近年、高齢化社会の進展や核家族化の影響により、遺産相続に関する問題はますます複雑化しています。
特に、親子間の相続トラブルは深刻化しており、円滑な遺産分割を妨げる大きな障害となっています。
ここでは、遺産相続における親子間のトラブルについて解説します。
- 相続でよくある「親子の相続トラブル」について
- 絶縁状態の親・子がいる場合の相続について
- 親子間の不動産トラブルについて
遺産相続での親子トラブルについてご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
遺産相続は、亡くなった方の財産を法定の順序に従って相続人に移転する法律上の制度です。 しかし、この過程は単純なものではありません。 相続人は、相続が開始された時点から様々な手続きを行い、それぞれに厳密な期限が設けられています。 […]
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相続でよくある「親子の相続トラブル」について
近年、高齢化社会の進展や核家族化の影響により、親子間の相続トラブルが増加しています。
円滑な遺産分割を実現するためには、トラブルの原因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
- 売却・賃貸をめぐるトラブル: 共有名義の不動産を売却したり賃貸に出したりする場合、共有者全員の合意が必要です。
しかし、意見が対立すると、話し合いがまとまらず、トラブルに発展することがあります。 - 居住権: 特に、実家が共有名義の場合、親が住み続けたい、子供は売却したいなど、居住権をめぐる争いが起こりやすいです。
- 遺言書の有無: 遺言書があれば、被相続人の意思に基づいて遺産分割を行うことができます。
しかし、遺言書がない場合は、法定相続分に基づいて遺産分割を行うため、不満を持つ相続人が出てくる可能性があります。 - 認知症の親の財産管理: 認知症の親がいる場合、その財産を誰がどのように管理するかで、トラブルが起こることがあります。
- 介護費用: 親の介護費用を誰が負担するかで、兄弟姉妹間で争いが起こることがあります。
- 生前贈与の不公平感: 生前贈与を受けた子とそうでない子で、遺産の分量が不公平だと感じる場合、トラブルに発展することがあります。
- 家族関係の悪化: 相続をきっかけに、もともと良好だった家族関係が悪化してしまうことがあります。
親が亡くなった際の相続については、こちらの記事もお読みください。
親が亡くなった際の相続について気になる方は多いのではないのでしょうか。 本記事では、親の遺産の相続について以下の点を中心にご紹介します! 法定相続人とは 親が亡くなった際かかる税金について 親の相続で事前にやっておく[…]
相続で注意しないといけない点
遺産相続は、被相続人の財産を相続人が引き継ぐ手続きですが、同時に様々な法律問題や人間関係の問題も絡み合い、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
円滑な相続を実現するためには、事前に注意すべき点を押さえておくことが重要です。
遺言書の有無
遺産相続を考える上でまず確認すべき点は、遺言書の有無です。
遺言書があれば、その内容に従って遺産が分配されます。
遺言書がない場合、または遺言書で指定された財産のみの場合は、法定相続人ごとに決められた割合で残りの財産が分配されます。
遺言書を作成することで、自分の意思を明確に伝え、相続人間での争いを防ぐことができます。
また、遺言書がないと、相続人が話し合いによって遺産分割を行う必要があり、トラブルに発展する可能性もあります。
円滑な遺産相続を実現するためには、遺言書を作成しておくことが重要です。
相続順位と法定相続分
相続順位と法定相続分は民法で定められています。
相続順位は以下の通りです。
- 配偶者と直系卑属(子、孫など)およびその直系卑属(代襲相続人)
- 父母と直系尊属
- 兄弟姉妹とその直系卑属
法定相続分は、相続人の数や生存する配偶者の有無によって異なります。
以下に、一般的なケースでの法定相続分を示します。
- 配偶者と子がいる場合: 配偶者が2/3、子が1/3を相続します。
- 配偶者と父母がいる場合: 配偶者が3/2、父母が1/2を相続します。
- 配偶者と兄弟姉妹がいる場合: 配偶者が4/3、兄弟姉妹が1/3を相続します。
相続は複雑な問題であり、個々の状況によって異なる場合があります。
詳細は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
代襲相続
代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、相続人が被相続人よりも先に死亡した場合に、その相続人の子供がその相続人の分の遺産を相続する権利のことです。
例えば、被相続人に子供が複数人おり、そのうち一人が被相続人よりも先に死亡した場合、その死亡した子供の子供がその親の分の遺産を相続することになります。
代襲相続は、民法で定められた相続順位に基づいて行われます。
相続順位は、配偶者、子、父母、兄弟姉妹の順です。
代襲相続が発生するケースとしては、以下のようなものがあります。
- 被相続人の子が先に死亡している場合
- 被相続人の子が複数人おり、そのうち一人が先に死亡し、その子に子がいる場合
代襲相続は、相続手続きが複雑になる可能性があるため、専門家に相談することをおすすめします。
養子縁組の有無
相続人の権利を判断する上で、養子縁組の有無は重要な要素の一つです。
再婚した夫婦の場合、連れ子に相続権が認められるかどうかは、養子縁組の有無によって決まります。
養子縁組が成立していれば、連れ子は継子として亡くなった配偶者から相続することができます。
しかし、養子縁組がなければ、相続権は法定配偶者にのみ認められます。
相続放棄・相続欠格・相続廃除
遺産相続において、相続人は必ずしも遺産を受け取る義務を負うわけではありません。
一定の条件を満たせば、相続を放棄したり、相続権を失ったりすることが可能です。
相続放棄
相続放棄とは、被相続人の遺産を一切受け取らないことを選択する制度です。
被相続人の借金などの負債も引き継ぐ必要はありません。
相続放棄は、家庭裁判所に手続きを行う必要があります。相続開始後3ヶ月以内に行う必要がありますが、一定の事由がある場合は、この期間を過ぎてからも相続放棄できる場合があります。
相続欠格
相続欠格とは、法律で定められた一定の重大な行為をした者に対して、当然に相続権を失わせる制度です。
被相続人を殺害したり、遺言書を偽造したりした場合などが該当します。
相続欠格は、家庭裁判所の審判を必要とせず、自動的に相続権を失います。
相続廃除
相続廃除とは、被相続人自身が、一定の事由がある相続人に対して、家庭裁判所に申し立てを行い、その相続権を剥奪する制度です。
虐待や著しい非行などがあった場合などに該当します。
相続廃除は、被相続人の意思表示が必要であり、遺言書でも行うことができます。
相続放棄、相続欠格、相続廃除は、いずれも相続に関わる重要な制度です。
これらの制度について理解しておくことで、円滑な遺産相続を実現することができます。
「寄与分」「特別受益」「遺留分」に注意
相続において、被相続人の財産を円滑に分配するためには、「寄与分」「特別受益」「遺留分」という3つの重要な概念を理解しておくことが重要です。
これらの概念は、一見複雑で分かりにくいと感じるかもしれませんが、それぞれ異なる役割を担っており、相続手続きに大きな影響を与える可能性があります。
寄与分とは
寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人が、その貢献度に応じて相続財産から一定額を分配される制度です。
具体的には、以下のような場合が寄与分に該当する可能性があります。
- 長期間にわたって介護を行った
- 家業を手伝った
- 金銭を贈与した
- 借金の返済を行った
寄与分を請求するには、家庭裁判所に寄与分請求の申立てを行う必要があります。
寄与分が認められるかどうかは、裁判所の判断によって決まります。
寄与分請求のポイント
- 貢献内容を具体的に証明できる資料を用意する
- 弁護士などの専門家に相談する
寄与分が認められれば、貢献度に応じてより多くの財産を相続することができます。
相続に関する問題は複雑な場合が多いため、専門家に相談することをおすすめします。
特別受益とは
特別受益とは、相続人が被相続人から生前に贈与を受けたり、遺贈を受けたりすることで得る特別な利益のことです。
遺産分割は通常、法定相続分に基づいて行われますが、一部の相続人が高額な利益を受けている場合、そのまま分割すると不公平が生じます。
これを防ぐため、民法では特別受益を受けている相続人の相続分を減らす規定があります。
ただし、特別受益の制度は相続人間の不公平を解消するためのものであり、強制力はありません。
相続人同士が合意すれば特別受益を考慮しないことも可能です。
また、被相続人が遺言で特別受益を相続財産に加えないよう指示することもできます(特別受益の持ち戻しの免除)。
特別受益がある場合の相続分の計算方法は以下の通りです。
特別受益がある相続人の相続分:〔(相続財産+特別受益)×法定相続分〕-特別受益 特別受益がない相続人の相続分:(相続財産+特別受益)×法定相続分
遺留分とは
遺留分とは、特定の相続人が遺産の最低限の割合を請求できる権利のことです。
これは民法で保障されています。
民法の基本原則として、「財産所有者は生前・死後を問わず、自分の財産を自由に処分できる」というものがありますが、これだけでは、被相続人の遺言によって同居していた家族が住む場所を失ったり、生活が困難になったりする可能性があります。
このリスクを防ぐため、配偶者や第一順位の相続人(子や孫)、第二順位の相続人(父母・祖父母)には遺留分が認められています。
第三順位の兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合も民法で定められています。
遺言書が相続人の遺留分を侵害する内容であった場合、相続人は遺産を受け取った受遺者に対して遺留分侵害額請求を行うことができます。
ただし、この請求権を行使できる期間には期限があるため、注意が必要です。
遺留分については、こちらの記事もお読みください。
遺留分とは、故人が遺した財産の一部を、法律により特定の相続人に保証する制度を指します。 遺産分割や相続に関わる方々にとって、遺留分の理解は必須です。 本記事では、遺留分について以下の点を中心にご紹介します! 遺留分とは […]
絶縁状態の親・子がいる場合の相続について
親子の縁が切れていたり、長い間連絡を取っていなかったりする場合でも、相続においては親子関係が解消されるわけではありません。
絶縁状態の親・子がいる場合の相続は、様々な問題や悩みが生じやすいのが特徴です。
遺言書を作成して第三者に遺贈する
遺言書を作成し、特定の相続人を除外して他の相続人や第三者に遺産を遺贈することで、相続トラブルを最小限に抑える方法があります。
具体的には、疎遠な子供以外の相続人や第三者に遺産を相続させる内容の遺言書を作成します。
こうすることで、その特定の相続人には財産が渡らないようにすることができます。
しかし、この方法を採る際には、その相続人が持つ「遺留分」に注意が必要です。
このような遺言を行うと、財産を受け取れなかった相続人が遺留分を侵害されたとして「遺留分侵害額請求」をする可能性があります。
この場合、遺留分相当の金額をその相続人に支払う義務が生じます。
したがって、遺言書を作成する際は、「○○にすべての財産を相続させる」といった簡単なものではなく、遺留分を考慮に入れた内容にする必要があります。
他の推定相続人や第三者に生前贈与する
一つの方法として、疎遠な子供以外の推定相続人や第三者に全財産を生前に贈与することで、相続させたくない子供に財産が渡らないようにすることができます。
しかし、この方法でも遺留分の問題があります。
子供には最低限の取り分である「遺留分」があるため、この遺留分を侵害するような生前贈与を行うと、「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります。
また、生前贈与を行う際には税金も考慮する必要があります。
生前贈与には贈与税がかかり、場合によっては多額の贈与税が課せられることもあります。
遺留分の放棄
遺留分の放棄とは、遺留分を持つ相続人がその権利を自ら放棄することです。
しかし、被相続人が生きている間に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。この許可を得るためには、放棄する人に対して生前贈与を行う必要があります。
また、遺留分の放棄は遺言書と一緒に行うことが一般的です。
遺言書なしで遺留分の放棄だけを行うことは稀で、遺言書の作成も忘れないようにしてください。
廃除
廃除とは、相続人が被相続人に対して非行や虐待、侮辱などの行為をした場合に、その相続人の相続資格を剥奪する制度です。
廃除には生前の廃除と遺言による廃除の二種類があり、いずれの場合も家庭裁判所に申立を行い、決定を受ける必要があります。
廃除は相続資格を奪うため、家庭裁判所が廃除の決定を出すことは稀です。
例えば、長期間連絡を取っていないという理由だけでは廃除は難しく、相続資格を奪うに値するほどの酷い虐待や侮辱などの事実を示す必要があります。
親子共有名義の不動産における共有持分と法定相続人
親子共有名義の不動産における共有持分と法定相続人について、基本的なポイントを解説します。
共有持分と法定相続人の権利関係を理解することで、円滑な遺産分割を実現することができます。
不動産の共有とは
不動産を複数人で所有する場合「共有」という概念が重要になります。
共有とは、複数の権利者が共同で一つの不動産を所有する状態を指します。
共有される不動産は、土地、建物、家屋など様々です。
共有の割合は、共有持分と呼ばれる数値で表されます。
共有持分は、通常、購入時の出資金割合などによって決まりますが、自由に変更することができます。
共有者が死亡しても共有持分が他の共有者に移るわけではない
共有者が亡くなった場合、その共有持分は自動的に他の共有者に継承されるわけではありません。
これは、民法で定められているからです。
共有者が亡くなった場合、その共有持分は相続財産となります。
相続財産は、法定相続人によって相続されます。
法定相続人は、配偶者、子供、親、兄弟姉妹などが該当します。
相続人は、遺産分割協議によって、共有持分を含む相続財産を分割することになります。
遺産分割協議は、相続人全員の合意によって行わなければ有効ではありません。
遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。
親子共有名義の片方が死亡したときの相続手続き
親子で不動産を共有名義にした場合、共有持分と法定相続人の権利がどのように関係するのか、理解しておくことが重要です。
共有持分と法定相続人の権利関係を理解することで、円滑な遺産分割を実現することができます。
遺言書の有無の確認
被相続人が亡くなった際には、まず遺言書の有無を確認する必要があります。
遺言書がある場合、その内容が相続人の遺産分割協議よりも優先されるからです。
遺言書が公正証書遺言として作成されている場合、公証役場で照会を行うことで遺言書の有無が確認できます。
自筆証書遺言の場合、自宅の貴重品入れや金庫を探す必要があります。
法務局で保管されている場合、「遺言書保管事実証明書」を交付請求することで確認できます。法務局に保管されていない自筆証書遺言は、勝手に開封せず、家庭裁判所で検認手続きを行う必要があります。
トラブルを避けるため、必ず検認手続きを取りましょう。
遺言書があれば、その内容に従って遺産を分配します。
ただし、特定の相続人に全ての遺産を与える内容の遺言書がある場合、遺留分を巡るトラブルが発生する可能性があるため、注意が必要です。
相続人調査
被相続人が亡くなった後、遺産分割を行うためには、相続人調査が不可欠です。
相続人調査とは、誰が相続人なのかを調査し、確定する手続きのことです。
相続人調査の必要性
- 相続人全員に遺産分割協議に参加してもらうために必要です。
- 遺産分割協議書を作成するために必要です。
- 相続登記を行うために必要です。
相続人調査の方法
- 戸籍謄本等を取得する:被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて取得することで、相続人を確定することができます。
- 住民票除票を取得する:被相続人の住民票除票を取得することで、本籍地を知ることができます。
- 戸籍附票を取得する:相続人の現住所を知ることができます。
相続人調査の注意点
- 戸籍謄本等を取得するには、手数料が必要となります。
- 相続人が多い場合や、行方がわからない場合などは、調査に時間がかかる場合があります。
- 相続人調査に不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
相続財産調査
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
その前提として、誰が相続人であるかを明確にするため、戸籍の調査を行います。
遺産分割協議は、全ての相続人の同意がなければ成立しないため、正確な相続人の確認が重要です。
遺産分割協議
相続人調査と相続財産調査が完了した段階で、遺産分割協議を行います。
共有名義の不動産がある場合、共有者である相続人が持分を相続する方向で話が進むことが多いですが、そのためには他の相続人の同意が必要です。
さらに、共有不動産以外に主要な財産がない場合、共有者である相続人が共有持分を取得するために、他の相続人に代償金を支払うことで調整することもあります。
遺産分割協議では、共有物の分割方法や代償金の金額の妥当性について問題が生じることがあります。
そのため、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
相続登記
遺産分割協議が成立したら、その内容に基づいて相続財産の取得手続きを進めます。
共有名義の不動産については、亡くなった方の持分を相続人に移す必要があります。
この手続きが「相続登記」です。
令和6年4月1日から相続登記が義務化されるため、相続した不動産がある場合は早めに手続きを行うことが重要です。
親子間の不動産トラブルについて
近年、親子間の不動産トラブルが増加しています。
その背景には、高齢化社会の進展や、核家族化による家族形態の変化などが考えられます。
親子間の不動産トラブルは、早めに対処することが重要です。
配偶者居住権とは
相続法の改正により、配偶者居住権には「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」があります。
配偶者短期居住権は、被相続人が所有していた建物に無償で住んでいる配偶者が、遺産分割協議が終了するまでまたは相続開始から6ヶ月間はそのまま住み続けられる権利です。
配偶者居住権は、被相続人が亡くなった際に配偶者がその建物に居住していた場合に、遺産分割、遺贈、死因贈与、または家庭裁判所の審判によって取得できる権利で、配偶者は終身または一定期間、その建物を使用することが認められます。
これは、配偶者以外の相続人が建物を取得した場合でも適用されます。
従来は、配偶者が自宅に住み続けるためには、遺言で自宅の取得者に指定されるか、他の相続人と遺産分割協議を行って自宅の所有権を得る必要がありました。
自宅の権利を取得しない場合は、他の相続人の承諾が必要でしたが、これにより流動資産の取り分が減ることが問題視されていました。
場合によっては、代償金を支払う必要があり、これが生活に困難をもたらすこともありました。
こうした問題を解決するために、配偶者居住権制度が新設されました。
また、配偶者居住権を取得する場合、遺産分割においてその評価額も考慮されます。
配偶者居住権は登記が必要
配偶者居住権を設定した際は、必ずその旨の登記を行う必要があります。
登記をしないと、他の相続人に対して権利を主張できません。
この登記は、配偶者(権利者)と建物の所有者(義務者)が共同で申請しなければなりません。
被相続人が夫、相続人が妻と子ども2人の場合、遺産総額は5,000万円(自宅3,000万円、預貯金2,000万円)とし、法定相続分に従って2分の1ずつ分けてそれぞれ2,500万円ずつ相続することにします。
ここでは、配偶者居住権の評価額を1,000万円とします。
妻の相続分は2,500万円ですが、3,000万円の自宅を相続すると相続分を超えてしまいます。
そのため、親子で公平に遺産を分けるために、妻は子に500万円の代償金を支払う必要があり、結果的に生活資金が不足する恐れがあります。
妻が配偶者居住権を相続すれば、自宅の所有権は子に渡せます。
この場合、配偶者居住権の評価額1,000万円に加え、預貯金1,500万円を相続できるため、住まいと生活資金の両方を確保できます。
遺産相続での親子トラブルについてまとめ
遺産相続での親子トラブルについてお伝えしてきました。
遺産相続での親子トラブルについてまとめると以下の通りです。
- 売却や居住権、遺言書の有無などで親子の相続トラブルになるケースがある
- 絶縁状態の親・子がいる場合の相続は、遺言書を作成して第三者に遺贈したり、他の推定相続人や第三者に生前贈与するなどの方法がある
- 母親(妻)にとって、これまで生活をしていた自宅を相続によって失うことは大きな不利益なので、そのような事態を回避するため、改正民法では、「配偶者居住権」という制度を設けられた
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。