相続放棄をすれば、借金や資産など故人の財産に一切関わらなくてよいと考える方は少なくありません。ところが、空き家といった財産は、放棄したからといってすぐに責任がなくなるわけではないのです。
本記事では相続放棄しても管理義務は残る?について以下の点を中心に解説していきます。
- 管理義務の“管理”とは何をする必要があるのか
- 相続放棄をしても残る管理義務について
- 相続財産管理人の選び方
相続放棄しても管理義務は残る?について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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相続放棄をしても残る管理義務について

相続放棄を行った場合でも、すぐにすべての責任から解放されるわけではありません。法律では、相続放棄をした方であっても、次の相続人や管理者が財産を引き継ぐまでの間は、自己の財産と同じ程度の注意を払って管理する義務が課されています。これは、相続財産が放置されることで周囲に被害が及ぶのを防ぐための規定です。
例えば、相続財産のなかに老朽化した住宅や使われていない土地がある場合、適切に管理されなければ倒壊や不法侵入といったトラブルが発生する可能性があります。その結果、近隣住民に被害が及び、最悪の場合は損害賠償請求を受けることも考えられます。つまり、相続を放棄したからといって完全に無関係ではなく、一定の管理費用や手間を要するのです。
管理義務の対象となる財産としては、空き家や空き地のほか、農地や山林なども含まれます。相続放棄を検討している方は、管理義務が残ることを理解したうえで、早めに次の管理者への引き渡しや適切な処理を進めることが重要です。
管理義務の“管理”とは何をする必要があるのか

前項では、管理義務の内容について解説しましたが、そもそも、“管理”というのは、具体的に何をする必要があるのでしょうか。
相続放棄をしても残る管理義務とは、特別なことを求められているわけではなく、自身の財産を維持するのと同程度の注意を払うことを意味します。
例えば、相続財産に築年数が古い住宅が含まれている場合、放置すると不法侵入や老朽化による倒壊といった危険が生じるおそれがあります。
そのため、定期的に建物の状態を確認したり、劣化が進んで危険な箇所があれば補強工事などの対応を行うといった管理が必要です。
一方で、こうした基本的な管理を怠った場合には、近隣住民に被害が及び、結果として損害賠償を求められる可能性もあります。
つまり“管理”とは単なる名目上の責任ではなく、現実的にトラブルを防ぐための具体的な行動を伴うものだと理解しておくことが大切です。
相続放棄後に管理を怠った場合のリスクについて

相続放棄をした場合でも、財産が次の管理者に引き継がれるまでの間は一定の管理責任が残ります。管理責任を軽視すると、さまざまなトラブルを招く可能性があります。
老朽化した建物を放置したことで倒壊が起こり、近隣の住宅や住民に被害を与えてしまえば、損害賠償を求められる事態になりかねません。
また、財産を適切に保存していなかったために、債権者が本来回収できるはずだった債権を回収できなくなると、責任を追及される恐れもあります。
このようなリスクを避けるためには、最低限の管理を怠らないことが重要です。もし自らの対応が難しい場合には、家庭裁判所へ申立てを行い、相続財産清算人の選任を求める方法もあります。早めに適切な手続きを踏むことで、不要なトラブルに巻き込まれるリスクを軽減できるでしょう。
遺産の管理をしたくない場合はどうすればよいのか

相続放棄をした方のなかには、「財産の管理までは関わりたくない」と考える方も少なくありません。そのような場合に検討できるのが、家庭裁判所に申し立てを行い、相続財産管理人(清算人)を選任してもらう方法です。相続財産管理人は、相続人がいない、または全員が放棄したときに、財産を整理・管理するために裁判所が選任する管理者です。
ただし、申し立てをすれば必ず選任されるわけではなく、家庭裁判所が審理のうえ必要性を認めた場合に限られます。また、選任には収入印紙や切手のほか、数十万円単位の予納金が必要になることもあります。財産に十分な価値があれば予納金が相続財産から返還される可能性もありますが、価値が乏しいと返ってこないケースもあるため注意が必要です。
したがって、遺産の管理を避けたい場合には、まず財産の内容や価値を確認し、相続財産管理人を選任するかどうかを慎重に判断することが大切です。必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家に相談し、無駄な費用負担を避けながら適切な方法を選びましょう。
空き家の保存義務から免れるためには?
相続放棄をしても、空き家などの不動産は一定期間、管理責任が残ります。しかし「老朽化した建物を維持するのは難しい」「費用や労力をかけたくない」という方も多いのではないでしょうか。そのような場合には、相続財産管理人の選任申立てをすることが推奨されます。
相続財産管理人の選び方

相続財産管理人を選任するには、まず被相続人が最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てを行う必要があります。裁判所は、提出された資料をもとに、被相続人との関係や遺産の状況などを審査し、管理人を選任するかどうかを判断します。選任が認められる場合には、誰を管理人にするかについても裁判所が決定します。
なお、相続財産管理人になるために特別な資格は求められていません。そのため、申立人が候補者を推薦することも可能です。ただし、専門的な知識や実務経験が必要となる場面も多いため、弁護士や司法書士などを候補者として挙げるケースがあります。
相続財産管理人の選ぶ際の必要書類や費用
相続財産管理人を家庭裁判所に申し立てる際には、あらかじめ準備しておくべき書類や費用があります。書類については、まず裁判所に備え付けられた申立書のほか、被相続人に関する戸籍関係の一式が必要です。
具体的には、被相続人本人の出生から死亡までの戸籍謄本、両親や祖父母など直系尊属の戸籍、兄弟姉妹や甥姪が代襲相続人となる場合にはその戸籍も含まれます。加えて、被相続人の住民票除票や戸籍附票、不動産登記事項証明書や預貯金残高証明書などの財産資料も求められます。候補者を推薦する場合には、その人物の住民票等も提出することになります。
費用面では、収入印紙800円や郵便切手代のほか、官報に公告を載せるための費用(約5,000円)が必要です。さらに、相続財産管理人が業務を遂行するための経費や報酬として、20〜100万円程度の予納金を納めるケースが多いそうです。
相続放棄しても管理義務は残る?についてのよくある質問

ここまで相続放棄をしても残る管理義務のことや、相続放棄後に管理を怠った場合のリスクについて解説してきました。
以下では、相続放棄しても管理義務は残る?についてのよくある質問をご紹介します。
3ヶ月以内に相続放棄しないとどうなる?
相続放棄には期限が設けられており、被相続人が亡くなった事実を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述を行わなければなりません。この期間を過ぎてしまうと、自動的に“単純承認”をしたとみなされ、プラスの財産だけでなく借金などマイナスの財産もすべて引き継ぐことになります。
もっとも、3ヶ月という期間内に遺産の全容を把握するのは容易ではなく、財産の調査に時間がかかるケースも多く見られます。そのため、相続を放棄するかどうか迷う場合には、期限を意識して早めに財産調査を進めることが大切です。
管理義務の占有とは?
相続放棄をしても管理義務を負うかどうかは、“財産を実際に占有しているかどうか”が基準になります。ここでいう占有とは、法律用語としての所有権の有無ではなく、事実上その財産を自分の支配下に置いている状態を指します。
例えば、相続人が被相続人の自宅に住み続けている場合や、遺産を直接管理している場合は“占有”に該当し、相続放棄をした後も一定の管理責任が残ります。反対に、遠方に住んでいて亡くなった方の生活や財産に関与していなかった相続人については、占有しているとはいえず、管理義務を負うことはありません。
つまり、管理責任は形式的に全員に課されるのではなく、現実に財産を支配しているかどうかによって判断される点が大きな特徴といえます。
相続放棄しても管理義務は残る?についてのまとめ

ここまで相続放棄しても管理義務は残るのかについてお伝えしてきました。相続放棄しても管理義務は残るのかについての要点をまとめると以下のとおりです。
- 管理義務の“管理”とは、単なる名目上の責任ではなく、現実的にトラブルを防ぐための具体的な行動を伴うもの
- 相続放棄を行った場合でも、すぐにすべての責任から解放されるわけではない。管理義務の対象となる財産としては、空き家や空き地のほか、農地や山林などがある
- 相続財産管理人を選任するには、まず被相続人が最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てを行う。その後、裁判所が、提出された資料をもとに、被相続人との関係や遺産の状況などを審査し、管理人を選任するかどうかを判断する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。