個人事業主が死亡した場合の相続手続きはどうなる?手続きの流れも解説

個人事業主が死亡した場合の相続手続きについて気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、個人事業主の相続手続きについて以下の点を中心に解説していきます。

  • 個人事業主が死亡した場合
  • 個人事業主が死亡した場合の事業引き継ぎについて
  • 個人事業主が死亡した場合の相続放棄の方法について

個人事業主の相続手続きについて理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

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個人事業主とは

個人事業主とは、税務署に開業届を提出して事業を営んでいる個人のことを指します。
株式会社とは異なり、株式を発行して資本金を集めることはできません。

事業開始に必要な資金は個人事業主自身が用意し、この資金を「元入金」と呼びます。

フリーランスという言葉も個人事業主と混同されやすいですが、フリーランスは会社に雇用されずに働く働き方を指す言葉であり、法人として活動することも可能です。
つまり、フリーランスは個人事業主の一形態といえるでしょう。

個人事業主の業種は非常に幅広く、飲食店、小売店、医療従事者、士業、技術職など、様々な分野で個人事業主として活動できます。

個人事業主が死亡した場合

個人事業主が亡くなった場合、相続人は様々な手続きを行う必要があります。
中でも、相続人の確認と負債が多い場合の対応は、普段経験する機会が少ないため、どのように進めて良いのか迷う方も多いでしょう。

相続人数の確認

相続人数の確認は、相続税の申告や遺産分割協議を行う際に必要です。

相続人数は、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本、相続人の戸籍謄本や除籍謄本を取得して確認します。
被相続人が生前、頻繁に転居していた場合は、各住所地の戸籍謄本や除籍謄本を取得する必要があります。

また、被相続人が婚姻歴や離婚歴がある場合は、婚姻届や離婚届の写しも取得しておくとよいでしょう。
相続人数の確認は、相続税の申告や遺産分割協議を行う前に、必ず行うようにしましょう。

相続する債務が多い場合

個人事業主の相続で債務が多い場合、亡くなった個人事業主が多くの債務を抱えている場合、相続人は以下の3つの選択肢があります。

  • 相続放棄
    相続放棄とは、相続人が相続する権利を全て放棄することです。
    債務だけでなく、プラスの財産も含めて全ての相続権を放棄することになります。
  • 限定承認
    限定承認とは、相続人が相続したプラスの財産で相殺できる範囲で、負債を相続することです。
    限定承認の手続きは、相続放棄に比べて複雑なものです。
    しかし、大きな負債を抱えた事業を引き継ぎたい場合には、限定承認が効果的な方法となります。
  • 単純承認
    単純承認とは、何も手続きを取らずに相続することです。
    相続人がプラスの財産だけでなく、全ての債務を相続することになります。

相続放棄については、こちらの記事もお読みください。

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個人事業主死亡に伴う届け出

個人事業主が亡くなった場合にしなければならない届出にはどのようなものがあるのでしょうか。
必要な手続きについて見ていきましょう。

死亡届

死亡届は、人が亡くなった際に提出する必要書類です。
個人事業主であるかどうかに関わらず、死亡を知った日から7日以内(国外で亡くなった場合は3ヶ月以内)に提出しなければなりません(戸籍法86条1項)。

提出場所は、死亡者の死亡地、本籍地、または届出人の所在地の市区町村役場で提出することができます。
死亡届は、24時間いつでも提出でき、死亡届を提出しないと、罰則を受ける可能性があります

廃業届

個人事業主が亡くなられた場合、相続人が廃業届を提出する必要があります

正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。
個人事業主が死亡した日から1ヶ月以内に提出する必要があります。

以下、廃業届を提出する際の必要書類です。

必要書類

  • 個人事業の開業・廃業等届出書
  • 死亡届受理証明書
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 印鑑

提出方法

  • 直接税務署へ持参
  • 郵送
  • オンライン申請

その他

  • 廃業届は、個人事業主が死亡した日をもって効力が発生します。
  • 廃業届を提出すると、青色申告特別控除を受けることができなくなります。
  • 廃業届の提出前に、青色申告の承認申請をしている場合は、取り下げる必要があります。
  • 廃業届の提出後に、確定申告が必要になる場合があります。

事業廃止届

消費税法上の課税事業者である場合、事業を廃止した際には、事業廃止届を提出する必要があります。

個人事業主が死亡した場合、事業を継続しない場合は、相続人が速やかに「事業廃止届出書」を提出する必要があります。
これは、消費税法第19条5項に基づく義務です。

提出先

事業廃止届は、普段消費税を納めている税務署に対して提出します。

提出期限

事業廃止届の提出期限は、特に定められていません
ただし、速やかに提出することが望ましいとされています。

提出方法

事業廃止届は、以下のいずれかの方法で提出することができます。

  • e-Tax:国税庁のホームページからダウンロードできる専用ソフトを利用して、電子的に提出する方法。
  • 書面:所定の様式に記入して、税務署に持参または郵送する方法。

必要書類

事業廃止届の提出には、以下の書類が必要です。

  • 事業廃止届出書:所定の様式に記入したもの。
  • 登記簿謄本:法人の場合。
  • 印鑑:法人の場合。

その他

事業廃止届を提出すると、以下の手続きが必要になる場合があります。

  • 青色申告の取りやめ届:青色申告で確定申告を行っていた場合。
  • 消費税の還付:過剰に納付していた消費税がある場合。

給与支払い事務所等の開設・移転・廃止の届け出

従業員への給与支払いを廃止する場合、給与支払事務所等の廃止届出を提出する必要があります。
これは、所得税法に基づく義務であり、廃止日から1ヶ月以内に行う必要があります。

提出方法は、以下の2通りがあります。

  • 直接税務署に提出する
    提出先は、廃止する事務所等の所在地を管轄する税務署です。
    平日の日中に持参する必要があります。
  • 郵送で提出する
    提出先は、直接提出する場合と同じです。
    郵送する場合は、簡易書留で送ることをおすすめします。

必要書類は以下の通りです。

  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
    国税庁のホームページからダウンロードできます。
    必要事項を記入し、代表者印を押印してください。
    廃止する事務所等の所在地を管轄する税務署の所在地コードを記入する必要があります。
  • 登記簿謄本
    法人設立登記をしている場合は必要です。
    発行後3ヶ月以内のものが必要です。
  • その他
    廃止する事務所等の所在地を証明する書類
    給与支払事務所等の廃止に関する会議録

所得税関係の書類提出

亡くなった被相続人が生前に所得税の申告義務があった場合、相続人が期限内に準確定申告を行う必要があります
準確定申告とは、相続人が代わりに、亡くなった方の生前の所得税について税務手続きをすることを指します

準確定申告の提出先は、亡くなった被相続人の住所地を管轄する税務署です。

提出期限に関しては、被相続人の死亡日を起点として、相続人が死亡を知った日から4ヶ月以内です。
期限内に準確定申告を行わなかった場合、延滞税や加算税の対象となる可能性があります。

また、被相続人の生前の所得状況により、所得税の申告義務が発生していなかった場合、相続人は準確定申告を行う必要はありません。
なお、相続税の申告を行う際にも、被相続人の所得税の申告書などの書類が必要となります。

準確定申告

準確定申告とは、相続人が代わりに、亡くなった方の生前の所得税について税務手続きをすることを指します。
準確定申告を行うには、被相続人の死亡届を提出する必要があります。

また、相続人が被相続人の事業を継続する場合は、事業の承継手続きも必要です。

準確定申告の期限は、被相続人の死亡した年の翌年3月15日です。

期限までに申告しないと、延滞税や加算税などのペナルティが科せられる可能性があります。
準確定申告を行う際には、被相続人の事業の収入や経費、所得税額などを計算する必要があります。

また、相続人が被相続人の事業を継続する場合は、事業の承継手続きに関する書類も必要です。

個人事業主が死亡した場合の事業引き継ぎ

個人事業主が死亡した場合、相続人は事業を引き継ぐか廃業するかの選択肢があります。
事業を引き継ぐ場合は、新たに開業届を提出する必要があります。

必要書類の提出

個人事業主が死亡した場合、事業を誰かが引き継ぐ場合、以下の届出が必要となります。

届出が必要な書類

  • 個人事業開業届出書
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
  • 所得税の青色申告承認申請書

詳細

  • 個人事業の開業届出書
    後継者が事業を引き継ぐ場合、廃業届ではなく開業届を提出する必要があります。
    提出先は、前事業主の住所地を管轄する税務署です。提出期限は、事業開始日から1か月以内です。
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
    前の事業主が従業員を雇っていた場合、後継者が事業を引き継ぐ場合は事業廃止届、事業を継続する場合は事業移転届を提出する必要があります。提出先は、前事業主の住所地を管轄する税務署です。
    提出期限は、事業廃止または移転の日から10日以内です。
  • 所得税の青色申告承認申請書
    前事業主が青色申告をしていた場合、後継者が事業を引き継ぐ場合は青色申告承認申請書を提出する必要があります。提出先は、前事業主の住所地を管轄する税務署です。
    提出期限は、事業開始日から3か月以内です。

個人事業の開業届出書

個人事業主が死亡した場合、事業を引き継ぐためには、相続人が「個人事業の開業届出書」を提出する必要があります。
この届出書は、事業を継続して行う意思があることを税務署に示すものです。

届出書には、事業の名称や所在地、事業内容、相続人の氏名や住所などを記載します。

また、事業を引き継ぐ際には、亡くなった個人事業主の「廃業届」も提出する必要があります。
個人事業の開業届出書は、税務署の窓口や郵送で提出することができます。

提出期限は、事業を開始した日から1ヶ月以内です。
なお、個人事業の開業届出書は、事業を開始する際に提出するものですが、事業を引き継ぐ際にも提出する必要があります。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

個人事業主が亡くなった場合、その事業所等を廃止する際には、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の提出が必要となります。
相続人が事務所等を開設・移転した場合、相続人が亡くなった個人事業主の事務所等を引き継ぎ、事業を継続する場合、事務所等の開設・移転があった事実を1か月以内に税務署へ届け出る必要があります。

所得税の青色申告承認申請書

亡くなった個人事業主の事業を相続人が引き継ぎ、過去に個人事業主として事業を営んでいなかった場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
記載事項は通常の申請書と同じですが、提出期限が異なります。

提出期限は、被相続人の死亡日によって以下のようになります。

死亡日 提出期限
1月1日から8月31日 死亡日から4カ月以内
9月1日から10月31日 12月31日
11月1日から12月31日 翌年の2月15日

屋号の引き継ぎ方法

個人事業主の事業承継では、屋号の引き継ぎが重要な問題となります。
新しい屋号を使用することも可能ですが、特に飲食やサービス業では顧客離れの可能性を考慮し、引き継ぐケースが多いです。

手続きについては、特別な届出は不要です。
相続人が開業届を提出する際に、亡くなった個人事業主が使用していた屋号を記載すれば、その屋号を引き継ぐことが可能です。

個人事業主が死亡した場合の相続税軽減方法

個人事業主が死亡した場合、相続税は事業承継の負担となります。

相続税を軽減するためには、生前に対策を講じることが重要です。
相続税は、被相続人の財産を相続人が取得する際に課される税金です。

個人事業主が死亡した場合、事業用資産や不動産などの相続財産が相続税の課税対象となります。
相続税の負担を軽減するためには、以下の対策が考えられます。

  • 生前贈与を行う
  • 相続税の基礎控除額を増やす
  • 相続税の減額措置を利用する

生前贈与は、被相続人が生前に財産を相続人に贈与する方法です。

相続税の課税対象となる財産を減らすことで、相続税の負担を軽減することができます。
相続税の基礎控除額は、被相続人の配偶者や直系尊属がいる場合、3,000万円から6,000万円に増額されます。

相続税の基礎控除額を増やすことで、相続税の負担を軽減することができます。

相続税の減額措置には、配偶者居住権や小規模宅地等の特例などがあります。
これらの措置を利用することで、相続税の負担を軽減することができます。

個人事業主が死亡した場合、相続税は事業承継の負担となります。
相続税を軽減するためには、生前に対策を講じることが重要です。

個人事業主が死亡した場合の相続放棄の方法

個人事業主が死亡した場合、相続放棄をすることで、相続財産のプラスマイナスを問わず、一切の相続権を放棄することができます。

相続放棄は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。申述書には、相続放棄の意思表示と、相続財産の概要を記載する必要があります。

相続放棄をすると、相続財産の一切の権利を失うことになります。

そのため、相続財産にプラスの財産がある場合でも、相続放棄をすると、その財産も失うことになります。

相続放棄をするには、以下の手順が必要です。

  1. 必要書類を準備する
  • 相続放棄申述書
  • 死亡届受理証明書
  • 戸籍謄本
  • 被相続人の住民票
  • 相続人の戸籍謄本
  • その他、必要に応じて
  1. 家庭裁判所に申述する
    必要書類を揃えたら、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。
  1. 審判を受ける
    家庭裁判所は、相続放棄申述書の内容を審査し、審判を行います。
  1. 相続放棄が確定する
    審判で相続放棄が認められれば、相続放棄が確定します。

相続放棄の申述期間は、被相続人の死亡を知った時から3ヶ月以内です。
ただし、調査に時間がかかって3ヶ月を超えてしまった場合は、裁判所に申し出ることで期間を延長できます。

個人事業主が死亡した場合の相続手続についてのまとめ

ここまで個人事業主が死亡した場合の相続手続きについてお伝えしてきました。
個人事業主の相続手続きの要点をまとめると以下の通りです。

  • 個人事業主が亡くなった場合、相続人数の確認と相続する債務についての確認が必要となる。
  •  個人事業主が死亡した場合、相続人は事業を引き継ぐか廃業するかの選択肢があり、それに付随した決められた届出の提出を提出する必要性がある。
  • 個人事業主が死亡した場合、相続放棄をすることで、相続財産のプラスマイナスを問わず、一切の相続権を放棄することができる。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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