遺言書は、人生の最終章において個人が残すことのできる最も強力な法的文書の一つです。
これは、私たちがこの世を去った後に財産や大切な思い出がどのように扱われるかを定めるものであり、愛する方々への最後のメッセージとも言えます。
相続においては、遺言書がない場合とある場合では、その手続きや結果が大きく異なるため、遺言書の存在は非常に重要です。
本記事では、遺言書がある場合の相続手続きについて以下の点を中心にご紹介します。
- 遺言書とは
- 遺言書とは異なる遺産分割ができる場合
- 遺言を遺しておいたほうが望ましい方
遺言書がある場合の相続手続きについて理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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遺言書とは

遺言書とは、個人が自己の死後の財産分配に関する意志を明確に記した法的文書です。
この文書は、遺言者の最終意思を反映し、相続人や法的機関に対してその意向を伝える重要な役割を果たします。
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言といった種類があり、それぞれに特有の作成方法と法的要件が存在します。
遺言書の基本
遺言書は、遺言者が自らの意志で作成するものであり、その内容は遺言者の死後に効力を発揮します。
遺言書には、遺言者の財産目録、遺産の分配方法、指定された相続人、特定の財産に対する指示などが含まれることが一般的です。
遺言書は、遺言者の意向が明確に記されているため、相続に関するトラブルを防ぐ効果があります。
遺言とは
遺言とは、個人が生前に自分の財産を誰に、どのように分けるかを決定し、その意思を文書にしたものです。
遺言には、被相続人の最終的な意思が記されており、法的にその意向が尊重されます。
遺言を通じて、相続人以外の人々にも財産を遺すことが可能であり、また、特定の財産を特定の人に渡すよう指定することもできます。
これにより、相続における争いを未然に防ぐことが期待されます。
遺言書の種類

遺言書には、その作成方法や法的効力に応じて、主に三つの種類があります。
これらは、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言と呼ばれ、それぞれに独自の特徴と長所、短所が存在します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が全文を自ら手書きし、日付と氏名を記入した上で署名と押印を行う遺言書です。
この方式は、遺言者が自分の意志を直接紙に記すことで、他者の介入なく遺言を残すことができる点で、多くの人に選ばれています。
自筆証書遺言の長所
- 費用がかからない: 自筆証書遺言は、専門家の介入を必要とせず、遺言者自身が作成するため、作成に関する費用が発生しません。
- プライバシーが保たれる: 遺言の内容を他者に知られることなく、遺言者のプライバシーを守りながら遺言を作成できます。
- 手軽に作成可能: 急な状況でも、手元にある筆記用具を使って、すぐに遺言を作成することができます。
自筆証書遺言の短所
- 無効となるリスク: 形式に誤りがあると無効となる可能性があり、その結果、遺言者の意思が反映されないことがあります。
- 紛失や破損のリスク: 保管状況によっては、遺言書が紛失したり、破損したりするリスクがあります。
- 争いの原因となる可能性: 遺言の内容が明確でない場合、相続人間での争いを引き起こすことがあります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人と証人の立会いのもとに作成される遺言書です。
法的な効力が高く、遺言の内容が法的に正確であることが保証されるため、信頼性が高いとされています。
公正証書遺言の長所
- 無効になりにくい: 公証人が関与するため、形式的な誤りが少なく、遺言が無効になるリスクが低減されます。
- 証拠力が高い: 公証人が作成に関わるため、遺言書の証拠力が高く、相続手続きにおいて有利です。
- 紛失や偽造のリスクが低い: 公証役場で原本が保管されるため、遺言書の紛失や偽造のリスクが低いです。
公正証書遺言の短所
- 費用がかかる: 公証人による作成には費用が発生し、自筆証書遺言に比べて経済的負担が大きくなります。
- 手続きに時間がかかる: 公証人の予約や証人の手配など、手続きに時間がかかることがあります。
- プライバシーの問題: 公証人や証人が遺言の内容を知ることになるため、プライバシーが完全に保たれるわけではありません。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が内容を秘密にしたい場合に選ばれる方法です。
遺言者が遺言書を封印し、その封印された遺言書を公証人と証人の前で提出し、一定の手続きを経て完成させます。
秘密証書遺言の長所
- 内容の秘密保持: 遺言書が封印された状態で提出されるため、公証人や証人も遺言の内容を知ることがありません。
- 法的効力が高い: 公正証書遺言と同様に、法的な効力が高く、遺言の信頼性が保証されます。
秘密証書遺言の短所
- 手続きが複雑: 封印や提出の手続きが複雑であり、正確な手順を踏まなければなりません。
- 費用がかかる: 公正証書遺言と同様に、公証人による手続きには費用が発生します。
- 封印の開封リスク: 封印された遺言書が開封されるリスクがあり、その場合、遺言の内容が明らかになる可能性があります。
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遺言書でできること

遺言書は、個人が生前に自分の財産に関する意思を法的に有効な形で残すための重要なツールです。
遺言書を通じて、遺言者は自身の死後、財産の扱いや相続に関する具体的な指示を残せます。
特定の相続人に多くの遺産を取得させる
遺言書では、法定相続分とは異なる割合で特定の相続人に遺産を分配することが可能です。
これにより、遺言者は自分の意志に基づき、相続人一人ひとりに対する遺産の割り当てを自由に決定できます。
内縁の妻や孫など相続人でない人に遺産を遺贈する
遺言書を用いて、法定相続人ではない者、例えば内縁の配偶者や孫、または友人などに財産を遺贈することができます。
これにより、遺言者は自分の意志で財産を分配し、感謝や愛情を表現することが可能になります。
遺産を寄付する
遺言書により、遺産の一部を社会福祉団体や公的機関、宗教団体などに寄付することができます。
これにより、遺言者は社会貢献や慈善活動を死後も続けることができます。
子どもを認知する
遺言書を通じて、婚姻外で生まれた子どもを法的に認知し、法律上の親子関係を確立することが可能です。
これにより、子どもは相続人としての地位を得ることができます。
相続人の廃除(相続権消失)
遺言者は、特定の相続人が不適切な行動をとった場合に、その相続人の相続権を剥奪することができます。
これにより、遺言者の意志に反する者が遺産を受け取ることを防ぐことができます。
遺産分割方法の指定、分割の禁止
遺言書には、遺産の具体的な分割方法を指定することができ、また、一定期間遺産分割を禁止することも可能です。
これにより、遺言者は財産の管理や利用に関する指示を残すことができます。
後見人の指定
未成年の子どもや成年被後見人がいる場合、遺言書によって信頼できる後見人を指定することができます。
これにより、遺言者は自分の死後も子どもや被後見人の保護を確保することができます。
遺言執行者の指定
遺言書には、遺言の内容を実行するための遺言執行者を指定することができます。
これにより、遺言者は自分の意志が正確に実行されることを保証することができます。
遺言書がある場合の相続手続き

遺言書は、故人の意志を反映した法的文書であり、相続手続きにおいて重要な役割を果たします。
遺言書が存在する場合、相続手続きは故人の指示に従って進められます。
まずは遺言書の存在を把握する
遺言書の存在を知ることは、相続手続きの第一歩です。
故人が遺言書を作成していた場合、それは通常、故人の住居、金庫、または法務局で保管されていることが多いです。
相続人や関係者は、故人の遺品の中や、可能性のある場所を慎重に探し、遺言書を見つけたら、その内容を確認し、他の相続人に通知する必要があります。
遺言書の検認が必要な場合がある
遺言書が自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、その内容と有効性を確認するために家庭裁判所での検認手続きが必要になります。
検認は、遺言書が故人によって作成されたものであること、そして偽造や変造がないことを確認する公的な手続きです。
この手続きを経ることで、遺言書の内容が正式に相続人に認められ、遺言の実行に移すことができます。
遺言執行者が就いている場合は、手続きを任せる
故人が遺言書の中で遺言執行者を指定している場合、相続手続きはこの遺言執行者によって行われます。
遺言執行者は、故人の意志に従って遺産の分配や管理を行う責任を負います。
相続人は、遺言執行者が遺言に基づいた手続きを適切に行うことを信頼し、必要に応じて協力することが求められます。
遺言を遺しておいたほうが望ましい方

遺言書は、個人の最後の意志を明確に伝えるための重要な法的文書です。
特定の状況にある方々は、遺言を残すことで、自身の意思を確実に実現し、相続に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
以下では、遺言を残すことが特に推奨される二つのケースについて説明します。
現在、何かしらの事業を運営されている方
事業を運営している方は、遺言を通じて事業の承継計画を明確にすることができます。
事業の継続性を保ち、後継者にスムーズに事業を引き継がせるためには、遺言書による指示が不可欠です。
遺言書には、後継者の指名、事業資産の分配、事業運営に関する具体的な指示などを記載することができます。
これにより、故人のビジョンと事業の未来が保護され、相続人間の紛争を防ぐことが可能になります。
特定の相続人にのみ財産を相続させたい方
法定相続分に従わず、特定の相続人にのみ財産を相続させたい場合、遺言書がその意思を実現するための鍵となります。
例えば、特定の子どもが家業を継いでいる場合や、特定の人に感謝の意を示したい場合など、遺言書によって財産の分配を自由に設定することができます。
これにより、遺言者の意思に沿った公正な財産分配が保証され、相続時の不公平感や争いを避けることができます。
遺言書とは異なる遺産分割ができる場合

遺言書には故人の最終意思が記されており、通常はその指示に従って遺産分割が行われます。
しかし、特定の条件下では、遺言書の内容とは異なる方法で遺産を分割することが可能です。
このような場合は、相続人間の合意や遺言書の有効性に関わる問題がしばしば発生します。以下に、遺言書と異なる遺産分割が行える主なケースを解説します。
受遺者・相続人全員が同意した場合
遺言書に記載された内容とは異なる遺産分割を行う最も一般的なケースは、受遺者や相続人全員が新たな分割案に同意した場合です。
この合意は、遺言書によって定められた分配を変更する強力な根拠となります。
相続人全員が一致して遺言書の内容を変更することに同意すれば、その合意に基づいて遺産分割を行うことができます。
ただし、このプロセスは全員の明確な合意が必要であり、合意形成の過程で適切な法的アドバイスを受けることが推奨されます。
遺言書が無効である場合
遺言書が法的な要件を満たしていない、または作成過程に問題があった場合、遺言書は無効となる可能性があります。
例えば、遺言書の作成に際して必要な手続きが適切に行われていなかったり、遺言者の意思決定能力に疑問がある場合などです。
遺言書が無効であると判断された場合、相続人は遺言書に拘束されず、法定相続分に従って、または相続人間の協議によって遺産分割を行うことになります。
遺言書は、個人が生前に残す最も重要な法的文書の一つです。 これにより、財産の分配や最終的な意志が死後に実行されます。 しかし、遺言書がすべての法的要件を満たしていない場合、無効とされる可能性があります。 無効な遺言書は、遺言者の意[…]
遺言書の内容が不公平な場合

遺言書による財産分配が法定相続人の保護された最低限の財産権、すなわち「遺留分」を侵害している場合、相続人は「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
この請求は、相続人が公平な相続を受けるための法的手段です。
以下では、遺留分侵害額請求の概要とその手続きについて説明します。
遺留分侵害額請求とは
遺留分侵害額請求とは、遺言によって遺留分が侵害されたとき、侵害された相続人が遺留分に相当する金銭を請求する権利です。
遺留分は、法律で定められた相続人の最低限保証されるべき財産の割合であり、これを保護するための制度です。
遺言で全財産が第三者に遺贈された場合でも、法定相続人は遺留分の保護を受けることができます。
遺留分侵害額請求を行う方法
遺留分侵害額請求を行うには、まず遺留分が侵害されていることを確認し、侵害額を算出する必要があります。
その後、侵害額に相当する金銭の支払いを受遺者や受贈者に対して請求します。
この請求は、遺留分権利者が相続開始を知った日から1年以内、または相続開始から10年以内に行う必要があります。
遺留分侵害額請求権の消滅時効に注意
遺留分侵害額請求権には消滅時効があります。
相続開始と遺留分侵害を知った日から1年間、または相続開始から10年間が経過すると、この請求権は消滅します。
したがって、遺留分の侵害を感じたら、速やかに専門家に相談し、必要な手続きを進めることが重要です。
遺言書の内容に納得できない場合

遺言書は故人の意思を反映する重要な文書ですが、その内容に納得がいかない場合もあります。
特に、遺言書による財産分配が不公平に感じられる、または法的な疑問がある場合、専門家である弁護士に相談することが賢明です。
以下では、遺言書の内容に疑問を持つ場合に弁護士に相談すべき理由とそのプロセスについて説明します。
遺言書の内容に疑問を持つ理由
遺言書の内容に納得がいかない理由は多岐にわたります。
例えば、遺言書が遺留分を侵害している可能性、遺言者の意思能力に疑問がある場合、遺言書の形式が法的要件を満たしていない場合などがあります。
これらの状況は、遺言書の内容を無効にする可能性があるため、専門家の意見を求めることが重要です。
弁護士に相談するメリット
弁護士に相談する最大のメリットは、法的な専門知識を活用して適切なアドバイスを受けられることです。
弁護士は遺言書の法的評価を行い、無効な遺言書の主張、遺留分侵害額請求、または遺産分割協議の進め方について指導を提供します。
さらに、弁護士は交渉や訴訟のプロセスをサポートし、クライアントの権利を守るために必要な手続きを代行することができます。
相談から解決までのプロセス
弁護士に相談する際は、まず初回の相談で遺言書の内容と自身の状況を詳細に説明します。
その後、弁護士は遺言書の有効性を評価し、遺留分侵害額請求や遺産分割協議などの選択肢を提示します。
必要に応じて、弁護士は内容証明郵便の送付、調停の申し立て、訴訟の提起などの具体的な行動を取ります。
このプロセスを通じて、クライアントは遺言書の内容に対する納得のいく解決を目指すことができます。
相続は、法的な複雑さと個人的な感情が交錯するデリケートな問題です。 このような状況では、適切な法的サポートが不可欠となります。 特に弁護士は、相続問題において中心的な役割を果たし、法的なアドバイス、紛争の解決、遺産分割協議のサポート[…]
遺言書がある場合の相続手続きについてのまとめ

ここまで、遺言書がある場合の相続手続きについてお伝えしてきました。
遺言書がある場合の相続手続きの要点をまとめると以下の通りです。
- 遺言書とは、個人が自己の死後の財産分配に関する意志を明確に記した法的文書
- 遺言書とは異なる遺産分割ができる場合は、受遺者・相続人全員が同意した場合、遺言書が無効である場合など
- 遺言を遺しておいたほうが望ましい方は、現在、何かしらの事業を運営されている方、特定の相続人にのみ財産を相続させたい方など
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


