孫に財産を遺したいと考える方は多いものの、「相続税がどうかかるのか」「遺言書だけで本当に渡せるのか」といった疑問を抱くケースは少なくありません。また、準備を怠ると相続人間のトラブルや予想外の納税負担に発展することもあります。
本記事では、以下の点を中心に解説します。
- 孫に遺産を相続させるための代表的な方法
- 相続や贈与にかかる税金の種類と注意点
- 相続税の負担を軽くするための具体的な対策
孫へのスムーズかつ円満な資産承継を目指すうえで、ぜひ最後までご覧ください。
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孫に遺産を相続させる方法3選

自分の孫に遺産を引き継がせたいと考える人は少なくありません。しかし、通常の相続で孫は法定相続人に含まれないため、特別な手続きが必要です。ここでは、孫に確実に財産を渡すための代表的な3つの方法をご紹介します。
遺贈
孫に遺産を残す最もシンプルな方法の一つが「遺贈」です。これは、遺言書を作成し、孫に特定の財産を譲る意思を明確に示すものです。遺言書がなければ、原則として孫は相続の対象にはなりません。遺言書を作成する際には、「誰に」「どの財産を」「どの程度の割合で」渡すのかを具体的に記載することが重要です。また、遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」があり、包括遺贈は財産全体の一定割合を、特定遺贈は特定の財産(例えば「〇〇銀行の預金」や「〇〇市の土地」など)を指定して遺す形です。
遺言によって孫が財産を受け取った場合、相続税がかかる可能性がある点にも注意が必要です。さらに、遺留分(最低限の相続分)を侵害している場合、他の相続人から減額請求される可能性もあるため、事前の十分な検討が欠かせません。
養子縁組
孫と養子縁組することも、確実に相続権を得させる手段です。孫を正式に養子とすることで、孫は法律上の「子」となり、法定相続人に加わります。この方法を取ると、他の相続人と同様に、孫にも相続権が発生します。
ただし、養子縁組による節税効果を狙う場合には注意が必要です。相続税法では、相続税の基礎控除額や税率を計算する際、養子の人数に制限を設けています(原則として実子がいる場合、養子は1人までカウント)。この制限を超えて養子縁組する場合、余分な養子分は基礎控除の計算に含まれず、節税効果が得られないため、計画的な対応が求められます。
代襲相続
代襲相続が発生した場合、孫は自動的に法定相続人となり、亡くなった親に代わって遺産を相続します。
代襲相続は、特別な手続きを必要としないのがメリットですが、あくまで親(被相続人の子)が先に死亡していることが前提です。親が健在である限り、孫が直接代襲相続することはできません。また、代襲相続が起きた場合も、相続税の課税対象となり、適切な申告が求められます。
孫が遺産を相続するときにかかる税金

孫に遺産を渡す場合、通常の相続とは少し違った税制上の注意点が生じます。孫は法定相続人に含まれないため、税率や控除の面で不利になることがあり、事前の知識が非常に重要です。ここでは、孫が遺産を取得する際に関係する主な税金について詳しく解説します。
相続税
相続税は、被相続人の財産を受け取った際に課される税金です。孫が相続税の対象となるのは、遺言によって遺産を受け取るケースや、代襲相続によって法定相続人となる場合です。
特に注意したいのは、孫が「法定相続人でない人」にあたる場合、相続税の計算上、「2割加算」という制度が適用される点です。これは、相続税額に対して20%が上乗せされる制度であり、孫が遺言によって遺産を受け取ったようなケースでよく見られます。
なお、代襲相続の場合には孫が法定相続人となるため、この加算は適用されません。
贈与税
生前に財産を孫に渡す場合、相続ではなく贈与税の対象となります。たとえば、祖父母が生前に孫の教育資金や住宅購入資金を援助する際には、贈与税が生じるおそれがあります
ただし、「教育資金の一括贈与の非課税制度」や「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度」など、一定の条件を満たすことで贈与税がかからない特例も用意されています。これらの仕組みを取り入れれば、税負担を抑えつつ孫に財産を引き継ぐことができます。
不動産取得税・登録免許税
孫が不動産を相続または贈与により取得した場合、相続税や贈与税に加えて「不動産取得税」と「登録免許税」も考慮しなければなりません。
不動産取得税は原則として贈与に対して課され、相続による取得であれば非課税です。一方、登録免許税は不動産の名義を変更する際に発生し、相続か贈与かによって税率が変わります。相続の場合は税率が0.4%であるのに対し、贈与だと2.0%と大幅に高くなるため、どのタイミング・方法で不動産を渡すかは慎重な判断が必要です。
孫にかかる相続税の負担を軽くする方法

孫に財産を引き継がせたいと考える人は多い一方で、孫は本来の法定相続人に含まれないため、相続税が2割加算されるなど、税負担が重くなりがちです。しかし、適切な方法を選べば、その負担を軽減できます。ここでは、主に生前贈与の活用によって孫への税負担を抑える具体的な方法を解説します。
特例贈与
生前贈与の中でも、祖父母や父母から直系卑属(子や孫)への贈与に関しては「特例贈与財産」として有利な税率が適用されます。これは20歳以上(現在は18歳以上)かつ直系卑属である受贈者が、一定の範囲で贈与を受けた場合に、通常の贈与税よりも低い税率が適用される制度です。年110万円までの非課税枠もあり、計画的に贈与すれば大きな節税効果が期待できます。注意点として、孫が贈与を受けた場合、相続開始前3年以内の贈与については相続税に加算されるため、早い段階から計画的な準備が求められます。
教育資金の一括贈与
祖父母が孫に教育資金をまとめて贈与する場合、1,500万円まで贈与税が非課税となる制度があります。これは、金融機関を通じて専用口座を設け、教育目的の支出をすることで制度の適用を受けられます。学費だけでなく、塾や習い事、留学費用なども対象になるため、広い範囲で活用可能です。ただし、贈与者が死亡した時点で使い残しがあれば、その残額は相続財産とみなされるため、計画的な使用が求められます。
結婚・子育て資金の一括贈与
こちらは、結婚や出産、育児などにかかる費用を対象に、上限1,000万円までの贈与については、税金がかからない仕組みになっています。ブライダル費用や不妊治療、保育費など幅広い用途が認められており、若年層の生活を支える仕組みとして注目されています。この制度も金融機関を通じて利用する必要があり、支出内容の証明書類を提出するなど一定の手続きが必要です。また、受贈者が50歳に達するか、贈与者が亡くなると、未使用分に対して課税が行われることがあります。
住宅取得等資金の贈与
孫が住宅を取得する際に援助したい場合には、「住宅取得等資金の贈与非課税制度」が利用できます。一定の省エネ・耐震基準を満たす住宅を購入する場合、最大で1,000万円(場合により1,500万円)まで非課税となります。住宅購入は一生に一度の大きな支出であり、親世代・祖父母世代の援助は大きな助けとなります。制度の適用には、契約締結日や住宅の性能証明書などの要件があるため、事前に詳細を確認することが重要です。
孫が遺産を相続するときの注意点

孫に財産を遺したいという希望は珍しくありませんが、その実現には慎重な対応が求められます。孫は、他の相続人との関係や税制上の取り扱いが変わるため、遺言書の作成や税務対策を十分に行わなければ、トラブルや余計な税負担を招くおそれがあります。ここでは、孫が遺産を相続する際に特に気をつけたい2つのポイントを解説します。
相続トラブルが起きる可能性がある
孫に財産を渡す意向があっても、それが他の相続人の理解を得られない場合、遺産分割をめぐるトラブルに発展する可能性があります。特に、孫が遺言によって多額の遺産を受け取ることになると、子ども(孫の親)など他の法定相続人の「遺留分」を侵害することになり、不公平感から争いが生じることがあります。
たとえば、親族の中で一部の孫だけが財産をもらうような内容の遺言が残されていた場合、他の相続人が納得できず、遺言の内容をめぐって裁判に発展するケースもあります。
このような事態を防ぐには、遺言書を公正証書で作成する、あるいは事前に家族へ意思を伝えておくなど、透明性の高い手続きが重要です。また、遺言執行者をあらかじめ指定しておくと、スムーズな相続手続きにもつながります。
相続税が高くなることがある
孫が相続によって財産を取得する場合、相続税の負担が通常よりも重くなる場合があります。相続税の制度では、孫は原則として法定相続人に含まれない位置づけとなっていることから、相続税額に2割加算がされる「2割加算制度」が適用されます。
たとえば、同じ金額の財産を子と孫が相続した場合、孫の税額が高くなるケースがあります。これは、孫が「代襲相続」(親が先に亡くなっていて、その代わりに孫が相続するケース)に該当する場合を除き、通常の法定相続人とみなされないからです。
さらに、相続税の基礎控除額は「法定相続人の数」によって計算されますが、孫が養子でない限り、この人数に含まれず、控除額も少なくなる可能性があります。その結果、相続財産に対して課税される額が増え、思わぬ納税負担につながるおそれがあります。
孫が遺産を相続するときの相続税に関してよくある質問

孫に財産を残すことは、多くの祖父母にとって大きな願いですが、相続税や贈与税の取り扱いには注意点があります。ここでは、孫への財産承継に関してよく寄せられる質問をご紹介します。
孫にお金を残す方法はありますか?
孫に財産を残す方法はいくつかありますが、主な選択肢としては「遺言による遺贈」「養子縁組による法定相続人化」「生前贈与」が挙げられます。
遺言書を作成して孫に財産を「遺贈」する方法は、法定相続人でなくても確実に財産を引き継がせる手段です。ただし、他の相続人の遺留分を侵害している場合にはトラブルの元になることもあるため、遺言内容には注意が必要です。
また、孫を養子にすることで法定相続人とし、相続人としての地位を得させることも可能です。この場合、相続税の「基礎控除額」の計算上、相続人としてカウントされるため節税効果も期待できます。ただし、控除の対象となる養子の人数には上限があるため、事前の確認が必要です。
孫に生前贈与するメリットは何ですか?
生前贈与には、相続発生後のトラブルを防ぎ、財産を計画的に渡せるというメリットがあります。特に孫への贈与では、相続税よりも有利な税率で財産を移転できる可能性があるため、選択肢として十分に考慮できます。
例えば、毎年110万円までであれば、贈与税がかからない「暦年課税制度」の基礎控除を利用してコツコツと財産を移転できます。また、教育資金や住宅取得資金、結婚・子育て資金などを目的とした一括贈与には、非課税の特例制度も用意されています。
さらに、生前贈与は祖父母が元気なうちに子や孫に希望を伝える機会にもなり、財産の使い道や思いを直接共有できるという側面もあります。相続発生後に起こりがちな親族間の対立や誤解を未然に防ぐという意味でも、生前贈与は目的に応じて柔軟に活用できる手段といえるでしょう。
孫が遺産を相続するときの相続税についてのまとめ

ここまで、孫への遺産承継に関する基本的な方法や、関係する税制度、そして負担を軽くするための対策について解説しました。孫に遺産を残すためには、法律上・税務上の配慮が不可欠です。要点をまとめると、次の通りです。
- 孫に確実に財産を渡すには「遺贈」「養子縁組」「代襲相続」などの制度理解が不可欠
- 相続税・贈与税・登録免許税など、複数の税金が関係するため、制度の違いを把握しておくことが重要
- 非課税贈与や特例制度を活用すれば、孫への相続税負担を抑えられる
相続は家族間の信頼と理解のうえで成り立つものです。将来のトラブルを避けるためにも、早めに専門家へ相談しながら準備を進めていきましょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました。