夫が亡くなった場合、妻が夫の財産をすべて相続するには、いくつかの法的手続きや条件を満たす必要があります。
本記事では夫の財産を妻がすべて相続することについて以下の点を中心にご紹介します。
- 夫の財産をすべて妻が相続するには
- 妻が相続するときの相続税について
- 妻に家を相続させるために必要なこと
夫の財産を妻がすべて相続することについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
相続ナビに相続手続きをお任せください。
スマホ・PCで登録完了
役所などに行く必要なし
夫の財産をすべて妻が相続するには

夫が亡くなった際にすべての財産を妻が相続するには、いくつかの方法があります。
通常、相続人は妻と子どもとなり、法定相続分に基づいて財産を分けるのが一般的です。
しかし、夫が「生活を支えるために妻にすべての財産を残したい」と考える場合、いくつかの方法を活用することで、妻が単独で相続することも可能です。
主に次の2つの方法が考えられます。
遺言書で妻にすべての財産を相続させる
まず、遺言書を作成することで、夫の財産をすべて妻が相続するよう指定することができます。
遺言書は、法的に財産の分け方を自由に決めることができるため、次のように記載すれば、妻がすべての財産を受け取ることができます。
- 例文:「遺言者が有するすべての財産を、妻〇〇に相続させる」
このように明記することで、妻が他の相続人に配慮することなく財産を受け取ることができます。
しかし、注意すべき点があります。それは遺留分です。
遺留分とは、相続人に保証された最低限の取り分のことを指します。
たとえば、相続人が妻と子ども1人の場合、子どもには相続財産の4分の1を請求する権利があります。
もし、遺留分を無視して妻にすべて相続させる遺言を作成した場合、子どもが遺留分を請求すると、妻は相続財産の一部を金銭で支払う必要が出てきます。
こうしたトラブルを防ぐために、遺言書には付言事項を加えることが有効です。
付言事項とは、遺族に向けたメッセージのことで、たとえば次のように記載できます。
- 「妻にすべての財産を相続させるのは、妻の生活を守るためであり、決してあなたへの愛情が薄れたわけではありません」
- 「家族がこれからも仲良く暮らしていくことを望んでいます」
付言事項には法的な効力はありませんが、遺族の気持ちを和らげ、争いを防ぐ効果が期待できます。
遺産分割協議で妻にすべて相続させる
もう一つの方法として、遺産分割協議があります。
遺言書がない場合、相続人同士で遺産の分け方を話し合う必要があります。
この協議で、妻が全財産を相続することに全員が合意すれば、妻がすべての財産を受け取ることが可能です。
遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要ですが、協議が円満に進めば、遺言書がなくても妻が単独で財産を相続できます。
相続人全員で遺産分割協議をする

被相続人の財産を妻がすべて相続する場合、一般的に活用されるのが遺産分割協議です。
この協議は、相続人全員が集まり、遺産の分け方について合意を得る手続きです。
例えば、妻と子ども3人が相続人の場合、全員が同意すれば、妻がすべての財産を相続するという形にすることが可能です。
この場合、相続放棄をしなくても、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名と実印での押印があれば、協議内容は有効となります。
相続放棄が必要になるケース
相続放棄は、被相続人が多額の借金を抱えていた場合など、マイナスの財産を相続しないための手続きです。
通常、遺産分割協議で妻が全財産を相続する場合、相続放棄は不要です。
しかし、被相続人に借金などの負債がある場合、遺産分割協議を行っただけでは債務の相続を回避することはできません。
そのため、負債を引き継ぎたくない場合は、相続放棄の手続きが必要です。
孫が相続人になる場合
相続放棄をした場合でも、その子ども(孫)に相続権が移ることはありません。
民法では、孫が相続人になるケースとして、以下の条件が定められています。
- 子が被相続人より先に死亡している場合
- 子が相続欠格に該当している場合
- 子が相続から排除された場合
これらの条件に当てはまらない限り、子どもが相続放棄をしても孫には相続権が発生しないため、孫が代襲(だいしゅう)相続することはありません。
妻が相続するときの相続税は?

相続税は、亡くなった人(被相続人)の財産を受け取った人に課される税金です。
ただし、すべてのケースで相続税が発生するわけではなく、遺産総額が基礎控除額を超えた場合にのみ課税されます。
相続税の計算をする際、まずは基礎控除額を計算し、その額を超えた部分に対して相続税がかかります。
基礎控除額の計算式は次のとおりです。
- 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例えば、法定相続人が妻と子ども1人の場合、基礎控除額は4,200万円になります。
この基礎控除額を超えない範囲であれば、相続税は発生しません。
夫の財産を妻がすべて相続することについてよくある質問

夫の財産を妻がすべて相続することについてよくある質問は以下のとおりです。
相続を妻だけにするデメリットは?
配偶者が全財産を相続する形にすると、他の相続人との間でトラブルが生じにくくなり、さらに配偶者の税額軽減を活用することで相続税の負担を抑えることができます。このような方法には一定のメリットがありますが、一方で注意すべき点もあります。
例えば、他の相続人が遺留分を請求してくる可能性があります。また、一次相続で配偶者に多くの財産を渡すと、二次相続時に子どもたちの相続税負担が大きくなるリスクもあります。配偶者の生活を守るために有効な方法ではありますが、長期的な視点で考えることが大切です。
夫が死亡したら妻がすべき手続きは?
夫が亡くなった際には、期限内に行うべき各種手続きがいくつかあります。
これらの手続きを忘れずに進めることが重要です。
以下は、49日以内に完了させるべき主な手続きとその目安となる期限です。
社会保険の資格喪失届の提出(5日以内)
勤務先の健康保険に加入していた場合は、資格喪失の手続きを行いましょう。
これは5日以内が提出期限となっています。
死亡届と火葬許可申請の提出(7日以内)
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に役所へ届け出る必要があります。
また、火葬を行うためには火葬許可証の申請も同時に行います。
年金受給の停止手続き(10日以内または14日以内)
亡くなった方が年金を受給していた場合は、年金の停止手続きを行う必要があります。
これは受給していた年金の種類によって期限が異なり、10日以内または14日以内に届け出を行います。
国民健康保険の資格喪失手続き(14日以内)
国民健康保険に加入していた場合は、資格喪失の手続きを14日以内に済ませましょう。
これにより健康保険証の返却も行います。
介護保険の資格喪失手続き(14日以内)
亡くなった方が介護保険を利用していた場合は、14日以内に資格喪失の届け出を行います。
世帯主の変更届(14日以内)
世帯主が亡くなった場合は、世帯主の変更手続きを14日以内に役所に届け出る必要があります。
新たな世帯主を指定し、住民票の情報を更新します。
これらの手続きは、期限が決まっているものが多いため、速やかに進めることが大切です。
役所での手続きは書類の準備が必要になることもあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
夫の財産を妻がすべて相続することについてのまとめ

ここまで夫の財産を妻がすべて相続することについてお伝えしてきました。
夫の財産を妻がすべて相続することについて要点をまとめると以下の通りです。
- 夫が亡くなった際、通常は相続人は妻と子どもとなり、法定相続分に基づいて財産を分けるのが一般的
- 遺言書を作成することで、夫の財産をすべて妻が相続するよう指定することが可能遺言書は、法的に財産の分け方を自由に決めることができる
- 相続税は、亡くなった人(被相続人)の財産を受け取った人に課される税金のこと
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。