年から段階的に生前贈与加算の対象期間が延長されるため、早めに贈与を開始することで負担を抑えることができます。暦年贈与では、毎年基礎控除額の110万円以内での贈与が非課税となるため、これを活用して少額ずつ財産を移転していく方法が効果的です。
ただし、同じ金額を定期的に贈与すると「定期贈与」とみなされる可能性があるため、金額や贈与のタイミングを変えたり、贈与契約書を作成するなどの工夫が必要です。
- 贈与の特例を活用する
以下の特例を利用することで、特定の目的に対する贈与を非課税で行うことが可能です。
- 教育資金の一括贈与
最大1,500万円までの教育資金贈与が非課税となります(適用期限:2026年3月31日)。 - 結婚・子育て資金の一括贈与
結婚費用として最大300万円、子育て費用として最大1,000万円が非課税です(適用期限:2025年3月31日)。 - 住宅取得等資金の贈与
省エネ住宅の場合は1,000万円、それ以外は500万円まで非課税(適用期限:2026年12月31日)。 - 配偶者控除(おしどり贈与)
夫婦間で居住用不動産やその購入資金を贈与する場合、最大2,000万円まで非課税です。
これらの制度をうまく組み合わせることで、非課税枠を最大限活用しながら財産を移転することが可能です。
- 専門家に相談して計画を立てる
生前贈与や相続税対策は個々の状況によって最適な方法が異なります。税務の専門家や相続専門の税理士に相談することで、自身に合った対策を計画的に進めることができます。
早めの準備と計画を行い、上記の方法を活用することで、生前贈与加算期間延長による増税の影響を最小限に抑えられるでしょう。
生前贈与に関する税制改正についてよくある質問

ここでは生前贈与に関する税制改正についてよくある質問を以下にまとめました。
いつから110万円贈与が7年になるのですか?
2023年度の税制改正により、2024年1月1日以降の暦年贈与に対して、生前贈与加算の対象期間が「7年」に延長されることになりました。この変更は、納税者にとって負担が増える改正と言えます。
暦年贈与では、毎年110万円までの基礎控除が設けられていますが、従来のルールでは、被相続人が亡くなる直前の3年間に行われた贈与が相続財産に加算される仕組みとなっていました。この加算期間が7年に延びることで、過去に遡って相続財産に組み込まれる贈与が増える可能性が高まり、相続税負担が増大することが予想されます。
生前贈与はいくらまでなら無税ですか?
暦年課税における贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与財産の総額から、基礎控除額である110万円を差し引いた金額に対して課されます。そのため、1年間で贈与された財産の総額が110万円以内であれば、贈与税は発生しません。この場合、贈与税の申告を行う必要もありません。
生前贈与に関する税制改正についてのまとめ

ここまで生前贈与に関する税制改正についてお伝えしてきました。生前贈与に関する税制改正の要点をまとめると以下の通りです。
- 2023年の税制改正により、相続税の計算において生前贈与の加算期間が従来の「3年」から「7年」に延長された
- 2023年(令和5年)の税制改正では、「相続時精算課税制度」に大きな変更が加えられた
- 暦年課税における贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与財産の総額から、基礎控除額である110万円を差し引いた金額に対して課される
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


