大切なお孫さんに将来の支援をしたいと考えたとき、生前贈与という方法が選択肢に挙がることがあります。
孫が教育費や結婚資金などを必要とする時期に、タイミングよく財産を渡せる点で、生前贈与は非常に有効な手段といえます。
さらに、相続税対策としても一定の節税効果が期待できます。
本記事では、孫への生前贈与について、以下の観点から詳しく解説します。
- 孫への生前贈与が相続対策として有利とされる理由
- 教育資金・結婚資金の非課税特例など活用できる制度
- 贈与税が発生するケースや注意点
安心して資産を引き継ぐために、参考にしていただける内容となっています。
ぜひ最後までご覧ください。
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孫への生前贈与

孫に財産を渡す手段として、生前贈与は有効な方法です。将来的な支援だけでなく、相続財産を減らすことで相続税の節税効果も期待できます。
また、進学や結婚など孫が資金を必要とするタイミングで支援できる点も魅力です。
贈与には年間110万円の非課税枠があり、これを超えると贈与税が発生します。
贈与税は相続税よりも税率が高くなることがあるため、事前の計画が重要です。
相続において、孫は通常は法定相続人ではありません。
ただし、遺言書で指定すれば相続させることは可能です。ただし、原則として孫が受け取る相続財産には2割加算の税率が適用されます。
なお、本来の相続人が死亡している場合に孫が代わって相続する代襲相続では、孫も法定相続人とみなされます。
孫への生前贈与がおすすめな理由

孫への生前贈与は、将来の生活や教育を支えるだけでなく、相続税対策としても効果的な方法です。
相続時の財産を減らせるため税負担を軽減でき、生きているうちに直接支援できるという大きなメリットがあります。
孫の教育・結婚などを援助できる
孫が成長するにつれ、教育や結婚など多額の資金が必要になります。
日本政策金融公庫によれば、教育費は幼稚園から大学まで全て公立で約822.5万円、全て私立では約2307.5万円にのぼります。
分割して支払うとはいえ、大きな負担であることに変わりはありません。
また、ゼクシィの調査では、結婚費用の平均は約415万円とされ、若い新郎新婦にとっては相当な出費となります。
こうした教育資金や結婚資金を援助することは、孫の将来を支えるだけでなく、その親である自分の子どもをも助けることにつながります。
生前贈与の持ち越しルール対象外
生前贈与には「持ち戻しルール」と呼ばれる仕組みがあります。
これは、被相続人が亡くなる前の一定期間内に行った贈与を相続財産に含め、相続税を計算する制度です。
以前は、被相続人の死亡前3年以内の贈与が相続財産に加算されていましたが、2023年の税制改正により、この対象期間が段階的に延び、最終的に7年以内まで拡大されることになりました。
なお、加算の対象となるのは、法定相続人や遺言によって財産を取得する人です。
一般的に孫は法定相続人ではないため、たとえ死亡前7年以内の贈与でも、この持ち戻しの対象外となり、相続税の課税を受けません。
これが、孫への生前贈与が節税に有効とされる理由の一つです。
ただし、親(贈与者の子)がすでに亡くなっていて孫が代襲相続人となる場合は注意が必要です。
この場合、孫は法定相続人となり、生前贈与が持ち戻しの対象になる可能性があります。
一代飛ばしで節税できる
孫への生前贈与が節税対策として関心を集めている理由の一つに、「一世代飛ばして資産を渡せる」点が挙げられます。
通常、資産はまず子に、次に孫へと引き継がれていき、その都度、相続税が発生します。
しかし、生前に子を介さず直接孫へ財産を贈与すれば、相続税の発生回数を1回分減らすことができ、長期的な税負担の軽減が期待できます。
さらに、この方法は世代を超えた資産承継を促進し、孫の教育資金や生活支援にも役立ちます。
ただし、孫への遺贈や養子縁組を通じた相続では、通常の相続税に加えて20%の加算税が課される場合があります。
制度の仕組みを十分理解した上で活用することが重要です。
孫への生前贈与で使える制度・特例

孫への生前贈与には、贈与税の負担を軽減できる制度や特例が用意されています。
教育資金や結婚資金の非課税制度、相続時精算課税などを上手に活用すれば、節税効果を高めつつ効率的な資産承継が可能です。
暦年贈与(暦年課税)
暦年とは、その年の1月1日〜12月31日までの1年間を指します。
暦年贈与は、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計が110万円を超えなければ、贈与税がかからず、申告の必要もないという仕組みです。
この基礎控除110万円は受贈者ごとの限度額であり、例えば祖父から110万円、祖母から110万円を受け取れば合計220万円となり、控除額を超えるため課税されます。
一方、贈与する側には人数制限がなく、同じ年に複数の孫へ贈与しても、各孫が受け取る額が110万円以下であれば非課税です。
暦年課税では、贈与された財産が特例贈与財産と一般贈与財産に分類されます。
18歳以上(2022年3月31日以前は20歳以上)の子どもや孫が父母・祖父母など直系尊属から受け取る贈与は特例贈与に該当し、一般贈与よりも低い税率が適用されることがあります。
また、相続税計算時には相続開始前の贈与が相続財産に加算される「持ち戻し」があり、従来は3年以内でしたが、2023年度改正で7年以内に延長されました。
ただし対象は法定相続人への贈与のみで、通常の孫への贈与は該当しません。
孫が養子や代襲相続人となる場合は、特別受益として相続財産に加算される可能性があります。
教育資金の一括贈与の特例
30歳未満の子や孫が教育資金をまとめて贈与された場合、最大1,500万円まで(うち学校等以外に支払われるものは500万円まで)が非課税となる制度があります。
これを教育資金一括贈与の特例と呼びます。利用には、金融機関への信託などの手続きが必要で、支出が教育資金であることを証明する領収書の提出も求められます。
適用期限は令和5年度(2023年度)税制改正により2026年3月31日までです。
対象費用には入学金や授業料、学用品、修学旅行費、スポーツや文化活動の費用、通学定期券代や留学渡航費などが含まれます。
ただし受贈者が23歳以上になると、非課税対象は学校関連費や教育訓練費用などに限られ、習い事は対象外となります。
また、この特例は30歳で終了し、未使用残額には贈与税が課税されます。
さらに令和5年度改正で、相続税の課税価格が5億円を超える場合は、残額に相続税も課されるようになりました。
結婚・子育て資金一括贈与の特例
結婚・子育て資金一括贈与の特例とは、18歳から49歳までの子や孫に対し、結婚や子育てに必要な資金を一括で贈与した場合に、最大1,000万円まで(うち結婚費用は300万円まで)が非課税となる制度です。
贈与者は受贈者の直系尊属(父母や祖父母)に限られるため、孫への生前贈与にも利用できます。
利用するには、信託銀行などで資金を信託するなどの手続きが必要です。
また、贈与を受ける孫の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用できません。適用期限は2027年3月31日までです。
対象となる費用には、結婚式(婚姻の1年前以降に支払ったもの)や新居の家賃、敷金、転居費、妊娠、出産、育児に関する費用、不妊治療や妊婦健診、分べん費や産後ケア、子の医療費や保育料(ベビーシッター代含む)などがあります。
住宅取得など資金の贈与の特例
親や祖父母といった直系尊属から、自宅の購入や増改築のための資金を受け取った場合に利用できるのが住宅取得等資金贈与の特例です。
対象となるのは、贈与を受ける子や孫が18歳以上で、その年の合計所得金額が2,000万円以下(条件によっては1,000万円以下)であること、さらに贈与の翌年3月15日までにその住宅へ入居することなど、いくつかの要件を満たす必要があります。
省エネ性能など一定基準を満たす住宅であれば最大1,000万円、それ以外の住宅は最大500万円までが非課税です。
なお、この特例の適用期限は2026年12月31日までとなっています。
相続税がかからない方には相続時精算課税制度もおすすめ
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母や祖父母が18歳以上の子や孫に財産を贈与する際、最大2,500万円までを非課税で贈与できる制度です。
贈与時は贈与税がかかりませんが、贈与者の死亡時にその財産を相続財産に加えて相続税を計算します。
超過分には一律20%の贈与税がかかり、支払った贈与税は相続税から控除可能です。
2023年度改正で年間110万円の基礎控除が新設され、この範囲内は加算不要となりました。
利用には事前申請が必要で、一度選択すると暦年課税へ戻せませんが、贈与者ごとに選択は可能です。
孫が贈与税を納税する必要あり!注意すべき5つのパターン

孫への贈与は節税や資産承継の手段として有効ですが、条件によっては贈与税の課税対象となり、納税義務が発生します。
ここでは、孫が贈与税を支払う必要がある代表的な5つのケースを紹介します。
①高額なお年玉をあげてしまった
国税庁のホームページでは、お年玉は基本的に贈与税の対象外とされていますが、その条件として「社会通念上妥当と認められる金額」であることが求められます。
つまり、一般的な感覚で常識的とされる範囲を超える高額なお年玉は注意が必要です。
特に、親や祖父母、親戚など複数の人から高額なお年玉を受け取った場合、それらの合計額が年間の基礎控除額である110万円を超えると、その超過分に対して贈与税が課されます。
また、お年玉だけでなく、入学祝い、誕生日祝いなど他の贈与分も合算して判定されるため、思わぬ課税につながることがあります。
したがって、贈与税の非課税枠を意識し、贈与総額の管理を行うことが重要です。
②孫名義の口座にお金を貯蓄してしまった
孫へ高額な現金を直接渡せない場合、孫名義の口座を開設して入金する方法をとる方もいます。
しかし、この場合は名義預金と判断され、贈与とは認められません。
孫名義の口座を使って定期的に入金する場合は、その口座の存在を孫に知らせ、いつでも孫が自由に引き出せる状態にしておく必要があります。
そうすれば贈与が成立し、孫の財産として認められます。
③双方の祖父母が1年間に100万円ずつ贈与してしまった
贈与税は、1年間に受け取った金額が110万円を超えなければ課税されません。
ただし、この非課税枠を利用して贈与を行う際は、自分だけの贈与額だけで判断すると、思わぬ課税が発生することがあります。
例えば、孫の小学校入学祝いとして100万円を贈った場合、もう一方の祖父母からも贈与があれば、孫は合計200万円を受け取ることになります。
この場合、基礎控除110万円を超える90万円に対して贈与税がかかり、9万円を納税しなければなりません。
贈与額の判定は贈る側ではなく受け取る側の総額で行います。
孫への贈与は、両家で時期や金額を事前に話し合って計画的に行うことが大切です。
④長年毎年同じ日に同じ金額を贈与し続けてしまった
孫の誕生日などの記念日に、毎年同額を5〜10年といった長期間にわたって贈与する方法を連年贈与と呼び、この方法には注意が必要です。
毎年の贈与額が110万円を超える場合は贈与税の対象となりますが、贈与税をきちんと納めていれば問題はありません。
しかし、非課税枠を利用して、最初から1,000万円を渡す計画で100万円を10年間贈り続けると、「当初から一括贈与の意思があった」と税務署に判断され、贈与税が課される可能性があります。
そのため、同額・同日で長年贈与する方法は避けた方が安全です。
⑤贈与税をかわりに納税してしまった
贈与税は、贈与を受けた本人がその負担義務を負い、原則として自分の財産から納めなければなりません。
例えば孫が贈与を受けた場合、その贈与税は孫自身の資金で支払う必要があります。
しかし、祖父母が代わりに贈与税を支払ってしまうと、その支払った贈与税分が新たな贈与とみなされます。
その結果、追加の贈与税が発生し、かえって税負担が増えてしまう恐れがあります。節税のつもりが逆効果となるため、注意が必要です。
孫への贈与にかかる贈与税についてよくある質問

孫への贈与にかかる贈与税について、よくある質問をご紹介します。
Q.教育資金の一括贈与をした場合、贈与者が亡くなった後も非課税のままでいられますか?
教育資金の一括贈与の特例は、30歳未満の孫などに対して最大1,500万円(学校等以外に支払われるものについては500万円)までを非課税で贈与できる制度です。
ただし、贈与者が亡くなった時点で残っている未使用分については、原則として贈与税の課税対象となります。
さらに、贈与者の相続税課税価格が5億円を超える場合は、未使用分が相続税の対象にもなります。
つまり、使いきれなかった金額については、相続発生時に再度税金が課される可能性があるため、計画的に教育資金を使うことが大切です。
領収書による使途証明が必要な点も忘れずに対応しましょう。
Q.相続時精算課税制度を選ぶと、将来の相続税負担が軽くなるのでしょうか?
相続時精算課税制度は、贈与時に最大2,500万円までを非課税で贈与できる一方、その金額は贈与者が亡くなった際に相続財産に加算して相続税を計算する仕組みです。
したがって、制度を使っただけでは直接的な節税にはなりません。
ただし、2023年度の改正で年間110万円までの贈与は加算対象外となったため、戦略的に使えば節税につながる可能性があります。
非課税枠を大きく活用したい場合や、生前にまとまった支援をしたい場合に有効ですが、一度選択すると暦年課税に戻せないため、慎重な判断が求められます。
孫への贈与で贈与税を節税する方法まとめ

ここまで、孫への生前贈与について、そのメリットや制度の活用方法、注意点を中心にご紹介してきました。
本記事の要点をまとめると以下のとおりです。
- 孫は「持ち戻し」の対象外になるため、相続税対策として有効なケースがある
- 教育資金・結婚資金・住宅取得資金など、目的別に非課税制度が設けられている
- 贈与税がかかる5つの典型パターンを理解し、事前に対策を取ることが重要
孫への贈与は、単なるお金の移転ではなく、家族の想いを次の世代に届ける大切な行為です。
制度の正しい理解と計画的な実行によって、より安心で効果的な資産承継が可能になります。
本記事がその一助となれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。