株式の相続は、不動産や預金の相続より手続きが複雑で、評価方法や税金の扱いによって大きな差が生じる財産のひとつです。
また、株式には上場株式と非上場株式があり、それぞれ相続税評価の計算方法や名義変更の流れが異なります。
本記事では、株式相続の手続きについて以下の点を中心にご紹介します!
- 株を相続するときの評価額とは
- 株式を相続する際の手続き方法
- 株の相続で失敗しないための4つのポイント
株式相続の手続きについて理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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株を相続するときの評価額とは

株式を相続する際には、その株式の評価額を算定し、相続税の課税対象として含める必要があります。
この評価額は株式の種類により算出方法が大きく異なります。
上場株式の評価
上場株式は市場で取引されているため、市場価格を基準に評価されています。
具体的には、以下の4つの価格のうち最も低い価格が評価額として採用されています。
- 相続発日の終値
- 相続発月の終値の月平均
- 前月の終値の月平均
- 前々月の終値の月平均
これにより、市場の急変動による過大評価を避け、公平な評価が可能となります。
非上場株式の評価
非上場株式は市場での取引がなく、価格が明示されていないため、会社の財務状況や業績などに基づいて評価します。
主な評価方法は以下の2つです。
- 類似業種比準価額方式:配当・利益・純資産といった要素を基準に、同じ業種の上場企業のデータを参考にして評価
- 純資産価額方式:会社の資産と負債をもとに、含み益なども加味して正味財産額で評価。含み益には法人税相当額(37%)を控除
評価方法の選定は会社の規模や株主構成により異なり、非常に専門性が高いため、税理士などの専門家に相談することが重要です。
株式を相続する際の手続き方法

株式を相続する際には、評価額の算定だけでなく、さまざまな手続きを適切に進める必要があります。
上場株と非上場株で手続き先や必要書類が異なるため、それぞれの特徴を理解し、正確な対応が求められます。
名義変更する
相続した株を自身の資産として正式に引き継ぐには、名義変更が必要です。
- 上場株の場合、証券口座で管理されているか、特別口座で管理されているかによって、手続き先が異なる。通常の証券口座であれば取引証券会社に、特別口座であれば信託銀行で手続きを行う
- 名義変更には、自身の名義で証券口座を事前に開設しておく必要がある
- 非上場株では、株を発行した会社に連絡を取り、名義変更の手続きを進める
上記のような手続きが必要になります。
また、主な必要書類は以下のとおりです。
- 株式名義書換請求書兼株主票(会社指定様式)
- 株券(発行がある場合)
- 戸籍謄本等(相続関係証明)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書または共同相続人同意書
株の相続を放棄する場合
相続において株式のみを放棄することはできません。財産全体の放棄手続きが必要です。
- 株だけを避けたい場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、株以外の財産を相続するよう合意する必要がある
- 株を含むすべての財産の相続を完全に放棄する場合は、家庭裁判所で相続放棄の申述を行う
- この申述は、相続開始を知った日から3カ月以内に行う必要がある
現金化して株を分割する場合
株式は物理的に分割しにくいため、相続人間での分割が困難です。そのため、多くの場合は現金化してから分割します。
以下では、現金化して株を分割する場合のポイントについてご紹介します。
- 一度、1人の相続人が株を相続して名義変更を行い、その後株を売却する
- 売却により得た現金を相続人間で分配するのが一般的である
- 株の売却には、遺産分割協議書や遺言書により、誰が株を引き継ぐかの合意が必要
- 株の売却益には譲渡所得税が課されるため、節税のための特例(取得費加算の特例など)も検討が必要
上場株式の相続税評価

上場株式は市場価格が日々変動するため、相続時の評価方法が法律で定められています。
ここでは、初心者の方でも理解しやすいように、評価の仕組みや注意点を整理します。
上場株式の評価方法の基本
上場株式の相続税評価は、被相続人が亡くなった日の株価だけを基準とするのではなく、複数の価格を参考にして決定されます。具体的には、以下の4つの価格を算出し、その中で最も低い価格が評価額として採用されます。
- 相続発生日の最終価格
- 相続発生月の終値の平均
- 前月の終値の平均
- 前々月の終値の平均
この仕組みによって、株価が一時的に高騰していた場合でも、相続人に過度な負担がかからないように調整されています。
複数株式を保有している場合の取り扱い

同じ銘柄を複数保有している場合は、すべての株数を合計してから評価額を計算するのが原則です。証券会社に保管されている株式であれば、評価に必要な取引明細や残高証明を取得でき、スムーズに手続きを進められます。
一方で、複数の証券会社に分散して株式を保有している場合は、それぞれの証券会社から資料を集める必要があるため、早めに確認しておくことが大切です。
特殊なケースにおける注意点
株式が分割されていたり、上場廃止の手続きが進んでいる銘柄を保有している場合は、通常の評価方法が適用できないことがあります。このようなケースでは、特別な算定方法が用いられることもあり、個別の判断が必要です。
そのため、税理士や専門家に相談しながら進めることが望ましいでしょう。上場株式は評価額が大きくなりやすい資産であるため、正確な評価と手続きが欠かせません。
非上場株式の相続税評価

非上場株式の評価は、上場株式より格段に複雑です。市場での取引価格が存在しないため、会社の規模や株主の立場に応じて複数の方式から適切な方法を選ぶ必要があります。
ここでは、非上場株式の評価方法について詳しく解説します。
純資産価額方式
純資産価額方式は、会社が解散した場合に株主に分配されると想定される資産価値に基づいて評価する方法です。特に同族株主などがその非上場株式を相続する場合に適用されます。
具体的には、会社が保有する資産の評価額を算出し、帳簿価額との差額から法人税相当額を差し引いたうえで1株あたりの価額を算出します。資産構成が評価の中心となるため、財務体質が強い会社ほど評価額は高くなります。
類似業種比準方式
類似業種比準方式は、評価対象会社と業種や事業規模が類似する上場企業の株価を基準に評価する方法です。配当金・利益・純資産といった財務指標を用いて、業種ごとの平均データとの比準により1株あたりの価額を算出します。
会社規模により調整率が設定され、大会社では0.7、中会社で0.6、小会社で0.5が適用されます。企業の業績がいい場合は高評価となる傾向がありますが、業種の選定や比準要素の算出には専門性が求められます。
配当還元方式
配当還元方式は、会社の経営に関与しない少数株主が非上場株式を相続または贈与された場合に採用される方式です。過去2期の配当金額の平均を基に年額配当を算出し、それに10を乗じて評価額とします。
配当がない場合や極端に低い場合は、最低限の配当額(2円50銭)を基準に計算されます。この方式は他の評価方法より評価額が低くなる傾向があるため、少数株主の相続における税負担を軽減する役割があります。
株を相続した際の4つのポイント

株式を相続する際には、評価や名義変更に加え、税務上の申告や特例制度の活用など、さまざまな手続きを正しく行う必要があります。
ここでは、株式を相続したときに特に注意すべき4つの重要なポイントについて解説します。
1.相続前に売却益がある場合等は“準確定申告”が必要
被相続人が亡くなる前に株式を売却し、譲渡益を得ていた場合は、相続人が準確定申告する必要があります。これは、被相続人の死亡日をもってその年の所得が確定するため、相続人がその分の所得税を申告・納税するものです。
申告期限は相続開始から4か月以内とされているため、早めの対応が求められます。また、被相続人が1億円以上の有価証券を保有していた場合や、相続人の中に海外在住者がいる場合には、国外転出時課税制度により追加の申告義務が生じるケースもあります。
2.相続後に売却益が出ると“譲渡所得税”が発生
相続した株式を相続人が売却した場合、売却益が出ると譲渡所得税が課されます。ただし、相続発生から3年10か月以内に売却した場合には、取得費加算の特例を利用することで、納めた相続税の一部を取得費に加算することができ、譲渡所得税を軽減することが可能です。
相続税と譲渡所得税の二重課税を防ぐためにも、この特例の適用条件と申請方法について正確に把握しておくことが重要です。
3.株を現金化したい場合は名義変更が必要
相続した株式を売却して現金化するには、名義変更が必要です。遺言書がある場合はその内容に従って、遺言がない場合は相続人全員による遺産分割協議の結果に基づいて、証券会社や発行会社に名義変更手続きを申請します。
必要書類は、遺産分割協議書、戸籍謄本、印鑑証明書などが一般的です。名義変更が完了していない状態では、売却はもちろん配当の受け取りもできませんので、速やかに手続きを進めましょう。
4.非上場株で使える“みなし配当課税の特例”
非上場株式をその発行会社に売却した場合、売却代金は通常“配当”と見なされて総合課税(最大55%)の対象となりますが、相続により取得した株式については、みなし配当課税の特例が適用される場合があります。
この特例を活用すれば、相続発生から3年10か月以内に発行会社へ売却すれば、税率を20%に抑えることができ、大きな節税効果が得られます。非上場株の処分を検討する場合には、この特例を見逃さず、早めに専門家に相談することが望ましいでしょう。
株の相続で損しないためのポイント

株式を相続した場合、相続税だけでなく、その後の売却による所得税の負担も考慮する必要があります。特に、株価の変動や相続税の申告タイミングによって、思わぬ税負担が発生することもあるため、適切な対応が重要です。
ここでは、相続後に株式を売却する際に注意すべき所得税と、税負担を軽減するための取得費加算の特例について解説します。
株式売却時の所得税
相続によって取得した株式を後に売却した場合、売却益に対して譲渡所得税が課税されます。この譲渡所得は、”売却価格−取得費−譲渡費用”で計算されます。
相続人が株を相続した場合、取得費は被相続人が当初購入した価格となりますが、取得時期が古いほどこの価格が低くなるため、結果的に売却益が大きくなり、課税額も増える可能性があります。
取得費加算の特例
取得費加算の特例は、相続税の負担を考慮して、相続税の一部を株式の取得費に加算できる制度です。この特例を活用することで、譲渡所得を圧縮し、課税対象額を減らすことが可能になります。
この特例を適用するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 相続開始から3年10か月以内に株式を売却すること
- 相続税を実際に納付していること
- 対象財産が相続税の課税対象であること
取得費加算の特例を適用すると、相続税の一部を売却時の取得費に含められるため、売却益が減少し、その分譲渡所得税も軽減されます。これにより、相続と売却の両面での税負担をバランスよく抑えることが可能となります。
株の相続における評価額に関するよくある質問

ここでは、株の相続における評価額に関するよくある質問について紹介します。
株式と不動産どちらが相続に向いている?
相続財産において、株式と不動産はそれぞれ特性が異なり、一概にどちらが有利とは言えませんが、相続税の圧縮効果や分割のしやすさといった観点から検討することが重要です。
まず、不動産は相続税評価額が時価よりも低くなる傾向があり、相続税を抑える上で有利とされています。たとえば、土地は通常、時価の約8割程度の”路線価”または”倍率方式”で評価され、建物については固定資産税評価額が用いられ、これも時価の7割前後とされています。
さらに、亡くなった人が居住していた住宅や事業用の土地には小規模宅地等の特例が適用され、一定の要件を満たすことで土地の評価額を最大80%減額できます。
一方で、株式の相続税評価額は基本的に時価が用いられるため、不動産より評価額が高くなりやすく、相続税負担も重くなる傾向があります。特に非上場株式の場合、評価方法が複雑で、会社の財務状況や業種・規模によって評価額が大きく異なるため、適切な専門的判断が必要です。
また、非上場株式は流動性が低く、現金化が困難なことも相続人にとっての問題となります。
ただし、不動産には分割しにくいというデメリットがあり、相続人間での共有が原因で争いが生じることもあります。株式であれば、証券会社を通じてスムーズに分割・換金が可能であり、遺産分割の柔軟性は高いといえます。
結論として、相続においては不動産の方が税務上のメリットは大きいものの、分割のしやすさや管理の負担なども加味して、家族の状況に応じた資産構成を考えることが大切です。相続に備えて資産の一部を不動産へシフトする場合でも、遺産分割の方針を事前に家族で話し合っておくことが、円滑な相続の鍵となります。
株を相続したら確定申告は必要?
株を相続しただけでは、原則として確定申告は必要ありません。相続した株式は、相続税の対象にはなるものの、その時点で所得税や住民税の課税対象にはならないためです。しかし、相続後に株を売却した場合には、一定の条件下で確定申告が必要となるケースがあります。
相続後に株式を売却した場合
相続した株式を売却して利益が出た場合、その売却益に対して20.315%の所得税および住民税(いわゆる譲渡所得税)が課税されます。具体的には次のような場合に確定申告が必要です。
- 売却益が年間20万円を超えた場合(給与所得者など)
- 複数の証券口座で利益と損失が出ていて相殺したい場合
- 取得費加算の特例を適用したい場合(相続税の支払いがあった場合)
確定申告が不要なケース
以下の条件を満たす場合、売却しても確定申告は不要です。
- 源泉徴収ありの特定口座を利用しており、証券会社が自動で納税を代行している
- NISA口座で売却した場合(一定の投資枠内での利益は非課税)
- 年間の譲渡益が20万円以下(給与所得者の場合)
相続時の取得費加算の特例
相続開始日から3年10ヶ月以内に株を売却した場合には、支払った相続税の一部を取得費として加算できる取得費加算の特例があります。これにより課税所得が減り、税負担を軽減できるため、該当する場合は確定申告を行って特例を活用することが推奨されます。
株の評価額の計算方法は?
株を相続する際、相続税を計算するためには株の評価額を算出する必要があります。この評価額は、上場株式と非上場株式で方法が大きく異なります。
上場株式の場合は、次の4つのうち最も低い株価を用いて評価します。
- 相続開始日の終値
- 相続開始月の毎日の終値平均
- 相続開始前月の終値平均
- 相続開始前々月の終値平均
評価額は“1株あたりの株価×保有株数”で算出されます。株価はYahoo!ファイナンスなどの金融情報サイトで確認可能です。
非上場株式の場合は、会社の規模や株主の属性に応じて以下の3つの評価方式から選択されます。
- 純資産価額方式:会社の純資産を基に算出。中小企業の同族株主などに適用されやすい。
- 類似業種比準方式:類似する上場企業の株価や財務指標をもとに算出。大企業や一定規模以上の企業に多い。
- 配当還元方式:配当実績に基づいて評価。主に少数株主が対象。
相続においては評価方法を誤ると、相続税額に大きな差が出るため、正確な算定と専門家のサポートが重要です。特に非上場株の評価は複雑であり、税理士などの専門家に相談することが推奨されます。
株の相続における評価額についてのまとめ

ここまで、株の相続における評価額についてお伝えしてきました。
株の相続における評価額の要点をまとめると以下のとおりです。
- 株を相続する際の評価額は、上場株は市場価格、非上場株は財務状況に基づく専門的な算定方法で決まる
- 株式を相続する際は、上場・非上場に応じた名義変更と必要書類の準備が必要
- 株を相続する際は、準確定申告・譲渡所得税・名義変更・特例制度の活用という4つの重要ポイントを押さえることが大切である
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。