相続税の支払い方法には、現金のほかに“物納”という仕組みも存在します。
ただし、物納を行うには一定の条件や手続きがあり、納税者にとって注意が求められます。
本記事では相続税の物納とは?について以下の点を中心にご紹介します。
- 相続税の物納とは
- 相続税の物納の条件
- 物納の手続きの流れ
相続税の物納とは?について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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相続税の物納とは?

相続税は基本的に現金で一括納付することが求められますが、納期限内に現金での支払いが難しい場合、いくつか支払い方法を選択できる場合があります。
最初の選択肢として、税務署と協議のうえ、納付期限を延ばしたり、分割納付を行ったりする方法があります。これを“延納”といいます。
しかし、延納でも支払いが困難な場合、さらに別の選択肢として“物納”が認められています。物納とは、現金の代わりに相続した不動産や、その他の財産で相続税を支払う方法です。
この制度を利用するためには、いくつかの条件が満たされる必要があり、簡単に利用できるわけではないため、注意が必要です。
相続税の物納の条件

相続税を物納で支払うためには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず、物納を申請する前に、納税者が延納や分割納付を利用しても現金での納付が困難であるという、正当な理由が存在しなければなりません。
つまり、相続税の現金納付が不可能である理由が具体的に示される必要があります。
加えて、物納に利用できる財産には定められた順序があります。
さらに2017年4月に改正が行われたことで、その順位に細かい変更が加えられました。改正前は単純に第1順位→第2順位→第3順位の順番でしたが、改正後は第1順位内での細分化が行われ、より細かく順位付けされています。
物納できる財産の順位について

物納可能な財産には優先順位が設けられております。
原則として最初に第1順位の財産から充てられます。
もし第1順位の財産がないときは、順に第2順位、第3順位の財産が物納対象となります。
具体的には以下のように順位が定められています。
第1順位
不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式など(これらは金融商品取引所に上場されている有価証券が含まれます)。また、不動産および上場株式の中には、優先度が低い『物納劣後財産』に分類されることもあります。
第2順位
非上場株式などが含まれます。このとき、非上場株式が物納劣後財産にあたる場合もあります。条件を満たしていない限り、物納に充てることはできません。
第3順位
動産が該当します。動産は、上記の順位で物納できる財産がない場合にのみ適用されます。
なお、物納対象となる不動産の評価額は実勢価格ではなく、相続税評価額が基準となります。このため、物納の際には評価額に基づいて計算が行われます。物納財産に関する順位や条件を適切に理解したうえで選定することが重要です。
物納できない財産とは

物納は現金での納税が難しい場合に利用できる方法ですが、すべての財産が物納の対象となるわけではありません。物納に充てることができない財産は「管理処分不適格財産」と呼ばれ、国が適切に管理や処分できないため、物納の対象外に分類されます。
以下のような財産が物納の対象にはなりません。
担保権の設定がされている不動産
既に担保として設定されている不動産は、物納対象になりません。
これは、担保権者(例:金融機関など)の同意を得ることが必要なためです。
権利の帰属に争いがある不動産
財産の権利が確定していない、または相続人同士で争いがある場合、物納に使うことができません。争いのある財産は、売却や処分が困難になるため、物納の対象外となります。
境界が不明な土地
土地の境界線が明確でない場合も、物納には不適格とされます。
境界が不確定な土地は、将来的なトラブルや取引において問題が生じる可能性が高いため、物納財産には選ばれません。
このような財産は、物納を申し込んでも却下されることがあるため、物納対象となる財産を慎重に選定することが求められます。
物納の手続きの流れ

相続税の物納を行う際には、段階を踏んで手続きが進められます。物納申請の流れをしっかり理解しておくことが重要です。以下に物納の基本的な手続きの流れを説明します。
1.物納申請財産の選定
まず最初に、物納対象となる財産を選定します。物納できる財産には種類や順位が決まっているため、適切な財産を選ぶことが必要です。
2.物納手続きに関する書類の作成
物納申請のためには、複数の書類を作成する必要があります。共通して必要となる書類には、物納申請書や金銭納付が困難である理由書、物納財産目録などがあります。選定した財産に基づいて、必要書類を整えます。
3.書類の提出
作成した書類は、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します。物納申請の期限は通常、被相続人の死亡日から10ヵ月以内ですが、もし期限内に提出が難しい場合は、提出期限を最大3ヶ月延長する申請が可能です。
4.書類の訂正と追加書類の提出
提出した書類に不備があった場合、税務署から指摘されます。この場合、指摘を受けた日から20日以内に訂正または追加書類を提出しなければなりません。期限内に対応できない場合は、さらに延長申請を行うこともできます。
5.現地調査
物納に不動産が含まれている場合、税務署や財務局が現地調査を行います。調査後に、物納財産の整備が必要と判断された場合、指定された期限内に整備を行わなければなりません。
6.必要な措置の実施
現地調査で整備が必要とされた場合、その指示に従い、指定された期限内に必要な措置を講じます。措置を講じる期限も延長可能ですが、期限内に完了させることが求められます。
7.物納の許可または却下
すべての手続きが完了し、申請内容が法律で定められた要件を満たしている場合、物納が許可されます。
一方、要件を満たさない場合や期限内に書類提出や必要措置が行われない場合、物納申請は却下されることになります。
物納は簡単に行えるものではなく、慎重に進めることが必要です。適切に手続きを行い、税務署と連携して進めていくことが大切です。
相続税の物納をする場合に気をつけたいこと

相続税の物納を検討する際には、いくつかの重要な注意点を把握しておく必要があります。
以下に、物納を行う際に注意すべきポイントを解説します。
1. 物納の申請期限を守る
物納を希望する場合、相続税の納付期限に間に合うように申請を済ませることが必須です。申請は、相続開始から10ヶ月以内に必要書類を税務署に提出する必要があります。この期限を過ぎると、物納を利用することができませんので、早めに手続きを進めることが大切です。
2. 物納申請が却下される可能性がある
物納を希望しても、税務署が申請を却下することがあります。税務署は提出された申請書や財産内容を厳格に審査しますので、申請が通らない場合もあります。申請が却下された場合、申告期限から却下通知までの期間には利子税が発生します。申請前に物納が通る可能性を慎重に見極め、税理士に相談することが賢明です。
3. 書類の訂正が遅れると利子税が発生
物納手続きの中で書類に訂正が必要な場合、申告期限を過ぎてしまうと利子税がかかります。申請内容に不備がないように事前に確認し、時間をかけすぎないよう注意が必要です。また、物納申請を取り下げた場合でも、期限を超えていると延滞税が発生します。
延滞税は利子税よりも高い税率が適用されるため、早急に手続きを進めることが大切です。
4. 物納が認められるケースは少ない
物納が認められる事例は限られています。実際、物納申請件数は減少傾向にあり、その理由は物納の要件が厳しいためです。
特に「延納しても金銭納付が困難である」という要件をクリアする必要があり、物納希望者にとっては難しいハードルとなっています。物納を選択する前に、相続財産をしっかり把握し、ほかの納税方法との比較を行うことが重要です。
相続税の物納とは?についてのよくある質問

相続税の物納については、初めて聞く方には少し難しい部分も多いかもしれません。どのような財産が物納できるのか、実際に物納を選ぶべきかどうか悩む方も多いでしょう。
ここでは、相続税の物納とは?についてのよくある質問について解説します。
相続税の物納のメリットは?
相続税の納付に際して、現金や預金だけでは納税額を支払うのが困難な場合や、現金で支払えたとしても相続後に手元に残る財産が不動産ばかりで管理が難しい場合があります。こうした場合に有効な選択肢が物納です。特に不動産が多く、現金や預金が少ない場合に役立ちます。
この方法を利用することで、納税額を現金で賄う必要がなくなり、相続後の生活や財産管理がスムーズに進む可能性があります。
相続税の未納はバレる?
相続税の未申告や未納を放置しておくことは、現実的にはリスクが高いといえます。税務署はさまざまな方法で相続税の未納を把握しており、無申告が発覚すると税務調査が行われ、追徴課税が課されるケースがほとんどです。実際、税務署は不動産の名義変更や預金の取引履歴など、相続に関連する重要な情報を把握しています。
これらの情報から、相続税が発生する可能性のある案件を簡単に特定できるため、無申告が見逃されることはほぼありません。
相続税の物納とは?についてのまとめ

ここまで相続税の物納とは?についてお伝えしてきました。相続税の物納とは?の要点をまとめると以下のとおりです。
- 物納とは、現金の代わりに相続した不動産やその他の財産で相続税を支払う方法のこと
- 相続税の物納の条件には、納税者が延納や分割納付を利用しても現金での納付が困難であるという、正当な理由があること。そして、物納を申請する財産は、日本国内に所在するものでなければならないという規定があることが挙げられる
- 物納の手続きは①物納申請財産の選定②物納手続きに関する書類の作成③書類の提出④書類の訂正と追加書類の提出⑤現地調査⑥必要な措置の実施⑦物納の許可または却下という流れで行われる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。