大切な方が亡くなられた場合、残された財産をどのように分配するのかは、多くの遺族にとって悩ましい問題です。
円満な遺産分割を実現するためには、法定相続分と呼ばれる、法律で定められた相続割合を理解することが重要です。
本記事では、遺産相続における分配の計算方法について、相続順位別の相続割合と具体的な計算方法をわかりやすく解説します。
- 相続分とは
- 注意を要する相続割合の計算方法
- 法定相続割合が適用されないケース
遺産相続における分配の計算方法についてご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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相続分とは?

相続分とは、相続人がそれぞれ遺産のどれくらいを受け取ることができるかを示す割合のことです。
以下の3種類があります。
- 指定相続分:被相続人(亡くなった方)が遺言で指定した割合(民法902条)。
- 法定相続分:遺言による指定がない場合に法律で定められた割合(民法900条)。
- 具体的相続分:遺産の分割において不公平を調整するための割合。寄与分や特別受益がある場合に適用される(民法903条、904条の2)。
相続分は遺産分割の話し合いの基準となります。
相続人間での話し合いにより法定相続分と異なる割合で分けることも可能です。
合意に至らない場合は家庭裁判所が相続分に基づいて遺産を分割します。
なお、相続分は相続人が遺産をどれだけ受け取るかの割合を示すもので、相続人の順位(親族の中で誰が相続人になるか)とは異なる概念です。
相続人によって異なる相続割合

大切な家族を亡くした後の遺産相続は、悲しみの中、様々な手続きや話し合いが必要となる大変なものです。
特に、相続人が複数人いる場合は、誰がどの財産を、どのような割合で相続するのかについて、揉めてしまうことも少なくありません。
配偶者のみ、子どものみ、親のみ、兄弟姉妹のみのパターン
相続人が配偶者のみ、子どものみ、親のみ、または兄弟姉妹のみの場合、その相続人が全てを相続します。
同じ順位の相続人が複数いる場合は、人数に応じて公平に分配されます。
配偶者と子どものパターン
配偶者と子どもが相続人の場合、配偶者が財産の半分を、子どもが残りの半分を相続します。
子どもが複数いる場合は、その半分を人数で均等に分けます。
配偶者と親のパターン
配偶者と親が相続人となる場合、配偶者が3分の2、親が3分の1を相続します。
親が二人とも存命であれば、それぞれの親が3分の1の半分ずつ、すなわち6分の1を相続します。
配偶者と兄弟姉妹のパターン
配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合、配偶者が財産の4分の3を、兄弟姉妹が4分の1を相続します。
兄弟姉妹が複数いる場合、その4分の1は人数に応じて均等に分けられます。
相続において最も重要なポイントの一つが「割合」です。 相続人それぞれがどの程度の財産を受け継ぐのか、その割合はどのように決まるのか、そしてその割合に基づいて相続税がどのように計算されるのか、これらのポイントを理解することが非常に重要で[…]
具体的相続分の計算方法

相続分とは、被相続人が亡くなった後に、相続人が法定相続分に基づいて分配される財産の割合です。
具体的な相続分の計算方法は、遺産の種類や相続人の数によって異なりますが、基本的な流れは以下の通りです。
具体的相続分とは?
法定相続分に基づく分割が基本ですが、それだけでは公平に解決できない場合があります。
具体的相続分とは、法定相続分を基本にしつつ、個別の調整要素を修正した後の相続分を指します。
調整が行われるのは、以下のような場合です。
- 特定の相続人が生前に故人から遺産の前払いと見なせる受益を受けていた場合(特別受益)
- 特定の相続人が遺産の増加に特別な寄与をした場合(寄与分)
このような場合、単純に法定相続分の割合を適用するのではなく、以下のように調整します。
- 生前に過剰な受益を受けた相続人は、遺産から受け取る額を減らす
- 遺産の増加に貢献した相続人は、受け取る額を増やす
調整後の相続割合が具体的相続分です。以下で具体的な調整方法を詳しく説明します。
なお、この制度は相続人に対してのみ適用されるため、相続人でない人への生前贈与や、相続人以外の人が行った介護などは、具体的相続分の計算には含まれません。
特別受益とは?
例として、太郎さんと花子さんの夫婦に子供が3人(一郎、次郎、三郎)いるとします。
子供たちはみな未婚です。
太郎さんが亡くなったときの法定相続分は以下のようになります。
花子さん1/2
一郎君1/6
次郎君1/6
三郎君1/6
このとき、太郎さんが生前に三郎君に3000万円を援助していたとします(私立大学と大学院の学費やマンション購入費用として)。
太郎さんの遺産が6000万円残っていた場合、法定相続分に基づくと以下のように分けられます。
花子さん3000万円
一郎君1000万円
次郎君1000万円
三郎君1000万円
しかし、三郎君はすでに3000万円を受け取っているため、このままでは不公平です。
そこで、特別受益を考慮し、具体的相続分を計算します。
具体的相続分とは、被相続人が相続開始時に有していた財産(6000万円)に三郎君の特別受益(3000万円)を加えた9000万円を相続財産とみなして計算します。
花子さん4500万円
一郎君1500万円
次郎君1500万円
三郎君1500万円
三郎君はすでに3000万円を受け取っているため、実際には1500万円をもらいすぎていることになります(1500万円-3000万円=-1500万円)。
そのため、遺産からは何も受け取れません。
最終的な分配は以下のようになります。
花子さん3600万円
一郎君1200万円
次郎君1200万円
三郎君0円
このように、特別受益がある場合の具体的相続分を計算します。
ただし、被相続人が特別受益を考慮しないという意思表示をしていた場合、遺産は単純に法定相続分に基づいて分けられます。
寄与分とは?
相続人の中に、被相続人の事業に対する労働提供や財産上の給付、療養監護などで特別な貢献をした者がいる場合、法定相続分にそのまま従って分配するのではなく、寄与分を考慮した分割が行われます。
寄与分とは、その相続人の特別な貢献に対する取り分を意味し、遺産の総額から寄与分を控除し、残りの遺産に法定相続分を適用して計算されます(民法904条の2)。
寄与分の計算方法については法律で具体的に定められていません。
家庭裁判所が寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して定めます(民法904条の2第2項)。
労務提供型
相続人の一人が被相続人の家業に従事し、その結果財産の維持や増加に貢献した場合、寄与分が認められることがあります。
例えば、農業を営む夫婦で、妻が無給で働き家業を支えた結果、遺産が増加した場合です。
事業に関する財産上の給付
仕事を一緒に行っていなくても、金銭的な支援で遺産の維持や増加に貢献した場合も寄与分が認められます。
例えば、被相続人の借金を代わりに返済した場合です。
療養監護型
被相続人の療養や監護に特別な貢献をした場合も寄与分が認められます。
例えば、家族が医療費や施設費用を負担し、被相続人の介護を無償で行った場合などです。
ただし、単に一緒に住んで家事をする程度では寄与分とは認められません。
寄与分の決定方法
相続人間で寄与分について協議することもできますが、多くの場合、紛争が生じるため家庭裁判所で決定されます。
寄与分の調停・審判と遺産分割の調停・審判は別の手続きとなり、寄与分を求める相続人が別途申し立てを行う必要があります。
遺産分割調停の段階で寄与分を考慮した話し合いを続け、不成立の場合に寄与分の審判を申し立てることも可能です。
争いが大きい場合には、弁護士と準備を進めることが重要です。
相続の寄与分という制度を利用することで、貢献度に応じて法定相続分よりも多くの財産を相続することが可能です。 しかし、寄与分が認められるためにはいくつかの要件を満たす必要があり、計算方法も複雑です。 そこで今回は、相続の寄与分について[…]
注意を要する相続割合の計算方法

被相続人が亡くなった後、残された財産を相続人たちがどのように分配するかを決める遺産分割は、円満な相続を実現するために非常に重要な手続きです。
遺産分割においては、法定相続分に基づいて相続割合を計算しますが、実はその計算方法は奥深く、注意すべき点もいくつか存在します。
代襲相続が起こった場合
代襲相続とは、相続人が被相続人より先に死亡した場合、その相続人の子どもが代わりに相続することです。
例えば、親が亡くなる前に子どもが先に死亡している場合、その子どもの子ども(孫)が代襲相続人となります。
代襲相続人は、本来の相続人の地位を引き継ぎ、その相続分も同じ割合を受け取ります。
代襲相続人が複数いる場合は、その相続分を均等に分割します。
例えば、親に2人の子どもがいて、そのうちの1人が先に死亡していた場合、親が亡くなると先に死亡した子どもに2人の子ども(孫)がいれば、孫それぞれが相続する割合は4分の1ずつになります。
養子、養親の場合
養子は法的に実子と同じ相続分を持ちます。
例えば、被相続人に実子が1人、養子が1人いる場合、それぞれの子どもの相続割合は等しく2分の1ずつとなります。
認知された子どもの場合
認知された子どもも、法律上の子どもと同じ相続権を持ちます。
具体的には、被相続人に実子が2人と認知された子どもがいる場合、それぞれの相続割合は均等に3分の1ずつとなります。
法定相続割合が適用されないケース

被相続人が亡くなった後、残された財産を相続人たちがどのように分配するかを決める遺産分割において、法定相続分に基づいて相続割合を計算するのが一般的です。
しかし、法定相続割合が適用されないケースも存在します。
円満な相続を実現するためには、法定相続割合が適用されないケースについて理解し、適切な対応を取ることが重要です。
遺言書で異なる相続割合が指定されている
被相続人が遺言書を残し、その中で相続割合や遺産分割方法が指定されていれば、遺言書の内容が優先されます。
法定相続割合とは異なる指定があった場合、その法定相続分は適用されません。
例えば、相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、遺言書に「配偶者に全部相続させる」と記されていれば、配偶者が全ての遺産を相続し、兄弟姉妹は相続できません。
しかし、遺言書があっても、相続人全員が合意すれば、遺言内容と異なる割合で相続することが可能です。
例えば、3人の子どもが相続人の場合、「長男にすべての遺産を相続させる」と遺言されていても、兄弟で話し合い、3分の1ずつ分けることに決めたなら、法定相続割合通りにそれぞれが3分の1ずつ相続することができます。
遺産分割協議で全員が合意した
相続人全員が遺産分割協議で合意した場合、その内容に基づいて遺産を相続します。
法定相続割合と異なる場合でも有効です。
例えば、3人の子どもが相続人の場合でも、遺産分割協議で「長男がすべての遺産を相続する」ことに合意した場合、長男が全ての遺産を相続します。
法定相続割合である3分の1ずつの分割は適用されません。
特別受益の持戻計算を行う
相続人が生前贈与や遺贈を受けた場合、その相続人の遺産取得割合を減らす計算を行うことができます。
これは、高額な贈与が行われたにもかかわらず法定相続割合を適用すると、他の相続人の取り分が減って不公平になるのを防ぐためです。
この計算方法を「特別受益の持戻計算」といいます。
特別受益の持戻計算が行われると、利益を得た相続人の取得割合が減り、法定相続割合とは異なる割合で遺産が分配されます。
特別受益者とは、相続手続きにおいて、被相続人から生前に特別な利益を受けた相続人のことを指します。 この概念は、相続財産の公平な分配を図る上で非常に重要です。 この記事では、特別受益者について以下の点を中心にご紹介します! […]
寄与分を考慮する
相続人の中に財産の維持や増加に特別に貢献した人がいる場合、その相続人の遺産取得割合を増やすことができます。
例えば、被相続人の老後に献身的に介護した相続人や、長年にわたって被相続人の事業や農業を無給で手伝い続けた相続人などです。
このように、財産形成や維持に特別に貢献した相続人に認められる特別な遺産取得分を「寄与分」といいます。
寄与分を考慮する場合、もともとの相続割合に加算されるため、法定相続分とは異なる結果が生じます。
相続税の負担割合は法定相続割合と一致しないケースがある

多くの場合、相続税の負担割合は法定相続割合と一致します。
しかし、必ずしも一致するわけではありません。
控除が適用される
相続税には様々な控除制度があります。
例えば、配偶者が相続する場合、法定相続分または1億6000万円までは相続税が免除されます。
そのため、配偶者と子どもが相続人になる場合、配偶者は相続税を支払わずに済むケースが多いです。
また、障害者控除や未成年者控除もあり、これらの条件に該当する相続人がいる場合には、法定相続割合とは異なる税負担となります。
2割加算
代襲相続人ではない孫や法定相続人以外の人が財産を相続する場合、相続税は2割増しになります。
これらの方々が遺産を受け取る際、元々の相続割合とは異なる税負担が生じます。
評価方法が異なる財産
遺産分割や相続税計算を行う際、遺産となる財産の「評価」を実施する必要があります。
遺産分割時と相続税計算時で評価方法が異なる財産があるため注意が必要です。
例えば、不動産の場合、遺産分割時には「時価」を基準としますが、相続税計算時には「相続税路線価・評価倍率」や「固定資産税評価額」を用います。
また、「小規模宅地の特例」という控除制度を適用すると、評価額が8割減になることもあります。
このように財産の評価方法が異なるため、遺産分割において法定相続割合で分割しても、相続税の負担額が異なる可能性があります。
遺産相続における分配の計算方法についてについてまとめ

遺産相続における分配の計算方法についてについてお伝えしてきました。
遺産相続における分配の計算方法についてまとめると以下の通りです。
- 相続分とは、相続人がそれぞれ遺産のどれくらいを受け取ることができるかを示す割合のことを指す
- 注意を要する相続割合の計算方法は、代襲相続が起こった場合や養子、養親の場合などが挙げられる
- 法定相続割合が適用されないケースは、遺言書で異なる相続割合が指定されている場合や遺産分割協議で全員が合意した場合が挙げられる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


