パスポートを申請する際、どのような場面で必要になるのか、なぜ謄本なのか、戸籍抄本ではいけないのか、といった疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
特に2023年の制度改正以降、申請に必要な書類や提出条件が変わりつつあり、従来の情報では通用しない場面も増えています。
本記事では、パスポート申請における戸籍謄本の役割について、以下の観点から詳しく解説します。
- 戸籍謄本の基本的な性質と有効期限
- 戸籍謄本の主な4つの取得方法
- パスポートの申請種類別に見る戸籍謄本の必要有無と申請方法
申請をスムーズに進めるためには、書類の意味と提出ルールを正しく理解することが不可欠です。
この記事を通じて、戸籍謄本の基本から申請実務まで、実践的に役立つ知識をお届けします。
パスポート申請と戸籍謄本の関係について理解を深めるためにも、どうぞ最後までご覧ください。
相続ナビに相続手続きをお任せください。
スマホ・PCで登録完了
役所などに行く必要なし
戸籍謄本とは?
「戸籍謄本」と聞いても、戸籍に関する重要な書類という印象だけで、実際にどんな情報が記載されているのか、どんな場面で必要なのかを正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。
たとえば、就職や結婚、パスポートの申請など、人生の節目にはこの戸籍謄本が必要になることがあります。
本籍地で管理されている戸籍の内容をすべて写したものが戸籍謄本であり、自分の身分や家族関係、国籍などを証明する公的な書類です。
戸籍謄本の有効期限
戸籍謄本そのものには、法律上の明確な有効期限は設けられていません。
記載されている内容に変更がなければ、いつ発行されたものであっても正式な証明書として機能します。
ただし、実際の行政や民間の手続きでは「発行から6か月以内」などの提出条件が設けられていることが少なくありません。
たとえば、パスポートの新規申請や再発行手続きでは、発行日から6か月以内の戸籍謄本が必要です。
これは、氏名や本籍地の最新情報を確認する必要があるためです。
同様に、婚姻届の提出時や、相続に関する金融機関での名義変更手続き、保険金の請求、年金の手続きなどでも、3〜6か月以内の戸籍謄本を求められる場合があります。
これらの戸籍謄本の有効期限は法的な効力を持つものではなく、情報の新しさを確保するための実務的な運用ルールに基づくものです。
提出先によって求められる期間が異なるため、戸籍謄本を取得する際は、事前に使用目的と提出先の条件を確認し、適切なタイミングで取り寄せることが重要です。
戸籍謄本の取得方法
戸籍謄本はさまざまな場面で必要になる重要な書類です。
平日に役所に行けない方、遠方に本籍がある方、多忙で時間が取れない方など、それぞれに最適な取得方法は異なります。
戸籍謄本を取得するにはどのような方法があるのか、という疑問を持つ方に向けて、今回は4つの取得方法を比較しながらご紹介します。
それぞれの状況に合った取得方法を見つけ、スムーズなパスポート申請につなげましょう。
本人が自治体の窓口で取得する
戸籍謄本を最もシンプルに取得する方法が、本人が本籍地の自治体窓口へ直接出向く方法です。
窓口での対応はその場で完了することが多く、急ぎで必要な場合に適しています。
ただし、平日の開庁時間内に行く必要があるため、仕事などで時間が取りづらい方は注意が必要です。
取得時に必要なものは以下の通りです。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 手数料(多くの自治体で450円程度)
申請書の記入も必要ですが、窓口に用紙が備えられており、職員が丁寧に案内してくれるため、初めてでも安心して手続きができます。
時間に余裕がある方にはおすすめの取得方法です。
代理人が本籍地の自治体の窓口で取得する
本人が本籍地に行けない場合、代理人による取得が可能です。
たとえば家族や知人に依頼することで、本人が遠方に住んでいる場合でもスムーズに手配できます。
ただし、本人になりすました請求を防ぐため、自治体では厳格な手続きが求められます。
代理人に必要な書類は以下の通りです。
- 委任状(本人が署名・押印したもの)
- 代理人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 手数料(多くの自治体で450円程度)
一見手間がかかりそうですが、正しい書類を揃えればスムーズに取得できます。
なお、自治体によって細かな条件が異なるため、事前に公式サイトや電話で確認しておくと安心です。
郵送で取り寄せる
仕事などで窓口に行けない方や、本籍地が遠方にある方には、郵送請求が便利です。
手続きがすべて自宅で完結するため、物理的に出向くことが難しい方にも向いています。
ただし、書類の記入漏れや不備があると、差し戻しでさらに日数がかかるため、丁寧な準備が重要です。
郵送請求に必要なものは以下の通りです。
- 請求書(様式は自治体サイトで入手可能)
- 本人確認書類のコピー
- 定額小為替(手数料分を郵便局で購入)
- 返信用封筒(切手を貼り付け、宛名記入済のもの)
申請から受け取りまで通常数日から1週間程度かかります。
急ぎの場合は、事前に発送方法や処理スケジュールを確認しておくと安心です。
コンビニで発行する
マイナンバーカードを活用すれば、一部自治体ではコンビニのマルチコピー機から戸籍謄本を取得できます。
平日昼間に窓口へ行けない方や、週末しか時間が取れない方にとって非常に利便性の高い選択肢です。
ただし、全国のすべての自治体が対応しているわけではないため、事前の確認は必須です。
利用条件と注意点は以下の通りです。
- 本籍地の自治体が「コンビニ交付」に対応していること
- 署名用電子証明書付きのマイナンバーカードが有効であること
- 利用時間:通常午前6時30分~午後112時(年末年始等を除く)
取得までは、わずか数分で完了します。
操作画面の案内に従って進めるだけなので簡単ですが、電子証明書の有効期限切れなどにより発行できない場合もあるため、事前にカードの状態を確認しておきましょう。
パスポート申請で戸籍謄本が求められるケース
パスポートの申請に戸籍謄本が必要かどうか、その判断を誤ると、申請が保留になったり、窓口での手続きがやり直しになることもあります。
特に近年の制度変更により、戸籍謄本の扱いが厳格化されており、旧来の「戸籍抄本でも申請可能」という常識が通用しなくなっています。
申請する状況によって、必要書類は大きく異なります。
ここでは、「新規申請」「切替申請」「変更申請」「紛失・盗難再発行」の4つの場面に分けて、それぞれ戸籍謄本の提出が必要かどうかを明確に解説していきます。
新規申請
新規申請とは、以下のいずれかに該当する場合を指します。
- 初めてパスポートを申請する方
- パスポートの有効期限がすでに切れている方
- パスポートを紛失・盗難・焼失し、「紛焼失届」を提出して新たに申請する方
これらのケースでは戸籍謄本(全部事項証明書)1通の提出が必須です。
特に、令和5年3月27日以降、戸籍抄本では受け付けられなくなったため注意が必要です。
戸籍謄本は、日本国籍の確認および氏名・本籍地などの正確な個人情報を証明するために必要な書類です。
発行日から6か月以内の原本である必要があり、コピーでは無効です。
なお、オンライン申請を利用する場合は「戸籍電子証明書提供用識別符号」の入力が求められます。
切替申請
切替申請とは、有効期限が近づいてきたパスポートを更新する場合を指します。
すでに有効なパスポートを持っている方が、以下のような理由で再発行を申請するケースです。
- 有効期限が1年未満になった
- 査証欄の残りページが少ない
- 損傷などで使用に支障がある
この場合、戸籍謄本の提出は原則として不要です。
ただし、氏名や本籍地が現在のパスポートと異なる、提出したパスポートに不備や記載漏れがある場合は例外です。
氏名や本籍地が現在のパスポートと異なる、提出したパスポートに不備や記載漏れがある場合は、身分情報を正確に確認するため、戸籍謄本の提出を求められることがあります。
切替申請時は、旧パスポートの情報と現状に相違がないかを事前に確認しましょう。
氏名や本籍地の変更があった場合
結婚・離婚・養子縁組などによって氏名が変わった、あるいは本籍地を移した場合は、パスポートの情報も更新が必要になります。
このような変更が生じた状態での申請では、戸籍謄本の提出が必須です。
これは、本人の基本情報が変更されたことを公的に証明するためであり、過去のパスポート情報との整合性をとるためにも重要です。
該当する主なケースは以下の通りです。
- 結婚・離婚により姓が変わった
- 転籍届の提出によって本籍地が変更された
- 養子縁組による氏名・本籍の変更
このように、氏名や本籍の変更があった場合は、6か月以内に発行された戸籍謄本(全部事項証明書)を用意しましょう。
戸籍謄本を確認し、正確な変更情報をもとに申請手続きを進めることが求められます。
紛失・盗難による再発行
現在有効なパスポートを紛失・盗難・焼失した場合は、「紛失一般旅券等届出書」を提出し、新たに発給申請を行う必要があります。
このとき、本人確認と国籍確認のために戸籍謄本の提出が原則必須です。
該当する状況は下記の通りです。
- パスポートをなくした、または盗まれた
- 火災などでパスポートが焼失した
- 手元に一切の旅券情報が残っていない
このケースでは、新規申請と同様に戸籍謄本(全部事項証明書)1通を提出することが求められます。
さらに、警察への遺失届や盗難届の受理番号が求められる場合もあるため、各都道府県のパスポートセンターの案内に従って準備しましょう。
パスポート申請に必要なその他の書類
「戸籍謄本さえあれば申請できる」と思っている方も少なくありませんが、実際にはそれだけでは不十分です。
申請書の書式や証明写真の条件、本人確認書類の種類など、ひとつでも不備があると窓口で差し戻されてしまいます。
特に写真の規格ミスや、本人確認書類の組み合わせミスはよくあるトラブルです。
ここでは、パスポート申請時に求められる“その他の必要書類”について、見落としやすいポイントをわかりやすく解説します。
一般旅券発給申請書
パスポート申請時には、最も基本となるのが「一般旅券発給申請書」です。
これは全国のパスポート窓口や一部の市区町村役場、在外公館などで入手できます。
オンライン申請では、専用サイトでの入力が必要です。
10年用と5年用で申請書が異なるため、希望する有効期間に応じた書式を選ぶ必要があります。
書き損じた場合は、無理に修正せず新しい用紙に書き直しましょう。
成人(20歳以上)であれば10年用の申請が可能です。
住民票の写し
通常、住民基本台帳ネットワークにより住所確認が可能なため、多くのケースで住民票の提出は不要です。
ただし、以下のような例外に該当する場合には、「住民票の写し」が必要になります。
- 住民基本台帳ネットワークに未登録の市区町村に住んでいる
- 申請者の氏名や住所と、本人確認書類の記載に不一致がある
- 日本国内に住所がないが、申請資格を有している場合
住民票を提出する際は、マイナンバーの記載がないものを用意してください。
写真
パスポートに貼付される写真は、国際的な基準に基づいた厳しい規格が設けられています。
サイズは縦45mm×横35mm、無帽・無背景・正面向き・無表情で、申請日前6か月以内に撮影されたものが必要です。
眼鏡のレンズ反射や前髪の影、背景の模様があるものは不適合とされることがあります。
スピード写真やスマホでの自撮りも可能ですが、規格を満たさないと再提出になるため、写真館での撮影が安心です。
本人確認書類
本人確認書類は、申請者の氏名や住所、生年月日などの正確性を確認するために必要です。
主な例としては以下のようなものがあります。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 健康保険証+学生証(2点提出)
顔写真付きの公的書類が1点あれば原則認められますが、写真なしの書類しかない場合は、複数の書類で補完する必要があります。
本人確認書類の記載内容が申請書と異なる場合は、住民票の写しなどで補足するよう求められることもあります。
同一戸籍内の家族が同時に申請する場合
家族全員が同じ戸籍に属しており、同時にパスポートを申請する場合、提出が必要な戸籍謄本は1通のみで構いません。
個別に戸籍謄本を用意する必要がないため、費用や手間を抑えられる点が大きなメリットです。
ただし、戸籍謄本に記載されている全員が同時に申請することが前提であり、後日別の家族が申請する際には再度戸籍謄本の提出が必要になります。
また、戸籍謄本は発行から6か月以内の原本であることが条件です。
人数分の申請書、顔写真、本人確認書類などは別々に用意する必要があるため、まとめて申請する際はそれぞれの必要書類を確認し、事前に準備しておきましょう。
窓口によっては代表者が一括して提出できることもあるため、詳細は各自治体のパスポートセンターに確認すると安心です。
戸籍謄本不要のパスポートオンライン申請
2023年から始まったパスポートのオンライン申請では、戸籍謄本の原本を提出する必要がなくなり、マイナポータルを活用して手続きを進めることができます。
しかし、本当にスマホだけで完結するのか、不備があった場合はどうすればよいのかといった疑問もつきものです。
ここでは、オンライン申請のメリット・デメリット、そして具体的な申請の流れをわかりやすく紹介します。
オンライン申請のメリット
パスポートのオンライン申請は、スマートフォンやパソコンから手続きが可能で、平日に窓口へ行く時間が取れない方にも大きな利便性があります。
これまで必要だった申請書の手書き作業が不要になり、入力ミスも事前に確認できるため、手続きの正確性が向上します。
また、戸籍謄本の原本提出が不要で、代わりにマイナポータルで取得できる「戸籍電子証明書提供用識別符号」を入力するだけで済む点も大きな特長です。
平日の日中に時間が取れない方にとって、柔軟な時間で申請できるのは大きなメリットです。
オンライン申請のデメリット
自宅からパスポートを申請できる、便利なオンライン申請ですが、注意すべき点もあります。
まず、マイナンバーカードが必須であることです。
署名用電子証明書が有効でなければ手続きは進みません。
また、写真のアップロードでは、サイズや背景、明るさなどが規格外と判定されることが多く、不備による差し戻しも珍しくありません。
さらに、申請自体はオンラインで完了しても、パスポートの受け取りは必ず本人が窓口に行く必要があります。
「完全非対面」の手続きではない点は見落とされがちですので注意しましょう。
オンライン申請の手順
オンライン申請は「いつでも・どこでも」申請できる利便性が魅力ですが、具体的にどのような手順を踏むのかを事前に把握しておくことが重要です。
初めての方でも迷わず進められるよう、ここでは申請から受け取りまでの流れを順を追って紹介します。
準備から申請、受け取りまでの流れは下記の通りです。
1.マイナポータルにログイン(マイナンバーカード必須)
2.必要情報を入力し、顔写真をアップロード
3.「戸籍電子証明書提供用識別符号」を取得し、入力
4.入力内容を確認・送信
5.完了後、交付予定日以降にパスポートセンターで本人が受け取り
オンライン申請後も、交付日までに本人確認が必要なため、最終的には窓口に足を運ぶ必要があります。
しかし、手続きの多くを自宅で完結できるのは大きな利点であるため、選択肢の一つとして知っておくとよいでしょう。
パスポート申請における戸籍謄本の役割や取得方法についてよくある質問
パスポート申請における戸籍謄本の役割や取得方法について、よくある質問についてご紹介します。
Q.戸籍抄本で申請できますか?
現在は戸籍抄本ではパスポートの申請はできません。
2023年3月27日以降の制度改正により、パスポート申請に必要な書類として認められているのは「戸籍謄本(全部事項証明書)」のみです。
戸籍抄本は本人1人分の情報しか記載されていないのに対し、戸籍謄本には同一戸籍内のすべての人の情報が記載されています。
これは、本人確認や国籍確認においてより正確性が求められるためです。
また、コピーやスキャンデータは無効なので、必ず原本を用意して申請しましょう。
Q.提出する戸籍謄本に有効期限はありますか?
戸籍謄本そのものには法的な有効期限はありませんが、パスポート申請に使用する場合には「発行日から6か月以内」のものを提出する必要があります。
これは、申請時点での最新の戸籍情報に基づいて審査を行うためです。
たとえ内容に変更がない場合でも、6か月を超えたものは受付不可となるため注意が必要です。
また、コピーや画像データは無効で、原本の提出が原則です。
発行日を確認し、必要に応じて再取得してから申請しましょう。
パスポート申請における戸籍謄本の役割や取得方法についてのまとめ
ここまで、パスポート申請における戸籍謄本の役割や取得方法について解説してきました。要点をまとめると以下の通りです。
- パスポート申請に必要な戸籍謄本は、発行から6か月以内の「戸籍謄本(全部事項証明書)」のみが有効
- 戸籍謄本の取得方法は窓口・代理人・郵送・コンビニと複数あり、自分に合った手段を選ぶことができる
- パスポートのオンライン申請では戸籍謄本の原本提出が不要となり、マイナポータル経由の手続きが可能
戸籍謄本の取り扱いは、制度変更により以前とは異なる点が多く、古い情報のままで申請に臨むとトラブルの原因になります。
申請の種類によって戸籍謄本が必要かどうかも異なるため、事前確認が何より大切です。
本記事が、スムーズなパスポート申請の一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。