相続税の申告は一度提出すれば完了ではなく、申告内容に不備や不審な点があった場合には、税務署による「税務調査」が行われることもあります。
実際、すべての申告に対して調査が入るわけではありませんが、特定の条件に該当する人は税務署から注目されやすいことが知られています。
本記事では、キーワードについて以下の点を中心にご紹介します。
- 相続税に関する税務調査の概要
- 税務署に調査されやすい人の特徴やパターン
- 調査を防ぐための事前対策と相続に強い税理士の選び方
本内容を理解する際の手がかりとして、ご活用いただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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相続税の税務調査とは

申告手続きが完了した後、内容に不備や不審な点があると判断された場合、「相続税調査」や「相続税に関する実地調査」と呼ばれ、申告された内容に誤りがないかを確かめるための調査が実施される場合があります。すべての相続に対して行われるわけではありませんが、一定の基準に基づいて選定された事案に対し、調査が実施されます。
何を調査されるのか?
税務調査では、申告された財産が正しく評価・申告されているかどうか主にチェックすべき項目です。特に現金や預貯金、不動産、株式、生命保険、名義預金やタンス預金などです。また、過去の贈与歴や、故人の生前に出金された大きな現金の動きもチェック対象となります。たとえば、被相続人の口座から生前に引き出された多額の現金が家族名義の通帳に移っていた場合、それが贈与として認定されるか否かが争点になることもあります。
税務調査の方法とは?
相続税の税務調査は、大きく分けて「実地調査」と「簡易な接触調査」の2種類があります。実地調査では、税務署の職員が相続人や税理士のもとを訪れ、直接書類や通帳、財産状況を確認します。調査は数時間から1日がかりで行われることが一般的で、対象となる相続人には事前に電話連絡や通知書が届きます。一方、簡易な接触調査では、電話や郵送で申告内容の確認がなされ、必要があれば追加資料の提出が求められる形式です。
調査が入りやすい時期とは?
税務調査が行われやすい時期は、相続税の申告期限(死亡後10ヶ月以内)から約1年〜2年後が多いとされています。これは、税務署が提出された申告書をもとに事前審査し、調査の必要性を判断するまでに一定の時間を要するためです。また、調査対象に選ばれた場合、申告期限から3年以内であれば通常の実地調査として扱われますが、それ以降でも悪質な申告漏れが疑われる場合には「更正の請求」により遡って調査される可能性もあります。
税務署のチェック対象となりやすい12のパターン

以下では、特に調査対象として注目されやすい12のパターンを紹介します。該当する場合は、申告時に慎重な対応が求められます。
申告書が正しく作成されていない場合
記載漏れや数字の整合性が取れていないなど、申告内容にミスや不明点があると、税務署に内容を問われる可能性が高くなります。
相続額が大きい場合(2億円以上)
相続財産の総額が高額である場合、税務署としても課税漏れの可能性が高いと判断し、調査が優先される傾向があります。
現金および預金が相続財産の中心を占め、過去の資金移動が活発だった場合
被相続人名義の預金や現金が多額であり、かつ生前の出金履歴が複雑な場合、贈与や名義変更の疑いがあるとして詳しく見られます。
相続財産より借金の額が大きい場合
債務控除を目的に過大な借入金を申告しながら、対応する資産が見合っていないと、不自然さから調査対象になります。
名義預金や贈与が多くある場合
被相続人の口座から家族名義へ資金移動が頻繁にある場合や、毎年のように贈与が行われていた場合、形式上の贈与である可能性を疑われやすくなります。
相続人名義の証券口座に残額が多くある場合
生前に資金移動があったとされる証券口座に不自然な資金残高があると、名義だけ移した実質的な被相続人の資産と見なされることもあります。
海外資産が多い場合
国外の銀行口座や不動産を含む場合、日本国内で把握しづらいため、申告漏れがないかを慎重に確認されます。
生前に不動産収入や株の売却益があったが、申告額が実際よりも少ない場合
申告内容と過去の所得履歴が一致していないと、不正確な申告と判断される恐れがあります。
家族の資産が多い場合
被相続人だけでなく家族全体の資産規模が大きい場合、名義預金や無申告資産の存在が疑われやすくなります。
高所得を得ていた被相続人の場合
医師や弁護士、上場企業の役員など高収入が想定される職種の場合、相応の財産が申告に含まれていないと判断された場合、過去の収入や資産の移動について詳しく調べられる可能性があります。
税理士に依頼せず自分で申告した場合
専門家を通さず申告した場合、誤りや漏れの可能性があると見られ、調査対象になる場合があります。
無申告の場合
一定額以上の財産があるのに申告がなかった場合、税務署が調査し、申告内容に漏れや不足があると指摘を受けることがあります。
税務調査を受けないためにできる対策とは?

調査を避けるには、事前の準備が欠かせません。ここでは、申告時に注意すべきポイントと、日頃から意識しておきたい備えについてご紹介します。
間違いが含まれていないかを見直す
税務調査の大きな原因となるのが「申告漏れ」です。特に現金や預金、不動産、有価証券など、申告すべき財産を正確に把握しきれていないことが多く見受けられます。また、名義預金や生命保険金、貸金庫の中身など、見落としやすい項目も注意が必要です。
相続税の申告は専門性が高いため、財産評価の方法や必要書類に不備があると、意図せずミスしてしまうこともあります。こうした問題を回避するには、相続に詳しい税理士に相談するのがおすすめです。第三者の視点で申告内容をチェックしてもらうことで、調査対象となる可能性を大幅に抑えられます。
相続のやり取りは、記録として残しておく
税務署は、相続人間の金銭のやり取りや財産の移動記録を重視します。被相続人が生前に家族へ贈与をしていた場合には、通帳の入出金履歴や贈与契約書、財産分割に関する協議内容などが調査の対象となることがあります。贈与税の申告を適切に行っていたかどうか、贈与の事実を示す書類があるかなど、詳細な確認が行われます。これらをきちんと保管しておくことで、税務調査での疑念を晴らす材料となります。
相続前に財産の内容を確認しておく
被相続人が亡くなってから慌てて財産を調査するのではなく、生前から財産状況を把握しておくことも、税務調査対策として非常に重要です。
財産の種類や所在を明確にしておけば、相続人が申告時に漏れなく対応しやすくなりますし、不明な資産が見つかって後から修正申告するような事態も防げます。生前に家族で財産について共有し、相続に向けた準備を進めておくことは、トラブルの回避にも役立ちます。
相続や税務調査に強い税理士の探し方

相続税の申告や税務調査への対応は、専門性の高い知識と実務経験が求められます。正確に対応するためには、自分に合った税理士選びが非常に重要です。ここでは、相続や税務調査に精通した税理士を見つけるためのポイントを3つに分けて解説します。
専門分野を確認する
税理士にはそれぞれ得意分野があります。企業の会計や法人税申告をメインにしている税理士もいれば、相続税や資産税の案件を専門に取り扱っている税理士もいます。相続や税務調査に関しては、資産税に強い税理士を選ぶのが基本です。
また、相続税は経験による知見の差が大きく出やすい分野でもあります。税理士事務所のホームページやインタビュー記事などを参考に、「相続税専門」「相続税申告〇〇件以上」などの記載があるかを確認するとよいでしょう。
依頼前に面談する
税理士選びで後悔しないためには、事前に対面またはオンラインで面談することが大切です。初回相談は無料としている事務所も多く、質問しながら人柄や対応力を見極められます。
相談時には、「税務調査の対応実績はありますか?」「税務署とのやりとりはどのように進めてくれますか?」といった具体的に聞いてみるのもおすすめです。また、難しい税務用語を分かりやすく説明してくれるか、こちらの話を丁寧に聞いてくれるかも判断材料となります。
実績を確認する
どんなに親切でも、相続税や税務調査への対応経験がなければ本末転倒です。できれば過去の申告件数や、税務調査の対応実績を数字で提示してもらえると信頼につながります。また、税務調査での是認率(修正指摘がなかった割合)や、過去に対応した相続財産の規模などを尋ねると、その税理士の実力がより明確になります。
加えて、相続税申告においては不動産や非上場株式の評価など、複雑な財産に対しても的確に対応できる力があるかどうかも確認しておきましょう。
相続税の税務調査に関してよくある質問

相続税に関する税務調査は、不安の多いものです。調査の対象や時期、範囲については疑問を持たれる方も少なくありません。ここでは、実際によく寄せられるご質問をご紹介します。
相続税の税務調査は何年さかのぼりますか?
相続税の税務調査が行われる場合、その対象となるのは原則として相続税の申告期限から5年以内の期間です。これは「法定申告期限の翌日から5年間」が相続税の時効であるためです。ただし、不正行為(例えば意図的な財産隠しや虚偽申告)が認められた場合には、この時効期間は7年に延びることがあります。
このため、相続税を申告した後であっても、5年程度は帳簿や資料の保存、通帳などの記録管理をしっかり行っておくことが大切です。財産の流れが複雑であったり、現金や名義預金が多く含まれていたりする場合、税務署は過去の贈与や出金履歴にまでさかのぼって確認する傾向にあります。
また、相続が発生する以前に行われた生前贈与の内容も、必要に応じて調査されることがあります。相続開始から3年以内の贈与は相続税の課税対象に含まれるため、その時点からさかのぼって確認されることになります。
相続税の税務調査はどこまで調べますか?
税務署による相続税の調査は、単に申告書に記載された財産だけを確認するものではありません。実際には、実際の財産状況と申告内容が一致しているかどうかを多角的に確認するため、かなり広範囲にわたる調査が行われます。
たとえば、被相続人および相続人の銀行口座の入出金履歴(過去数年分)、定期預金の解約履歴、タンス預金の可能性、クレジットカードの使用状況、さらには不動産の登記情報や車両、貴金属、美術品などの資産まで細かくチェックされることがあります。
また、名義預金の疑いがある場合には、相続人の口座や贈与履歴も調査対象になることがあります。「名義は相続人でも、実際の管理や使用は被相続人だった」というケースでは、申告漏れと判断される可能性があるため注意が必要です。
税務署は、これらの情報を金融機関や不動産登記簿、さらには過去の確定申告データなどから取得できる権限を持っており、公的なデータベースや反面調査を通じて、申告書に記載されていない資産の有無も把握可能です。
こうした背景から、相続税の申告は「バレなければ大丈夫」と考えるのではなく、透明性と正確性を重視することが何より重要といえるでしょう。税務署の目を意識するというよりも、「後から説明できる申告」を心がけておくことが、トラブル回避への第一歩となります。
相続税についてのまとめ

この記事では、相続税に関連する税務調査について、調査が行われる背景や対象となりやすいケース、そして税務調査の対策について解説しました。主な要点は以下の通りです。
- 申告手続きが完了した後でも、不備や不審点があれば税務調査の対象になる可能性がある
- 調査されやすいのは、申告額が大きいケースや、現金・名義預金など不明瞭な財産を含むケース
- 調査を防ぐには、そして相続に強い税理士への依頼が適切な対応につながる
適正な申告と早めの準備が、税務調査の可能性を軽減することにつながります。心配な点があるときは、専門的な知識を持つ人に相談するのが得策です。これらの情報が、少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。