相続人調査とは?戸籍収集の手順と相続人調査が難しい理由も解説

相続手続きをスムーズに進めるうえで、まず欠かせないのが「相続人調査」です。誰が相続人にあたるのかを正確に把握しておかないと、遺産分割協議が無効になったり、思わぬトラブルが発生したりする可能性があります。

本記事では、相続人調査について以下の点を中心にご紹介します!

 

  • 相続人調査の基本
  • 相続人調査が難しい理由
  • 相続人調査の流れ

 

相続人調査について理解するためにもご参考いただけると幸いです。

ぜひ最後までお読みください。

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相続人調査とは

相続手続きを進めるうえで最初に欠かせないのが「相続人調査」です。誰が相続人にあたるのかを正確に確認しておかないと、後から新たな相続人が判明して協議が無効になったり、トラブルが発生するおそれがあります。

ここでは、相続人調査の目的や重要性についてわかりやすく解説します。

相続人調査の概要

相続人調査とは、被相続人(亡くなった方)の戸籍(改製原戸籍や除籍謄本など)を取り寄せて、法定相続人を特定するための手続きです。

相続税の申告、遺産分割協議、相続放棄など、すべての相続手続きにおいて「誰が相続権を持つのか」を正確に把握していなければ、後から新たな相続人が判明したり、協議自体が無効になるリスクがあります。

 

実際の相続の場面では、被相続人に予期しない婚姻歴や離婚歴があったり、認知した子どもが存在していたりすることも珍しくなく、「知らない相続人がいた」というケースも多く見られます。

こうした確認漏れがあると、遺産分割協議をやり直さざるを得ず、トラブルに発展する危険が高まります。

 

そのため相続人調査は、単に戸籍を収集する作業にとどまらず、法定相続分の算定や相続放棄を進める上で必要不可欠な工程です。相続をスムーズに進めるためにも、専門家に依頼して調査を行えば、時間や労力を大きく節約できるでしょう。

法定相続人の範囲を確認

①法定相続人の範囲と順位

相続人調査を進めるにあたって、まず理解しておきたいのが民法で定められた法定相続人の範囲と順位です。順位は以下のとおりです。

  • 配偶者:常に相続人となり、他の順位の相続人と共存します。
  • 第1順位:子(実子・養子・認知された子を含む)
  • 第2順位:直系尊属(父母や祖父母など)
  • 第3順位:兄弟姉妹

被相続人に子がいる場合は、第2順位・第3順位の相続権は発生しません。ただし、子がいなければ直系尊属が、さらに直系尊属もいなければ兄弟姉妹が相続人となります。また、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その子である甥や姪が代襲相続するため、調査対象が広がるケースも少なくありません。

②代襲相続や数次相続に注意

相続人が被相続人より先に亡くなっている場合には、その子(甥や姪)が相続する「代襲相続」が発生します。また、相続が続けて起こる「数次相続」(例:父が亡くなった後、遺産分割が終わらないうちに母も死亡するケース)では、より多くの戸籍を調べる必要があります。このような場合、相続人調査は複雑になりやすく、戸籍収集の範囲も広がりがちです。

③戸籍はどこまで集める?

相続人調査では、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を連続して揃える必要があります。具体的には、出生時に最初に記載された戸籍から、死亡時の最後の戸籍までを漏れなく収集することが基本です。古い戸籍(改製原戸籍や除籍謄本など)を入手する場合は、本籍地の役所や郵送での請求が必要になります。転籍を繰り返していると複数の役所に問い合わせることになり、誤りや漏れが起きやすい点にも注意が必要です。

相続人調査をする理由

遺産相続を進める際には、まず相続人を正確に確定させることが重要です。

手続きをすべて終えた後で相続人の漏れが発覚すると、遺産分割協議自体が無効となってしまいます。さらに、遺言執行者がいる場合には財産目録を相続人全員に交付しなければならないため、相続人の確定は必須です。

「相続人は家族内で把握できているはず」と思われがちですが、実際には以下のようなケースが少なくありません。

  • 愛人との間に生まれた子が認知されていた
  • 離婚した元配偶者との間に子がいた
  • 知らない養子が存在していた

たとえ被相続人が家族に隠していたとしても、これらはすべて戸籍に記載されています。戸籍を確認することで、真の相続人を漏れなく把握できるのです。

また、すでに死亡している相続人がいる場合には、その子などが代襲相続人となるため、死亡した相続人の戸籍についても調査する必要があります。

相続人調査が難しい理由

相続人調査は「戸籍を集めるだけ」と思われがちですが、実際には予想以上に複雑で時間のかかる作業です。被相続人の出生から死亡までの戸籍を一つ残らず揃える必要があるうえ、改製原戸籍や除籍謄本など古い戸籍を取り寄せることも多く、転籍や婚姻歴があると複数の役所を回らなければなりません。さらに、認知された子や養子、代襲相続人などが判明するケースもあり、見落としがトラブルの原因となるため、慎重な対応が求められます。

取得する戸籍の数が多い

相続人調査が大変な理由の一つは、必要となる戸籍謄本の数が多いことです。

もし全ての戸籍が同じ役所で取得できればそれほど手間はかかりませんが、実際には複数の役所から取り寄せるケースがほとんどです。郵送での請求も可能ですが、その分日数や郵送料が余分にかかってしまいます。

さらに、古い戸籍になると市町村合併などでどの役所が保管しているのか分からないことも珍しくありません。相続人が外国籍であったり海外在住の場合には、手続きがさらに複雑になります。

このように、集める戸籍の数が増えるほど調査には時間と労力が必要となり、調査を行う人への負担が大きくなるのです。

戸籍の読み方が難しい

相続人調査が難航する理由のひとつに、戸籍の読み取りの難しさがあります。

 

戸籍謄本は作成された年代や種類によって形式が大きく異なるため、普段見慣れていない人にとっては正確に理解するのが容易ではありません。特に法改正前の「改製原戸籍」は、記載方法や内容が現行のものと異なり、さらに古い戸籍になると手書きの旧字体で記録されているため、専門知識のない人には解読が非常に困難です。

 

そのため、戸籍を読み解くには一定の知識や経験が不可欠で、不慣れな人が行うと調査の抜け漏れが生じるリスクがあります。相続人を確定させるためには「出生から死亡までの連続した戸籍」を揃える必要がありますが、この連続性を確認し損ねるケースも少なくありません。例えば、「必要な戸籍を全て取得したつもりだったが、改製原戸籍が一通不足していた」といった事態が起きると、相続人を見落とす危険があるのです。

相続人調査の手順

相続手続きを円滑に進めるためには、まず「誰が相続人なのか」を正確に把握することが欠かせません。そのために行うのが相続人調査です。相続人調査では、被相続人の戸籍を出生から死亡までさかのぼって取得し、相続人の範囲を確定していきます。ここでは、相続人調査を行う際の基本的な流れや注意点について解説します。

1.相続人の順位と範囲とは

相続人を調査する際は、まず「相続人の範囲と順位」を理解することが大切です。

誰が相続人になるのかを把握していなければ、どの人の戸籍を集めるべきか判断できません。専門家に依頼する場合でも、調査を始める前に基本的なルールを知っておくと安心です。

配偶者は常に相続人となります(民法890条)。
配偶者以外では、第1順位として子どもが相続人になります(民法887条)。子がすでに亡くなっている場合、その直系卑属が相続する「代襲相続」が発生します。

第1順位がいないときは、第2順位である親が相続人となり(民法889条)、両親が亡くなっている場合はさらに近い直系尊属が相続します。

さらに、第1・2順位が存在しない場合には、第3順位である兄弟姉妹が相続人となり、兄弟姉妹がすでに亡くなっているときは甥姪が代襲相続します。ただし、兄弟姉妹の場合の代襲相続は一代限りであり、甥姪が亡くなっていたとしても、その子どもたちが相続人になることはありません。

2-1.亡くなった方の出生から死亡まで全ての戸籍謄本を取得

次のステップは、亡くなった方の「出生から死亡までの一連の戸籍謄本」をそろえることです。

 

なぜすべての戸籍を取り寄せる必要があるかというと、相続人の第1順位である子どもの有無や人数を正確に確定しなければならないからです。

 

戸籍謄本には、被相続人の子どもの名前が記載されています。ただし、転籍・結婚・離婚・改製などで新しい戸籍が作られると、除籍された子どもの情報は次の戸籍に移されません。

 

そのため、出生から死亡までの連続した戸籍を欠かさず集めなければ、子どもが存在するのか、何人いるのかを確認することができないのです。

 

戸籍の数は平均で3~5通程度ですが、人によっては10通以上必要になるケースもあります。

2-2.亡くなった方の死亡時の戸籍謄本を取得

亡くなった方の戸籍謄本を取得する方法は以下の通りです。
※詳細は自治体によって異なる場合があるため、各役所のホームページなどで確認してください。

取得できる人

  • 配偶者
  • 直系の血族
  • それ以外の方は委任状が必要

受付窓口

  • 亡くなった方の最後の本籍地の役所

申請方法

  • 役所窓口
  • 郵送

必要書類

  • 戸籍交付申請書(窓口またはホームページで入手可能)
  • 申請者の戸籍謄本原本(相続関係を証明するため)
  • 申請者の印鑑原本
  • 申請者の本人確認書類原本
  • 《郵送の場合》返信用封筒(切手貼付必須)
  • 《郵送の場合》手数料分の定額小為替(郵便局で入手可能)
    ※郵送の場合、戸籍謄本と本人確認書類はコピーでも可

手数料

  • 戸籍謄本:1通 450円
  • 除籍謄本:1通 750円

発行までの期間

  • 窓口:即日
  • 郵送:数週間

取得のポイント

  • 「相続で出生から死亡までの戸籍謄本が必要」と伝えると、その役所にある全ての戸籍謄本を発行してもらえます。
  • 亡くなった方の最後の本籍地が分からない場合は、最後の住所地の役所から住民票の除票を取得すると、本籍地を確認できます。

2-3.戸籍謄本の読み解き方

次に、取得した戸籍謄本の内容を確認していきましょう。読み解く際のポイントは、以下の2つです。

① ひとつ前の戸籍情報を確認する

  • その戸籍が作られた日付や作成理由を「戸籍事項」の欄でチェックします。
  • 次に「従前の記録(従前戸籍)」の項目を探します。ここには前の本籍地が記載されているため、次はその本籍地の役所で戸籍謄本を取得します。

② 相続人となる人物を特定する

  • 「身分事項」や「戸籍に記載されている者」の欄を確認し、相続人予定の人物を特定します。

この手順の通りに進めることで、戸籍謄本から確実に相続人を見つけ出すことができます。

3-1.相続人の戸籍謄本を取得

続いて、相続人の戸籍謄本を取得します。

2-1~3で相続人を特定できる場合もありますが、相続関係がはっきりしない場合は、さらに戸籍を集める必要があります。

どの場合でも、今後の相続手続きで必須となるため、ここで戸籍謄本を揃えておくことが重要です。。

3-2.必要な相続人の戸籍謄本の確認

必要な相続人の戸籍謄本は、以下のA~Dに該当するものすべてを集める必要があります。

A【共通:常に必要】

  • 相続人全員の現在の戸籍謄本

B【先に亡くなった子どもや代襲相続人がいる場合】

  • 亡くなった子どもや代襲相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本

C【亡くなった方に存命の子どもや代襲相続人がいない場合】

  • 片方の親が先に亡くなっている場合:亡くなった親の死亡が記載された戸籍謄本
  • 両親が先に亡くなっており、祖父母が存命の場合:両親と亡くなった祖父母の戸籍謄本

D【亡くなった方に存命の子どもや直系尊属がいない場合】

  • 両親の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 直系尊属が死亡した記載のある戸籍謄本(120歳を超える場合は不要)
  • 亡くなった兄弟姉妹がいる場合:その出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 代襲相続人である甥姪が先に亡くなっている場合:死亡が記載された戸籍謄本

3-3.相続人の戸籍謄本を取得

相続人の戸籍謄本は、相続人本人やその家族と協力して取得を試みるのが最も効率的です。協力を得ながら戸籍収集を進めましょう。

連絡が難しい場合は、以下の手順で進めることをおすすめします。

  1. 現在の戸籍謄本・死亡記載のある戸籍謄本
    「亡くなった方の死亡が記載されている戸籍謄本」に既に記載されている相続人については、改めて取得する必要はありません。それ以外の相続人は、亡くなった方の戸籍から本籍地をたどり、現住所までの戸籍謄本を取得します。
  2. 出生から死亡までの連続した戸籍謄本
    相続人の戸籍をもとに、本籍地をたどりながら必要な戸籍を全て取得します。具体的な方法については、「2-1.亡くなった方の出生から死亡まで全ての戸籍謄本を取得」を参考にしてください。

 

相続人調査を行わないリスクとトラブル事例

相続人調査を怠ると、後々さまざまなトラブルや法的リスクが発生する可能性があります。見落とされた相続人が後から現れると、遺産分割協議のやり直しや財産の返還を求められることになり、円滑に進めたはずの手続きが混乱してしまいます。ここでは、相続人調査を行わなかった場合に起こり得るリスクや、実際のトラブル事例について詳しく解説します。

遺産分割協議が無効になる恐れがある

相続人の一人でも欠けた状態で遺産分割協議を行った場合、原則としてその協議は無効となります。せっかく合意した内容も、後から「実は他に相続人がいた」と判明すると、協議を最初からやり直さなければならなくなります。

「新たな相続人」が登場してやり直しになる恐れがある

被相続人に認知された子どもや、前の結婚で生まれた子どもが存在していたことが後から判明するケースは意外に多くあります。その結果、相続分の計算をやり直す必要が生じ、きょうだい間でのトラブルに発展することも少なくありません。

相続放棄・名義変更でも必要な調査

相続放棄を考えている場合でも、全ての法定相続人の意思を確認する必要があります。誰が放棄し、誰が遺産を受け継ぐのかを正確に把握しておくことが重要です。

また、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の払い戻し手続きでは、金融機関や法務局に提出する書類として相続人全員の確認が求められるため、相続人調査が不十分だと手続きを進めることができません。

相続人調査に関してよくある質問

相続人調査に関してよくある質問についてご紹介します。

相続人調査は自分でもできますか?

可能です。

相続関係が単純で、被相続人の転籍が少ない場合などは、比較的スムーズに調査を終えられるでしょう。しかし、相続人調査は非常に手間がかかる場合もあります。そのため、状況に応じて専門家への依頼を検討することもおすすめです。

相続人調査の費用はいくらですか?

相続人調査の費用は、調査方法や依頼先によって大きく変わります。主に自分で行う場合と専門家に依頼する場合があります。

1. 自分で行う場合

  • 戸籍謄本の取得費用:1通あたり450円(戸籍謄本)、除籍謄本は750円程度
  • 郵送手数料:役所によるが、数百円〜数千円程度
  • 合計目安:数千円〜1万円程度(相続人が多い場合や古い戸籍が多い場合は増加)

※自分で行う場合は、手数料だけで済みますが、戸籍収集や確認作業に時間と手間がかかります。

2. 専門家に依頼する場合(司法書士・行政書士・弁護士など)

  • 費用の目安:5〜10万円程度(相続人の人数や戸籍の取得数で変動)
  • 含まれる作業:戸籍の収集、相続人の特定、戸籍の確認、必要書類の作成サポート
  • メリット:手間を大幅に省け、誤りや漏れを防止できる

ポイント

  • 相続人が多い、代襲相続がある、転籍や離婚歴が複雑な場合は、自力で調査するより専門家に依頼した方が安全です。
  • 費用は戸籍の数や相続人の複雑さに応じて増減します。

相続人調査についてのまとめ

ここまで相続人調査についてお伝えしてきました。

相続人調査の要点をまとめると以下の通りです。

 

  • 相続人調査の重要性:相続人調査とは、戸籍を取り寄せて被相続人の法定相続人を特定する手続きで、遺産分割協議や相続税申告、相続放棄など全ての相続手続きにおいて必要不可欠。
  • 相続人調査が難しい理由:取得必要な戸籍が多く、複数の役所から取り寄せる必要がある。また、古い戸籍(改製原戸籍や除籍謄本)は手書き・旧字体で書かれており、読み解きが難しい
  • 相続人調査の手順と方法:法定相続人の範囲と順位を確認する(配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹など)。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取得し、相続人を特定する。

 

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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