相続において現金は扱いやすく明確な資産ですが、相続税の面では慎重な対応が求められます。
本記事では、現金に関する相続税について以下の点を中心にご紹介します!
- 申告対象となる現金とは
- 被相続人の財産を正確に申告しなかったら
- 現金を相続するメリットとデメリット
現金に関する相続税について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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申告対象となる現金について

相続税の申告では、被相続人が所有していた現金はすべて課税対象として申告する必要があります。
具体的には、次のような現金が該当します。
①自宅や貸金庫の現金
自宅や貸金庫に保管されている現金についても、相続財産として扱われ、相続税の課税対象に含まれます。現金はそのままの金額で評価されるため、たとえ預金口座に入っていなくても、相続財産としてきちんと申告しなければなりません。
特に注意が必要なのが、いわゆるタンス預金と呼ばれる自宅保管の現金です。タンスや金庫にしまわれている現金は把握しにくく、つい見落としてしまいがちですが、これらも相続税の申告対象です。
現金の管理状況については、相続発生時にしっかり確認することが重要です。
②銀行口座から引き出した現金
被相続人が亡くなる直前に銀行口座から引き出していた現金についても、相続税の申告においては相続財産として取り扱われるため注意が必要です。こうした現金は、死亡時点での預金残高には反映されていないため、金融機関から取得する残高証明書の金額には含まれません。しかしながら、現金として本人が保有している以上、原則として相続財産に計上し、相続税の対象とする必要があります。
例えば、葬儀費用や入院中の医療費の支払いを見越して、本人が生前に口座から引き出していた場合でも、その現金が未使用のまま残っていれば、相続財産に含めて申告する義務があります。目的が明確であっても、使わずに手元に残っていた現金である以上、相続税法上の財産とみなされるのです。
具体的なケースとして、被相続人が亡くなる直前に100万円を銀行から引き出し、自宅に保管していた場合、その100万円は残高証明書には記載されないものの、実際には本人が所有していた現金として相続税申告書に含める必要があります。このような引き出し分は見落とされやすいため、相続手続きを行う際は預金通帳の出金履歴を確認し、直前の大きな引き出しがないかどうかを丁寧に確認しておくことが大切です。
③財布に入っていた現金
被相続人が日常的に使用していた財布の中に入っていた現金についても、例外なく相続財産として扱われます。たとえ金額が少額であったとしても、その所有者が死亡した時点で保有していた財産である以上、相続税の申告対象となります。
例えば、被相続人の財布に1万円が入っていたとすれば、その1万円もほかの現金や預貯金と同様に相続財産として取り扱い、正確に申告書に記載する必要があります。こうした細かい現金も含めて、相続財産全体の金額を正しく把握し報告することが、トラブルを未然に防ぐための重要なポイントとなります。
現金に対して課税される相続税について

相続が発生した際には、相続人が受け継ぐ財産の総額が一定の基準を超えると、相続税の課税対象となります。
ここでは、現金を含む財産に対して相続税が発生するラインについて、基礎控除の金額や課税額の算出方法など、具体的な仕組みを解説します。
基礎控除額を超えるかどうか
相続税が実際に課されるかどうかは、相続人が取得する財産の総額が基礎控除額を上回るかどうかにかかっています。現金も他の財産と同様に相続財産に含まれ、その評価額が基礎控除額を超えた場合にのみ相続税が発生します。
この基礎控除額は、相続人の人数に応じて以下のように計算されます。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、
- 相続人が1人であれば控除額は3,600万円
- 相続人が2人なら4,200万円
- 相続人が3人いれば4,800万円
となり、現金を含む全体の相続財産がこの金額を超えるかどうかで課税対象か否かが決まります。したがって、相続税の申告が必要かどうかを判断するうえで、まずはこの基礎控除額を基準に財産評価を行うことが重要です。
相続税の計算方法
相続税の計算は、まず初めに、現金のほかにも不動産、有価証券、貴金属など、被相続人が所有していたすべての財産を評価し、その合計額を算出します。続いて、被相続人が生前に抱えていた借入金や未払いの医療費、葬儀にかかった費用などの債務を差し引きます。
その後、残った金額から基礎控除額を控除します。この基礎控除額は、相続人の人数によって異なり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。差し引いた結果、プラスになった部分が相続税の課税対象となります。
例えば、相続財産の総額が1億円、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人だった場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3)となります。よって、課税対象額は1億円から4,800万円を差し引いた5,200万円となり、この金額に応じた相続税が課されることになります。相続税はこの課税対象額をもとに、各相続人の取得分に応じて算出されます。
法定相続分に応じて計算
相続税は、財産をどのように分けたかにかかわらず、まずは民法で定められた法定相続分に基づいて課税額を計算するのが基本です。これは、実際の分割割合とは異なる場合でも、税額計算上は法定相続分で按分することが前提となるためです。
例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、残りの2分の1を子ども2人で均等に分けるため、各人の持ち分は配偶者が1/2、子どもがそれぞれ1/4となります。
仮に相続財産の課税対象額が5,200万円だった場合、法定相続分で按分すると以下のようになります。
- 配偶者:5,200万円×1/2=2,600万円
- 子ども(各自):5,200万円×1/4=1,300万円
そのうえで、国税庁が定める累進税率に基づいて相続税が課されます。たとえば、2,600万円に対しては税率15%、控除額50万円が適用されるため、配偶者の税額は340万円。子ども1人あたりも同様に15%の税率と控除額50万円を使って計算し、それぞれ145万円が課税されます。
このように、現金もほかの財産と同様、基礎控除後の課税対象額を法定相続分で分けたうえで、それぞれの取得額に応じた税率を適用して税額を算出します。
現金の相続において知っておきたいこと

現金を相続する際には、いくつか押さえておくべき重要なポイントがあります。
ここでは、現金を相続する際に注意すべき点について詳しく解説します。
遺産分割協議で分配
現金は、ほかの財産と同様に、遺言書がない限り、相続人全員で行う遺産分割協議によって分配方法を決定する必要があります。預貯金や不動産と比べて分けやすい資産ではありますが、誰がいくら相続するかは全員の合意がなければ決まりません。
相続人のうち一人でも反対する人がいれば、現金を勝手に引き出したり使用したりすることはできず、法的なトラブルにつながる可能性があります。
例えば、被相続人が残した現金が1,000万円ある場合、これをどう分けるかは相続人全員の話し合いによって決める必要があります。分割割合は必ずしも法定相続分に従う必要はありませんが、あくまで全員が納得して協議書を作成することが前提です。公平かつ円滑な相続を進めるためにも、話し合いの場を丁寧に設けることが大切です。
現金を隠す行為は刑事罰の対象になる
現金の相続において、被相続人が残した財産を故意に申告せず隠す行為は、法律に違反する重大な行為です。相続財産を正しく申告しないことは脱税と見なされ、悪質と判断された場合には刑事罰の対象となる可能性があります。
特に現金は、通帳などの記録が残らないため申告漏れや隠匿が発生しやすい財産ですが、税務署は預金の出金記録や生活実態などから調査を行い、タンス預金などの存在も突き止めることがあります。
例えば、被相続人が自宅に現金を多額に保管していたにもかかわらず、それを申告から除外した場合、後に税務調査で発覚すると、延滞税や過少申告加算税に加え、意図的な隠蔽と判断されれば重加算税も科される恐れがあります。
生前贈与の活用
相続税の負担を軽減する手段として、現金の生前贈与をうまく活用することを検討しましょう。毎年の贈与額が一定の範囲内であれば、贈与税がかからずに財産を次世代に移すことができます。
具体的には、年間110万円までの贈与については基礎控除の範囲内とされ、贈与税が非課税となります。
例えば、子どもや孫に対して毎年110万円ずつ贈与を行えば、10年で1,100万円もの資産を贈与税なしで移転できます。
ただし、生前贈与は制度の仕組みを正しく理解して活用することが大切です。特に注意したいのが生前贈与加算に関するルールです。この加算制度は、亡くなる直前に税負担を軽くしようと急いで贈与を行うことを防ぐために設けられています。
通常、年間110万円以下の贈与であれば贈与税はかかりませんが、それでも相続開始前7年以内に行われた贈与については、贈与税がかからなかったとしても相続税の課税対象として加算されることがあります。これは、贈与税の申告の有無にかかわらず、加算対象となる点に注意が必要です。
なお、2024年1月1日以降の贈与からは、それまでの3年ルールが7年ルールへと延長されました(2024年1月1日以降に実行された贈与が将来の相続税加算の対象)。
したがって、相続税対策として生前贈与を行う場合は、早めに計画的に始めることが肝心です。
ほかの資産と比較し検討する
現金は評価額がそのまま相続税の課税対象となるため、ほかの資産と比べて相続税が高くなりやすい特徴があります。そのため、相続の際には現金だけでなく、不動産や有価証券など他の資産とのバランスを踏まえたうえで、どの資産をどのように承継するかを慎重に検討することが重要です。
例えば、不動産を相続する場合には、相続税評価額が市場価格よりも低く見積もられる傾向があり、時価の80%前後で評価されるため、現金を相続するよりも相続税の負担を抑えられるケースがあります。
現金を相続する際には、遺産分割協議による適切な配分、申告漏れの防止、相続税計算に関する理解、生前贈与の活用、さらには資産ごとの税負担の違いを総合的に判断することが大切です。
被相続人の財産を正確に申告しなかった場合

相続税の申告においては、被相続人が保有していた財産を正確に把握し、漏れのないように申告することが求められます。申告に不備があると、後々大きな問題につながる可能性があります。
ここでは、財産の申告を怠った場合に発生しうる具体的なリスクについて詳しく説明します。
過少申告加算税が課される
相続税の申告において、本来より少ない財産額を申告してしまった場合には、過少申告加算税というペナルティが発生することがあります。これは、財産の一部を申告し忘れたり、誤って評価を低くしてしまった場合などに課される追加の税金です。
加算税の税率は、過少となった金額に対して10%が基本となりますが、税務調査の事前通知後に修正申告を行わなかった場合には、15%に引き上げられることもあります。
例えば、本来申告すべき金額よりも500万円少なく申告していた場合、その差額に対して10%の過少申告加算税がかかり、結果として50万円の追加負担が発生することになります。
延滞税が課される
延滞税とは、相続税の納付が期限を過ぎてしまった場合に発生する追加の税金です。納期限までに納税が行われなければ、自動的に延滞税が課される仕組みになっており、時間が経つほどその負担は増していきます。
延滞税の税率は、原則として年14.6%とされており、納付が遅れた期間や時期によって多少異なる場合もあります。
例えば、相続税の申告で100万円の追加納税が発生し、その納付が1年遅れた場合、延滞税として約14万6,000円が課されることになります。
このような延滞による余計な負担を防ぐためにも、納税期限を正確に把握し、期限内に確実に納めることが重要です。
重加算税が課される
重加算税は、相続税の申告において意図的に財産を隠したり、虚偽の内容で申告した場合に課される非常に重い罰則です。単なる申告ミスとは異なり、悪質な隠ぺいや改ざんと判断された場合に適用されるため、税務上のペナルティとしては特に厳しいものとなっています。
この重加算税は、隠していた金額に対して35%〜40%の高率で課税されるため、税額そのものが大幅に増加します。
例えば、相続財産のうち1,000万円を現金で自宅に保管していたにもかかわらず、申告から意図的に除外していた場合、税務調査などで発覚すれば、400万円もの重加算税が課される可能性があります。
重加算税のリスクを避けるためには、相続財産を一切隠さず、正確に申告することが何より重要です。
相続税法違反のリスク
相続税の申告において、意図的に財産を隠すなどの悪質な行為があったと判断されると、単なる税務上の罰則にとどまらず、相続税法違反として刑事責任を問われる可能性があります。
このような場合には、罰金刑や懲役刑といった厳しい刑罰が科されることがあり、法的だけでなく社会的にも大きな影響を及ぼすことになります。
刑罰の内容としては、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
例えば、多額の財産を故意に隠して申告しなかったことが発覚し、脱税の意図が明白であると判断された場合、実際に有罪となり刑罰を受けることもあり得ます。このような事態になれば、経済的損失だけでなく、信用の失墜や社会的地位の喪失といった深刻なリスクを伴います。
相続手続きでは、すべての財産を正確に把握し、誠実に申告することが重要です。安易な隠ぺい行為が取り返しのつかない結果を招くことがあることを、十分に認識しておきましょう。
隠したタンス預金が発覚する理由

相続税を逃れる目的でタンス預金を隠そうとする人もいますが、実際には税務署に見つかるケースが多いとされています。
タンス預金が発覚する理由は、税務署の徹底した調査にあります。税務署は相続税の調査において、次のような詳細な調査を行います。
- 被相続人の過去10年程度の預金履歴を隈なく確認し、大量の現金の引き出しや不自然な取引を見つけ出す
- 被相続人の収入や生活費、支出を丹念に把握し、相続開始時点での財産状況を推定
- 税務調査では、被相続人の自宅や敷地内を徹底的に調べる
- 具体例
- 被相続人が亡くなる直前に多額の現金を銀行から引き出していた場合、税務署はその現金がどこに行ったのかを詳細に調査
こうした調査の結果、引き出された現金が確認されない場合は、タンス預金として隠蔽されていると判断されることがあります。
現金を相続するメリット

現金の相続には、いくつかのメリットがあります。不動産や株式と異なり、現金ならではのメリットを以下に紹介します。
1.手続きが簡単
現金は名義変更や売却などの手間が不要で、相続人にそのまま引き継がれます。たとえば不動産のような登記作業は必要なく、スムーズに扱えるのが特徴です。
2.分けやすく公平
1円単位で分割できるため、相続人同士で均等に分けやすく、トラブルを回避しやすい資産です。例として、1,000万円を4人で等分すれば、各自250万円を受け取れます。
3.すぐに使える
現金は相続後すぐに自由に使えるため、売却手続きなどの時間がかからず、急な出費にも対応しやすい点が魅力です。
4.納税や遺留分の支払いに便利
現金があれば、相続税や遺留分の支払いも即時に対応可能です。不動産を換金する手間がかからず、納税期限にもスムーズに間に合います。
これらの点から、現金は相続資産として扱いやすく、さまざまな場面で役立ちます。
現金を相続するデメリット

現金の相続には利便性がある一方で、いくつかの注意すべきデメリットも存在します。
1.相続税が重くなりやすい
現金は評価額がそのまま課税対象となるため、不動産や株式に比べて相続税が高くなりやすい資産です。たとえば、1億円の現金はそのまま1億円として課税されますが、不動産なら評価額が実勢価格より低くなり、税負担が軽減されることがあります。
2.見落としやすいリスク
タンス預金などの家庭内の現金は存在が把握しづらく、申告漏れの原因になりがちです。申告を怠ると、税務調査で発覚した際に、過少申告加算税や延滞税といったペナルティが課される恐れがあります。
3.相続トラブルの火種になりやすい
現金は分けやすい反面、管理や使い道をめぐって相続人間のトラブルに発展することもあります。特に一部の相続人が勝手に使用した場合、不正使用や隠匿を巡って深刻な争いになるケースもあります。
このように、現金の相続にはメリットだけでなく、税負担やトラブルリスクといった側面もあるため、事前に対策を講じることが大切です。
現金に関する相続税のまとめ

ここまで現金に関する相続税についてお伝えしてきました。
現金に関する相続税の要点をまとめると以下のとおりです。
- 相続税の申告では、被相続人が所有していた現金はすべて課税対象として申告する必要がある
- 被相続人の財産を正確に申告しなかった場合、過少申告加算税や延滞税、重加算税が課されたり、相続税法違反のリスクを負う
- 納税や遺留分の支払いに便利などの利便性がある一方で、相続税が重くなりやすい、見落としやすいリスク、相続トラブルの火種になりやすい、などの注意すべきデメリットも存在する
現金を相続する場合、さまざまな法律や制度を理解したうえで、正しく申告することが大切です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。